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第十九章

 アリエラが14歳の時だった。

 アリエラは変わらず、村長の家で使用人として働いていた。学校には行かせてもらえなかったが、村長の子供が使っていた教科書を借り、独学で簡単な読み書きと計算はできるようになっていた。

 おかげでアリエラは、町までの用事を頼まれることが多くなった。簡単な用事と買い物ぐらいであれば、問題なくこなすことができた。

 町は遠く、荷物も重かったが、それでもアリエラは町に出るのが好きだった。町にいる時だけは、自由になれた気がしたからだ。

 ある夏の夜。町へのお使いから帰る途中、アリエラは村の方に強い光が落ちるのを見た。

 アリエラは隕石を知らなかったが、星が降ってきたのかと思った。

 アリエラが急いで村に帰ると、村は崩壊していた。

 廃墟となった村を歩き回る。崩壊した建物、死体すら残っていない村人達。何があったのだろう。アリエラは恐怖と悲しみで、今にも泣き出しそうだった。

 しかし、村の天使教会に大きな光があるのを見つけると、全てを理解し、恐怖も悲しみも一瞬のうちに消えた。

 降臨した天使が、崩壊した天使教会にいた。

 村は天使降臨の衝撃によって崩壊し、村人は全員、姿も残さずに消し飛んでいたのだ。

 村長も奥様も、子供達も、村のみんなも。村の外にいたアリエラだけが助かっていた。

 アリエラには、恐怖も悲しみもなかった。

「ああ、村のみんなは天使様に救われたんだ」という、喜びだけがあった。

 特に病に伏せていた奥様のことを考えると、心が安らかになった。

 奥様は天使様に救われたから、もう病に苦しむこともないのだ。

 アリエラは天使に近づく。強い光だったが、ぼんやりと天使の顔が見えた。

 天使はウサギの顔をしていた。他の天使を見たことがないが、みんなそうなのだろうか。

 アリエラは天使の前にひざまずくと、祈りを捧げた。

 ようやく会えた喜びを。村のみんなを救ってくれたことへの感謝を祈った。

 天使は消えなかった。何も言わず、何もせず、ただそこにいた。

 アリエラは天使を眺め続け、幸福にひたっていた。

 これで思い残すことはない。自分も、天使様に救ってもらいたかった。

 だから、その願いをかなえてもらうために、彼女は天使に触れた。

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