∮次期女王 共通① ツイラク、イソウロウ
「ディアーナ様!あれが地球です!」
「どれどれ…」
地球は蒼い――――。
私はプルテノの第一皇女。
名を‘ディアーナ=ディーレ=プルテノ’。
そして継承権一位。
ゆくゆくはプルテノを女王として支配するつもりだった。
「まさか国が滅ぶなんて…!」
「いたっ!いたた!姫!落ち着いてくださいよ!」
「ナイト・メイヤード!もう少し速く飛ばないの!?」
「これでせいいっぱいです!」
まったく、つかえないポンコツ艦だわ。
「はっ!」
壁に蹴りを一発。
「ちょっ姫様なにやってるんですか!?」
「壁を蹴ったのよ。操縦席じゃないんだからたぶん平気よ」
あら、なんだか機内が揺れている。
「大丈夫じゃないみたいですけど」
「私たちどうなるの?」
機内は真っ赤なランプが点滅している。
こんなの初めて見たわ。
「堕ちます」
「マジ?」
「はい。マジです」
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「なんだあれ?」
俺が夕日を観ているとキラキラと光るなにかが、視界の映った気がした。
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「ぎゃああああああ」
「いやああああ」
宇宙船は引力によって地球に落下した。
―――――――
「うわああああなんだこれ!!」
帰宅したら家の屋根にUFOがつきささってやがった!!
どこの漫画だよ!!俺は夢を見てるんだきっとそうだ。
――――
「生きてる?」
一応生存確認をする。
「はい、姫様はお怪我ありませんか?」
私はメイヤードに抱き締められている。
…騎士なんだから私を守るのは当然よね。
「なんてこった…夢じゃなかったのか…」
「あ、あんたこのボロ家の住民?」
これが地球人かー。見た目は私たちとまったく同じね。
「屋根があああ!!ちくしょう!!親父達になんて説明すりゃいいんだよ!!」
「“修復”」
私は修理のため、装置を取り出して家の中にビームを発射した。
物理的な破損なら、このボタンひとつで直る。
「直った…屋根以外は。」
宇宙船がアンバランスながら、見事に刺さっている。
「…マジでお前ら宇宙人なのか?」
「貴様!ディアーナ様になんという口の聞き方を!」
「いいから、無礼講よ」
「ディアーナ様…」
「私たちから見ればあんたも宇宙人だけど、私たちはこの星の住民じゃない」
「ふーん…なんか見た目が普通だから
イマイチ信じられないような…」
「…この男、どこかで見たけとあるわ」
黒髪に、やれやれ、と気だるげな雰囲気のある男。
「なんだよジロジロ見て」
この顔とよく似た男をプルテノの城内で見たことがある気がする。
「そうですか?言われてみれば…」
私もメイヤードも、地球の男をガン見する。
「ああもう…とにかく、お前らあのUFOもって星帰れ!」
「…星は滅んだわ」
帰りたくても、無いのだから帰れない。
神の怒りをかったのか、内部の者が反乱をおこしたのか、さだかではないが、無惨に退廃してしまった。
プルテノは、冥界神ハギノスのいる世界に近い。
良いイメージがない星だった。
でも、他の星に迷惑をかけたわけでもない。
むしろ皆、慎ましく暮らしていた。
父上母上がいて弟妹がいて、星が好きだった。
「なんか知らねえけど、ワケアリなのかお姫様」
「ディアーナよ」
「どうしますこの男、一晩すら泊めてくれなそうですよ」
「しかたないわ外で野宿しましょ」
「次期女王たるお方が野宿…うう…なんと嘆かわしい…!」
「ああもう泊まれよ!」
―――――
「前回のあらすじ~家を破壊されたテラネス星人、他の星から来たという王女ディアーナ達を泊めることに――――」
メイヤードがマイクを使って何やらおかしな話し方をしている。
「メイヤード、何をやっているの」
「ナレェションです。ういうの一度やってみたかったんですよ~」
『……そういや、まだ名前いってなかったな。
俺は黒金豹一<こごうひょういち>だ』
『よろしく、ヒョウイチ!』
「あいつは学校に行ったみたいね」
学校―――プルテノには学校はないが、他星に魔法学園がある。
生き別れの妹はそこに通っていると風の噂で知った。
「ディアーナ様も通いたいですか?」
「なにを言っているの、そんなわけないわ」
学ぶことなどないし、学園に通うような頃合いでもない。
「相変わらず素直じゃないですね……」
――――
「黒金、昼飯食べよう」
「おう……」
「今日は自分で弁当作って来たんだ」
「へーどれど……」
「なんだこの紫のスライム?」
「ゼリーか?」
「なにいってんの、料理だよ」
「それにしても、オレたち相変わらずムサいよなあ……」
「そうだね。可愛い転校生とか来ないかな」
「ムゥンから女の子がふってこねえかなー」
「……ごほっ!」
「どうした大丈夫かよ」
「……むせただけだ」
(あいつら、留守中になにかやらかしたりしてないだろうな……)
――――――――――
「この家狭いわね」
「テラネスは小さいですからね」
見渡すと、城より面積が小さくて苦しい。
「でも星はプルテノより大きいわ」
「きっと生物の数が多いんですよ」
メイヤードが茶を淹れている。
本来騎士の仕事じゃないのに。
「茶<ティー>くらい私が煎れるわ」
「火傷<ドラン>でもしたらどうするんですか」
ふざけているくせに、忠実というか。
「触れなくとも魔法でなんとかなるでしょ」
「……残念ながらテラネスには魔力がほとんどありません」
「マジで?」
「マジです」
「…まあいい、飲むわね」
「どうぞ」
―――――――――
ここが惑星テラネスか―――――
「ったく……あいつがこんなチンケな星にいるもんかよ」
「なにをしているんだ。文句を言わずキビキビ歩け」
「へーい」
―――――
「おい黒金見ろよ、変なコスプレの人がウロツイテルー」
「指さすな」
「しかし……混雑してわけのわからん状態だ」
「建物も品がなく衣服も雑多、プルテノとは多違いだな」
(プルテノ……?
まさか…いや気のせいか)
◆
「おはよー」
私は早く起きてあいつにテラネスの挨拶をした。
「ああ」
この私にそっけない態度をとるなんて、こんなの初めてだわ。
「パンですか。しけてますね」
「なんだよ。朝は腹減らねーんだからいいだろ」
「私は朝からカレェでも構いませんが」
「プルテノにもカレィがあるのかよ」
「あ、もうハチジよ」
「……じゃ、俺は学校にいくが。くれぐれも問題はおこすな」
「おこさないわよ!」
____
「――――見つけた」
(なに……この嫌な気配)
「ディアーナ様!」
「近い……外にでるわよ!」
私たちは家から出る。これから戦闘が始まるからだ。
「これはこれはプリンセス=ディアーナ。お久しぶりです」
「―――――お前は!」
濃いピンクの髪の男。
「そう、僕は」
「……誰だっけ」
「なっ!?」
名前が思い出せない。
「貴女の婚約者ですよ!?」
「どうでもいい。婚約したの私じゃないし、どうせ父上が適当に幾つも組んだ中の一人でしょ」
「ほら、お前からも!」
自称婚約者の男はメイヤードに降る。
「お前? 誰に向かって言ってるんですか?」
説明しよう!メイヤードは私以外の奴に命令されることが大嫌いなのである。
メイヤードは男の首に槍の先を向けた。
どこからか延びた手が、その槍を避ける。
「よーう久しぶりだな」
「ラヴェ!?こんなところでなにしてんのよ!」
「なぜお前がここにいる」
「――――なぜ僕の名は忘れられてお前の名前は覚えているんだ!?」
「はいはい。一変にきくな」
―――――――
婚約者らしいフィアマは、私達の幼馴染みで城の元兵士ラヴェを雇う。が宇宙船で旅していた頃に行方を探していたらしい。
「というわけだ」
「ふーん」
「さあこんな犬小屋から出て今すぐラブラクア星にいこう」
「だが断る」
「なぜ!?」
「私は新しい星の女王になるのよ。誰かの造った星なんかにはいかないわ」
それにこの星も案外悪くないし、平和でしばらく潜伏するにはもってこいの星だ。
「そんな……今日のところはこれで失礼するよ」
「じゃーまたなー」
「いや、もう来なくていいわよ」
―――チャイムが鳴ると、教室に教師が入ってくる。
「転校生を紹介しまーす」
(こんな時期に、珍しいな)
―――ガラリ、二人は扉を開けて入ってきた。
「亡星プルテノから来たディアーナ皇女よ」「メイヤードともうします」
「うわああああ!?」
「なにようるさいわね!!」
「なんだ夢か……」
オレは学校へいく用意をして、家を出た。
◆
「よう、さっきお前ん家の前を通ったら屋根にへんなの刺さってたぜ?」
「まるで銭湯に宇宙人の姫がやって来るアニメみたいだったね」
「ああ……親戚の宇宙博士だ親戚の。ちょっと実験失敗してああなった」
「へーあ、先生来た」
「みんなー席つけー。授業始めるぞーなんか質問あるやつは今言えよー」
「はい先生!」
「なんだ黒金、お前が質問とは珍しいな?」
「転校生とか、来てませんよね?」
「なに馬鹿なこといってるんだ」
「ですよね」
「豹一、この椅子固いわね」
「これ、もっと上質なものに変わらないんですか?」
「もう席に座ってる」
「お前らなんでいるんだよ!?」
「お約束でしょ。本棚にそういうラブコメ漫画あったわよ」
「本当は期待していたんだろう?」
「く……」
昼休みになりメイヤードと屋上で話をする。
「それにしても、まさかラヴェが来ていたなんて思わなかったわ」
よりによって彼がラブラクア星人の従者になっているなんてね。
プルテノとラブラクアにはなんの繋がりもないが、ラブリクア星人のラヴェにっとては因縁がある。
ラブラクアはラブリクアからエネルギーを吸い上げて星を枯らした。
涸渇した星をアイドルのミニュルヴァ=ミュウバンがなんとかしているらしいが。
あの宇宙最強をうたわれるドルゼイ軍と対等にやりあうウチカワチセイとかいうプラネターの狙撃主の生き別れの妹とされるウチカワセイカも銀河でアイドルをしていると聞く。
いずれもテラネスで生まれた人間らしいが、テラネスには魔力がないのになぜそんなにもチートな人間がいるのだろう。