第3話
<2日目>
鳥の鳴き声と、太陽の光で目を覚ました。
「う~ん・・・、あと5分・・・。」
もぞもぞ。
「・・・じゃないって!!」
がばっと布団をはねのけて飛び起きる。
実は夢オチ・・・を少しも期待しなかったわけじゃないけど、もちろんそんなことはなかった。
まずは着替えて頭を切り換える。
もともと諦めることの多かった15年だったから、諦めるのは得意。
言ってて悲しくなってきた。
チュートじいちゃんも言ってたしね、「楽しまねば損じゃ」と。
「さて、まず今日しなくちゃ行けないことは・・・」
荷物をまとめて下に降りる。
「スキル上げだね!!」
レベルアップも大事だけど、スキル熟練度のあるゲームの場合は、ゲーム進行にこだわらず、熟練度を上げた方がいい場合もある。
特に今回の場合は。
イベント進行やタイムスケジュール管理をする運営はいないわけだから、先へ先へと進むより、自分の能力を上昇させることに重きを置いた方がいいだろうと思うから。
というわけで、あまり村から離れすぎず、なおかつあまり人気の無いところを探してみたら、必然的にこうなった。
「森には獣が出るから気をつけるんだよ」
村の人が教えてくれたとおり、森に入ってすぐに、狼に襲われた。しかも十数匹はいる群れに。
「炎よ、敵を討て!【火弾】」
6発の小火球が狼を一撃で焼き殺す。
残りの狼が飛びかかってくるが、そこはそれ、現段階ではあり得ないパラメータなので、難なく全ての攻撃を躱すことができた。
あと二回それを繰り返す頃には、狼の群れは全て死んでいた。
私の帰還計画のための貴い犠牲になってくれたということで。
【レベルが上がりました。カグヤのレベルは7になりました。】
【火系統魔術の階梯が2になりました。以降、第2階梯までの火系統魔術が使用可能になります。】
【回避スキルのLVが2に上昇しました。】
「まるっきりシステムアナウンスじゃん・・・」
レベルアップとかを告げるアナウンスが頭の中に響く。
でも、予定通り。
どうやらスキル熟練度は関連する行動を取ったり、スキルを使い続けることによって上昇するらしい。そして、一定の基準をクリアすればレベルが上がるのだ。
剣道や柔道で素振りや打ち込み稽古をするのと同じで、ひたすら練習すればいいわけだ。
森の中を歩いて、少し開けた場所を発見すると、そこに腰を落ち着けることに決めた。
そして取り出したのは、昨日の運営からの羊皮紙。
【識別】してみたところ、一つの発見をしたのです。
それはOBJ属性:破壊不能ということ。決して壊れないし壊せない。
それを地面に置くと、風系統第1階梯魔法【風の矢】を思いっきり6発全弾たたき込む。
「さすが破壊不能オブジェクト。これならいけるね。」
さらに打ち込むこと数回。
【風系統魔術の階梯が2になりました。以降第2階梯までの風系統魔術が使用可能になります。】
システムアナウンス。うんうん、順調順調。
この方法は、普通のゲームでは不可能だ。何せすぐにMPが尽きてしまう。
いちいちポーションを使っていたんじゃ間違いなく赤字だし。
でも、私には各種スキルの恩恵がある。
第1階梯の呪文は、消費MPが5で統一されている。
つまり初期値であれば10回使ったらMP切れになる訳だ。
しかし、私には消費MP-50%スキルが合計3つある。
よって、5→2.5→1.25→0.625となり、消費MPは1ということになるのだ。
さらに今分かったことだが、魔法のスキルレベルが上がると、消費MPが1LVにつき-5%されるみたい。まぁ、0にはならないみたいなので、今のところあまり意味は無いけど。
さらに言うと、自動回復・自動MP回復スキルがあるので、どんどん回復する。
5%とあるのは、どうやら1分ごとに最大HP・MPの5%が回復するというスキルらしい。
くどくど言ってきたけど、要するに「MP切れはあり得ない」ということを言いたかったんだよ。
さて、序盤はあっさりスキルレベルが上がりそうなので、各系統の魔法を順番に上げていくことにした。
第1階梯が終わったら第2階梯の呪文をひたすら使っていく。ちなみに第2階梯の基本消費MPは10だった。
チュートじいちゃんに時計を借りてきていたので(絶対壊すんじゃないぞ!と念押しされているので気をつけよう)、4時間は経っていることが分かった。
我ながら一心不乱すぎるかな。
その甲斐あって、たった今、最後の闇系統の魔法が第3階梯にレベルアップした。
【6系統の魔法が、それぞれ第3階梯に到達しました。条件達成のため、新たなスキル【高速詠唱】を取得しました。】
おや、何だかよさげなスキルじゃない、それ?
何々。
呪文の詠唱にかかる時間を半減するスキル、だそうだ。うん、魔法使いには必須だよね!
「さぁ、ここからはひたすら風魔法だよー!」
村で手に入れたご飯を食べて気合いを入れ直す。
気合いを入れ直したところで、考えていたことをもう一つ実行に移してみる。
「炎よ、剣に宿れ!【燃え盛る武器】」
短剣に火の魔法をかけて炎属性を付与する。
持続時間はスキルレベル依存なので現在は3分間だ。
「風よ、槍となりて貫け!【風の槍】」
風魔法第3階梯【風の槍】を放つ。自分に向けて。
風の槍を炎の小剣で迎撃。
見事に叩き落とすことができた。うん、魔法を魔法で迎撃することはやっぱり可能なんだ。
これで火魔法と風魔法と小剣スキルを同時に上げることができる。
私って天才!?
すみません、調子に乗りました・・・。
【小剣スキルがLV2に上昇しました。小剣アーツ【カット】を習得しました。】
よしよし、順調順調。
結局日が暮れる直前までひたすら熟練度上げして村に帰りました。
村に帰るときに大きなクマに襲われたので、倒してみた。
HPは200以上あったけど、地系統第3階梯【大岩の槌】でぶっ叩いたら即死しました。
何で地系統かって?
燃やしたら焦げて使い物にならないし、風だとバラバラ殺人だし・・・。
でも、地系統もだいぶひしゃげてグロかったので、次から何か対策を考えたいと思います。
引きずって帰ったクマを見て、村の人が絶句していた。
倒したのも凄いけど、それを引きずってこれるパワーに引かれた。ちょっと傷ついた。
パラメータ高いんだからしょうがないよね!?
【2日目を終了します。現在のカグヤのステータスは以下の通りです。】
名前:カグヤ 種族:人間 性別:女 年齢:15歳
レベル:8 MAX HP:270(350) MAX MP:280(600)
STR:266
AGI:263(313)
DEX:263
INT:270(570)
VIT:262(282)
MEN:265(495)
LUC:263(363)
所持称号:完全適合者
新たなスキル【高速詠唱】を習得しました。




