第43話
後半です。宜しくお願いします。
<46日目・後半>
「お姉ちゃん、島が見えてきたよ~」
リィがふわふわと漂いながら、のほほんとした声で語りかけてくる。
今までどこにいたの!?
「リィもオルも私を見捨てたのね・・・。」
「だって、僕らがいてもどうにもならなそうだったからさ?」
まぁ、オルの言う通りなんだけど。
船の中を探検してきたらしい。若いって良いわね。
確かに、船の正面に、島が見えている。
島に着いたら、今日は宿を取って、豪勢な晩ご飯を楽しんで・・・。
明日こそは水着回ですね!?
せっかく勢い込んで買ってきた水着の出番あるよね!?
そんなこんなで宿、というよりはホテルという方がしっくりくる立派な建物に入ると、さっきのお姉さんに偶然再会してしまった。
「あら、さっきの占い師のお嬢さんじゃない。奇遇ね、こんなところで。」
「縁があったと言うことでしょうか。というか、さっきいただいた短剣なんですが。」
「結構いいものでしょ?」
「危ない代物ですよね、明らかに。アレなら復讐にはピッタリですね!?」
「あら、分かっちゃった?」
そう言って朗らかに笑うお姉さん。
怖いよ!?
「もともとこのホテルを予約してたものだから、キャンセルするのも癪でねぇ。このホテルにさっきの話の男が女連れ込んでるから、持ってたら発作的に刺しちゃいそうで。」
さらっと危ない発言しましたよ、この人!!
女って怖いわぁ。
私も女だけどね。
「ほら、噂をすれば・・・。」
お姉さんが指さす先には、いかにも~な優男と男にしなだれかかる頭の弱そうな顔だけ美人。
あんな典型的なのに引っかかっちゃダメだよ、お姉さん。
「あー、ちょっと懲らしめてやりたい気持ちわかります。」
「でしょ!! 気が合いそうね、私たち。えーと・・・」
「カグヤです。お姉さん。」
お互いに名前も名乗っていなかったことに気がついて苦笑する。
まぁ、占い師と客って関係でいちいち名前なんて名乗らないか。
姓名判断ならともかく。
「私はアリーチェよ。カントで商売やってるの。」
「そうなんですか。道理で羽振りの良さそうな・・・。」
夜のお店かな。
お客さんに入れ込んで・・・とか良くありそうな話だし。
お金は持ってるみたいだからねぇ。
「羽振りは・・・そこそこかしらね。今度カントに戻ったら遊びにいらっしゃいな。歓迎するわよ?」
悪戯っぽく笑ってウィンク1つ。
うわぁ、大人の女の人だ。
「こっちは私の相棒のリィ。こっちは・・・うーん、息子みたいなもの?」
「オルと言います。カグヤ、そこはせめて弟のような、じゃない?」
あきれ顔のオル。だいぶ表情とか喋り方とか自然になってきたよね。
そんな私たちを見てクスクスと笑うアリーチェさん。
笑ったらもっと美人だね。
「あなたたち、面白いわね。不思議な取り合わせだけど、冒険者?」
「はい、その通りです。」
ただのバカンスではなく、一応クエストに関わりがあるということだけ話しておく。
「あら、じゃあ大亀探しかしら。古くから伝わる伝説だけど、ホントなのかしらね?」
「バカンスついでですよ。何か有力情報でもつかめたら御の字なんですけど。」
雑談していると、例の男に動きがあった。
何と、今連れている女性を放り出して、別な女性の所に走ったのだ!!
泣き崩れる顔だけ美人。
こんなところで愁嘆場とは恐れ入った。
あの優男、度胸があるのか、それともただの馬鹿なのか。
さすがにアリーチェさんも唖然としていた。
「まさかこんな公衆の面前で・・・。」
「・・・女の敵ですね。」
私たちは顔を見合わせると、一瞬で通じ合った。
そう、「ヤツにはお仕置きが必要だ」と。
どうせなら大勢の前で恥を掻かせてやらなくては・・・と考えた私たちは、夕食時を狙うことにした。
夕食は、大きな広間に客が集まって食べるバイキング形式だ。
この世界にもバイキングってあったんだねぇ。
リゾート地だからこそ出来ることなのかも知れないけどね。人がたくさんいなかったら絶対出来ないスタイルだもの。
のんびりと食事しながら獲物がやってくるのを待ち構える。
あんまり遅いとデザートまで食べ終わっちゃうよねぇ。
「来たわ・・・」
アリーチェさんがめざとくヤツを見つける。
「ふふ。では、オル。行動開始と行きましょうか。アリーチェさんは楽しみに見てて下さいね~。」
私とオルは自分のトレイを持って席を立つ。
ターゲットのそばにさりげなく立つと、オルとアイコンタクト。
私は、例の【悪夢への誘い】を抜き打つと、ヤツのズボンごとベルトを切り落とす。返す刀で軽く腰の辺りに切り傷を着けておく。
と同時に呪いが発動。
切り落とされたベルトとズボンがすとんとずり落ちて、ヤツは下半身がパンツ一丁に。周囲で巻き起こる歓声と悲鳴。
そこでオルが男の足下にさりげなく円筒状のカップを配置。慌てたヤツは狙い通りにそのカップを踏んで盛大に転倒。それにぶつかられたふりを装って、私とオルは持っていたトレイから熱い汁物やらシロップかけのデザートやらソースまみれの肉やらを盛大にぶちまけてやる。
下半身パンツ一丁で頭を打ってのびている、料理まみれの優男。
周囲では失笑の嵐。
ホテルの従業員が駆けつけてくるまでの間に、私たちはそそくさと退散。
「任務完了です!」
席に戻ると、アリーチェさんが笑い転げていた。
「あっはっは! スカッとしたわ、カグヤさん。ありがとうね、こんなことまで。」
「いえいえ、あんな男は世のため人のためになりません。成敗です!」
「大恥かいて、ホテルに迷惑料絞られて散々でしょうね、きっと。いい気味よ!」
「それと、多分誰にも見えていなかったと思いますが、例の短剣でちょっとだけ切り傷をつけておいたので、しばらく悪夢に悩まされると思いますよ。」
「え? いつの間に?」
びっくりした顔で私を見るアリーチェさん。
素の表情だと何だか可愛い。
「アリーチェさん、1つだけ聞いてもいいですか?」
「答えられることなら。」
私は一呼吸置いてこう言った。
「おいくつなんですか?」
「レディに年齢を尋ねるのは反則よ?」
そう言って魅惑的な笑みを浮かべてウィンク。
まぁ、そういうよね、普通は。
でもまぁ、スカッとしたからいいか。
その後、私たちは場所を移すと食後のデザートを楽しみ、明日は一緒に遊ぶ約束をして別れた。
うん。
今日は善行を積んだ一日でした。
良き哉良き哉。
【46日目を終了します。現在のカグヤのステータスは以下の通りです。】
名前:カグヤ 種族:人間 性別:女 年齢:15歳
レベル:204HP:509(580) MP:550(871)
STR:501(502)
AGI:491(607)
DEX:493(494)
INT:535(836)
VIT:478(549)
MEN:504(785)
LUC:470(571)
所持称号:完全適合者・魔術の深淵を求める者・妖精女王に祝福されし者・冒険者
蒼の祝福・スキルマスターLV2・命を刈り取る者・金の祝福・宵闇の主
所持二つ名:無限の魔導姫
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