第35話
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<39日目>
馬車での移動フェイズ。
昨日と合わせて200kmほど進んだだろうか。
魔法によって再現したエアサスのおかげで至極快適。
クッションとかも最高級のものが積まれているし、乗り心地は中世風馬車としてはあり得ないくらいに素晴らしいものになっている。
となると、後は車輪に巻くゴムのようなものがあればいいなぁ。
タイヤを再現できればさらに馬車に革命を・・・。
いや、馬車の改良をしにこの世界を旅しているわけではないんですけどね?
そういう弾力のある素材をドロップするモンスターがいれば万事解決だね。
道中はモンスターを寄せ付けない魔法のおかげで襲われることもなかったが、野営地にてそろそろ休もうかという時に、それは起こった。
「ソナーに感あり!ってね・・・。」
警戒の魔法に反応があった。
「カグヤ、何か近づいてくる。モンスターじゃないってことは、野盗の類いかな。」
オルの鋭い感覚が気配を捉えたようだ。
だいぶ喋り方が12歳の少年っぽい感じになってきたのがちょっと嬉しいかな。
「みたいね。獣や魔物ですら自分より強いものを見分けて争いを避けるというのに。人間がやはり一番愚かな生き物なのかしらねぇ。」
まぁ、明らかにお金持ちそうな馬車が街道を走っていれば狙いたくもなるか。
遠くからでも様子を窺ってれば、乗員が少ないことはすぐに分かるだろうし。
でも、それだけ人数が少なかったら逆に不自然だよねぇ。
こんな良い馬車に乗っていて護衛もなしなんてことがあるわけ無いだろうに・・・。
気配の数は全部で11。
近づいてくるのが8、やや遠くで動かずにいるものが3。
弓でも構えてるのかな。それとも魔法を使えるヤツが混じっているのかしら。
一応気配を消しているつもりらしいけど、とりあえず、外に出て確認してみましょうか。
天幕を出ると、風切り音が1つ。
「何の用か、一応聞いてあげるつもりだったんだけど、問答無用ってことでいいわね?」
私に向かって放たれた矢を片手で掴み取ると、闇に紛れた野盗共に一応聞いてあげる。
それと同時に、掴み取った矢を魔法で燃やす。
これで、私が暗闇から放たれた矢を素手で掴む技量を持ち、なおかつ魔法を使えるという情報が野盗共に伝わったことになる。
これで恐れをなして逃げ出してくれれば一番楽。
必要ならするってだけで、別に進んで闘いたいわけじゃないんだけどなぁ。
だが、11人という人数が馬鹿な野盗共に勘違いを起こさせているようだ。
仕方ない、殺りますか。
降りかかる火の粉は払うのが世の習いよね。
裏VR時代の感覚を思い起こす。
最凶最悪の殺人者の一人、【虫喰い蟲】なんて二つ名まで頂戴したくらいにして。
まぁ、近接戦闘で殺す必要はどこにも無いわけだけどね。
スキル持ちの私にとって闇はハンデでは無い。
むしろプラス?
いかにも野盗ってカンジの薄汚い男共。
距離のある3人は、3人共が弓を構えている。
魔法使いは見た感じでは確認できない。
全員に【識別】を使うのも面倒だし。
「始めていいの? あと10数えるまで待ってあげるけど。逃げるなら今のうちよ?」
「威勢がいいな! この人数相手にやる気か!」
「もちろんよ。雑魚が何人いても雑魚だってことを教えてあげるわ。」
10からカウントダウンを始める。
その間に、念話でオルに逃げ出そうとしたやつの処理を頼んでおく。
「くっ、やっちまえ!!」
前衛の後ろにいた男が叫ぶ。あいつが親玉かしら。
目の前の男たちが、手にしていた長剣で斬りかかってくる。もちろん掠らせもしない。
「ほらほら、あと4カウントよ~。」
「くそっ、こいつ当たらねえ!!」
カウントゼロ。
私は短距離の転移魔法を発動し、弓を構えていたヤツの背後に移動。
ポーチから取り出した長剣で、男の心臓を背後から正確に貫く。
肉に突き刺さる剣の感触。
ああ、間違いなく死んだよね~と確信しながらもう一度魔法を発動。
別な男の背後に転移すると、同じく背後から一突き。
最後の一人は、見せしめも兼ねて、一太刀で首を刎ねてやる。真っ二つになった首の断面から、盛大に鮮血が吹き出す。
「ほらほら、もう3人死んだよ? 8人しかいなくなっちゃったよ?」
「な、なんっ!?」
「馬鹿な!?」
何が起こったのか分からないらしく、間抜けな顔をさらす野盗たち。
あー、めんどくさい。
別に逃げ出してくれてもいいんだけど、そうしたらまた別の誰かを襲うんだろう。
ここで始末しておいた方が世のため人のため。
剣を構えたままダッシュ。
一気に距離を詰めると、袈裟懸けに一人。返す刃で二人。
ジャンプで勢いをつけて、一人の首に蹴りを叩き込んで頸椎を破壊。
着地と同時に【炎の槍】を発動。4本の火の槍が4人の野盗を燃え上がらせ、焼き尽くす。
残ったのは親玉かなと目星を付けた薄汚い男が一人。
「ひっ・・・」
「さぁ、残りはあなただけよ?」
「ばっ、化け物・・・!」
昔の感覚が蘇ってくる。
命を手にしている感覚。
言いようのない罪悪感と背徳感と全能感。
「うーん、センス無いわね~。ただ殺してもつまらないから、少し遊んであげるわ。」
引きつった表情のままの男。ますますつまらない。
「あなたに【呪い】をかけるわ。私に背中を見せたら、あなた、死ぬわよ?」
「な、なにを・・・?」
スキルを発動して男に【呪い】をかける。
死の呪いを掛けるのは、ホントはとても難しいことなんだけど、所詮野盗の精神力では抵抗できなかったようだ。
残念だね。
そして、とびっきり邪悪そうな笑みを浮かべて言う。
「5秒だけ待ってあげる。出来るだけ遠くに逃げたらいいんじゃないかしら?」
「ひっ、ひいいっ!!」
言葉の意味を理解したのか、一瞬の間の後、男は一目散に逃げ出した。
私に背を向け、全力で。
数歩駆けだしたところで、男が突然崩れ落ちる。
「あーあ、だから教えてあげたのに。背中を見せたら死ぬわよって。馬鹿な男。」
「普通は逃げるよ、カグヤ。こんな状況ならさ。」
オルが呆れたように言って近づいてくる。
そりゃそうよね。
分かっててやってるんだから。
野盗共の死体の上に、【魂片】が浮かび上がる。
モンスターも人間も同じで、死ぬと【魂片】が残るんだなぁと何となく感心してしまった。
【新たなスキル【拷問 LV2】【挑発 LV2】【不意打ち LV3】【狙撃術 LV1】【統率 LV1】を取得しました】
人間の方がスキル持ってる率が高いのかな。
ああ、人間が使えるスキルしか取得してないんだから、ゲットできるのは当然か。
うーん、もう少し自分的に、何か感慨深いものがあるかと思っていたこの世界最初の「人殺し」だったけど、特に何とも思わない・・・か。
いくらVR上で経験済みとはいっても、一応「現実だ」と言われていたこの世界でなら、何か自分の中に変化でもあるのかと思っていたんだけどねぇ。
別に楽しいとは思わなかったけど、「人を殺してしまった・・・。うぐっ。」なんて吐いちゃうほどでもなかった。
多少の優越感を感じていたのは確かだけど・・・。
結局、現実感が足りていないのか。
それとも、野盗を返り討ちにして殺したところで、褒められこそすれ罰せられることなど無いだろうこの世界では必要なことだったと割り切れているのか。
それとも、私のどこかが壊れているのか。
もちろん全部かも知れないんだけどね。
きっと現実の世界でだって、「こいつを殺しても絶対罰せられないどころか、感謝されて報酬まで貰えるよ?」なんて言われたら一線踏み越えちゃうやつがいるかもしれないよね。
その「罰せられない」ということが保証されているかどうかってかなり重要だと思うんだけど、この世界ではすでに前例によって保証されているわけで。
生死を問わないな盗賊、野盗の討伐の依頼だってごろごろしてるしねぇ。
まぁ、きっとどうも思わないだろうと思っていたことが確認されただけのこと。
私にとって必要ならやるだけのことよ。
さ、寝ましょうか。
【39日目を終了します。現在のカグヤのステータスは以下の通りです。】
名前:カグヤ 種族:人間 性別:女 年齢:15歳
レベル:204HP:509(579)MP:550(870)
STR:501
AGI:491(541)
DEX:493
INT:535(835)
VIT:478(498)
MEN:504(764)
LUC:470(570)
所持称号:完全適合者・魔術の深淵を求める者・妖精女王に祝福されし者・冒険者・蒼の祝福
スキルマスターLV2・命を刈り取る者・金の祝福・宵闇の主
所持二つ名:無限の魔導姫
新たなスキル【拷問 LV2】【挑発 LV2】【不意打ち LV3】【狙撃術 LV1】【統率 LV1】を取得しました。
ユニーク1万OVER感謝です!




