表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/38

第六章

 伊武希衣は、毎晩、一人で町中を駆け回っていた。

 少しでも失踪事件の情報を手に入れるためだ。

 具体的な情報があるわけでもないので、ほとんど――いや、完全に無駄足に近い行動だ。

 それでも、直巳が狙われたらと考えると、何かせずにはいられなかった。

 伊武は、自分に付けられている、人造天使アブエルの力を使い、魔力強化で身体能力を向上させる。筋肉だけではなく、視覚や聴覚も鋭敏にすることができた。伊武は本当に五感を研ぎ澄ませて、事件の手がかりを捜していた。

 何時間も町中を駆け回った後、コンビニの前で一休みしながら時計を見ると、深夜の2時を過ぎていた。

 あまり遅いと、直巳を心配させ、迷惑をかけることになるので、帰ることにした。

 何の味もしない炭酸水のペットボトルを握り潰し、ゴミ箱に捨てようとした時だった。

「駄目ですよ。キャップは分けて、別に捨てるそうです」

「……悪魔が……ゴミの分別に……気を使うの?」

 Aだった。手には煙草と缶コーヒー(やたら甘いことで有名な銘柄)を持っている。

「いえ、ゴミはどうでも良いのです。ただ、あなたとお話するきっかけが欲しかっただけですよ、希衣様」

「そう……あなたは……何をしているの?」

「散歩ですよ。夜は悪い子と悪魔の時間でしょう? それに、家だとアイシャ様が嫌がるので、煙草も吸えませんしね」

「そう……それじゃ……私は帰るから……」

 伊武が立ち去ろうとすると、Aが馴れ馴れしく腕を組んできた。

「まあまあ、少し付き合ってくださいよ。飲み物、買ってきましょうか?」

 伊武は舌打ちをしながらも、渋々、Aに付き合うことにした。

「最近は、毎晩走り回ってますね。失踪事件の調査ですか?」

 伊武は何も答えなかった。うなずきすらしない。

 しかし、Aは伊武の態度に慣れているため、気にもせずに話を続けた。

「失踪事件の調査指示も出ていないし、天使狩りのための待機もない。ゆっくり休んではいかがですか?」

 やはり伊武は黙っていたので、Aも黙って煙草を吸い続けた。

 そして、Aが煙草をもみ消したところで、伊武がゆっくりと口を開いた。

「何の指示もないっていうのは……椿君のために……何も……何もできないっていうことだから……じっとしているのが……辛い……部屋にいると……焦りと不安で……胸をかきむしりたくなる……だから……こうして……走り回って……時間が過ぎるのを待ってる……」

 Aは新しい煙草に火をつけて、ゆっくり吸ってから返事をした。

「犬ですね」

 伊武は返事をしなかった。

 Aがコンビニに入り、伊武のために飲み物を買って帰ってくると、伊武はいなかった。

 Aは肩をすくめてから、買ってきた炭酸水を開けて、半分まで一気に飲んだ。

「散歩も飼い主の義務、ですか」

 残った炭酸水も飲み干すと、ちょっと迷ってから、キャップとボトルを分けて捨てた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ