第30話
お気に入り登録して下さっている皆様、ホントにありがとうございますm(_ _)m
<35日目>
「お、お姉ちゃん! その子は何なの!?」
うう、リィが大声で何か叫んでる。
起きるよ。
起きるからちょっとまって・・・。
腕が重い。何かが腕にしがみついている感覚。
意識が覚醒した。
「オル!?」
「ううん・・・。あと5分・・・。」
さすが。もうそんな切り返しまでマスターしているなんて・・・ってそんなわけあるか!
毛布を跳ね上げると、そこにいたのは夕べの赤ん坊・・・ではなく、6,7歳くらいのほっそりとした金の長い髪の美少年でした。
「ちょっ、えっ!?」
パニック状態です。
あれ、つい数時間前までただの赤ん坊だったような?
龍人ってそういうもんなんでしょうか?
『いやー、これは予想外だわー。成長速度は人間とたいして変わらないはずなんだけどねー』
「サフィ、どういうことなの?」
サフィがいうには、龍人の寿命は人間より遙かに長いものの、成長する速度は人間とほぼ変わらないという。成人してからはピーク時の肉体を長期間保つらしいけど。
一晩でコレはさすがにありえないそうな。
『カグヤも気づいてると思うけど、この子、【地の聖霊】なのよ。正確には【地の聖霊】の依代だけど。地系統魔法のレベル制限が解除されてるでしょ?』
うん。システムアナウンス入ったしね。
『だから、普通の龍人とは別物と考えるべきね。まぁ、赤ん坊のままでも困るわけだから、ある程度の姿までは成長してくれた方が安心だけど。』
「そりゃあ確かにそうだけど・・・。」
そのうち、オルがぱちんと目を開ける。
やっぱり綺麗な金色の瞳。
そして、超美少年。
少女と見紛うような・・・というタイプじゃなく、男の子には間違いないけど美しいという、少年特有の美しさ。
「おはようございます、おかあさん。」
「それは勘弁して!」
全力で拒否させて下さい・・・。
何が悲しくて15の身空でお母さん呼ばわりされねばならないのでしょうか・・・。
「では、なんてよべばよろしいですか?」
きょとんとした顔で首を傾げるオル。
『いいじゃない、カグヤ。保護者で名付け親ならお母さんでも。』
「それだけはイヤ。オル、私のことはカグヤって呼んでちょうだい。良いわね。」
「はい、カグヤ。これでいいですか?」
「うん、今のところはそれでお願い。それでね、リィ・・・」
目を白黒させているリィに、夕べの出来事をありのままに話す。
とりあえず納得してくれたようだ。サフィが保証してくれてるし。
「ほえ~。【地の聖霊】・・・。すごいねぇ、お姉ちゃん!」
『全くだわ。こんな形で他の聖霊と出会うなんて・・・。だから【地霊喰らい】がこの森に出没したのかも知れないわね。』
「どういうこと?」
要するに、聖霊を宿したオルがここに顕現したことで、この辺りの精霊力が半端なく高まってしまったのではないか。
その高まった大地の精霊力に惹かれて、モンスターがこの森にやってきたのだろうという推測だった。
なるほど、さもありなん。
そんな話をしている間も、オルは可愛らしく首を傾げているだけだった。
『ねぇ、トパーズ。いつまでも引っ込んでいないで、自分で出てきたらどうなの?』
「どうしたの、サフィ?」
『聞こえてるんでしょ。いくら内気なあなたでも、ご主人様に挨拶ぐらいしたら?』
オルに向かって何やらサフィが語りかける・・・というか詰問口調だけど。
どうしたのかしら。オルが気に入らないの?
突然、オルの表情が消える。
目は開いているけど、どことなく焦点が定まっていない感じ。
『・・・うう。サファイアはいっつも怖いよぅ・・・。』
「!?」
オルの口から明らかに別人の、それも幼い女の子の声がする!
『誰が怖いですって? 大体、自分で出てきなさいよ、依代とか使ってないで。』
『だって・・・。恥ずかしいし・・・。』
『あー、もう! シャキッとしなさいよ、シャキッと!』
『あうう・・・。』
ああ、依代っていったもんね。
つまり、オルの中には【地の聖霊】が宿っていて、それがトパーズちゃんな訳だ。
サファイアにトパーズ。
宝石の名前なんだねぇ。
「トパーズちゃん? 初めまして、私はカグヤ。サフィだけじゃなくて、あなたも私を契約者として認めてくれたってことでOK?」
『あっ・・・は、はい・・・。よろしくお願いします・・・。そ、その、結界で怪我をさせてしまって・・・。ご、ごめんなさい・・・。』
「ううん、いいのよ。あれが契約者に相応しいかどうかのチェックなんでしょ。私じゃなかったら多分死んでたと思うけど、結果オーライってことで。」
『うう・・・。すみません・・・。』
なんだかシャキッとはしないけど、多分良い子なんだろうなぁって気はする。
サフィにあんまりいじめないように言っておかないと。
「ねぇ、トパーズ。オルはあなたが居ることは知ってるの?」
『はい・・・。オルと名付けられた龍人は、そのために生まれたようなものですから・・・。』
「どういうことか説明してもらっても良いかな?」
『この子は・・・【地龍】の幼生体なのです・・・。いずれ長ずれば【龍体】に変化することができるようになります。私を体内に宿していますから・・・。この子は私であり私の子どもであるともいえるんです・・・。』
サフィが私という契約者を得たことで、他の聖霊たちも適合者が現れたことに気がついたと。
トパーズの場合は、自分の依代となる存在を必要とするため、急遽この龍人の子どもを大地の魔力と精霊力を使って生み出し、それに宿って顕現したということらしい。
要するに、促成栽培したってことね。
単性生殖というべきか、生命創造というべきか・・・。
凄まじい力だわね、聖霊さん。
「じゃあ、この子が急に大きくなったのも、特に変なことじゃなくて、成長を早めているだけってことで良いのかな?」
『そうです・・・。びっくりさせてごめんなさい・・・。』
「いいのよ、そんなに謝らないで。どのくらいまで大きくなるのかしら。あと、成長の過程で何か必要なものはある?」
『あと5、6年分くらいは一気に成長するだけの魔力が蓄えられていますから・・・。人間年齢で言うと12歳くらいには・・・。必要なものは特にありませんが・・・、あの、もしよかったらリンクしているご主人様の知識を読み取ることを許可していただけたら・・・なんて・・・』
「別に構わないわよ。あ、でも、全部見られちゃうのはちょっと恥ずかしいかも?」
『す、すべてではありません・・・。生活に必要な知識や言葉を学習するだけ・・・』
「ああ、それなら問題ないわね。」
まさに促成栽培って感じねぇ。
でも、龍人っていうくらいだから、きっと丈夫な、前衛向けの種族なんでしょうし、私が魔法使いでリィが遠距離支援だったら、オルが前衛でばっちりね。
『で、では、ご主人様・・・。私は一度引っ込みますので・・・。この子を、どうかよろしくお願いします・・・。』
「はいはい。任せてちょうだい。またね~。」
『あ、ちょっと、トパーズ!』
『ま、またね・・・。』
数回瞬きをすると、オルの表情が戻ってきた。
「オルは、今のこと覚えてる?」
「はい、カグヤ。母なる【地の聖霊】のこともです。」
「そう。それならいいわ。これから仲良くやっていきましょうね。」
「はい。」
まだなんだかロボットを相手に会話してるみたいだけど、だんだんとそのへんも成長していくんでしょうし。AIの調教だと思えば良いかしら。
育成ゲーだと思えばむしろ楽しいかも。
しかし、12歳前後までは育つ・・・と。
となると、そのサイズまでは街に帰らない方がいいわね。
この辺りでもう一泊して、明日街に戻ることにしましょうか。
「依頼、もう少し受けてくれば良かったわねぇ・・・。」
まぁ、今さらぼやいても始まらないので、討伐クエストを可能な限り思い出す。受注してなくても、証拠品さえ持って帰ればクエスト完了扱いにして貰えるかも知れないしね。
後はこの森で採取できそうな素材を探すくらいかしら。
とりあえず、森の平和のために魔物狩りを優先的にやりましょうか。
森の中を縦横無尽に駆けるオル。
能力値チートの私の目から見ても、オルの運動能力は異常だ。木を蹴ることで三次元機動すら実現している。三角飛びとかリアルでできちゃうんだ~。
私たちは、木の皮を剥いで餌とし、枯死させてしまうため害獣認定されている猿型の魔獣【樹皮食い《バーク・イーター》】を狩っているところ。
レベル的にはDからCの間くらいなので、様子見にはいいかと思っただけなんだけど、なかなかどうして、オルは存在自体がレアだというだけあってハイスペックなようだ。
まぁ、聖霊様を体内に飼ってるわけだしねぇ・・・。
逃げ切れないと悟ったのか、魔獣が反転してオルに襲いかかってくる。
あっさり避けつつ、裏拳を放つ。
直撃された魔物の頭部が爆発するように吹き飛んで四散する。
結構グロ画像じゃない?
「カグヤ様、周囲に敵はいないと判断します。」
「そうね。それに、スゴいじゃない、オル!」
「ありがとうございます、カグヤ様。」
様付けにランクアップしてしまった。うう、お母さんとか母様とか呼ばれないだけマシか?
「少しづつ、年相応の話し方ができるように学習していってね、オル。」
「分かりました。」
モンスター退治の合間に、素材採集も行う。
オルは精霊の力のせいか、鉱石や薬草などの大地に属するものに敏感に反応する。
採集効率が上がって嬉しい限りですよ?
「さてさて、そろそろ晩ご飯になりそうなモノをゲットして、野営の準備でもしましょうか。」
「だね、お姉ちゃん。」
野生の獣や野草、山菜の類いで十分に食料を手に入れた。豪華豪華。
しかし、お米が恋しい・・・。おにぎり食べたいなぁ。
オルは何にでも興味を示す。天幕の張り方や獣の解体、料理の仕方など何でもだ。
そして、あっという間に覚えてしまう。
促成栽培とはよく言ったもので、成長しているというよりは、新品のコンピュータに必要なソフトをインストールしたり、データをコピーしたりという作業に近い感じがする。
ああ、そうか、生体コンピュータだと思えばいいのか。
デ●タ少佐みたいね。
「カグヤ様、今晩も一緒に寝ても良いでしょうか?」
「ん、いいよ、別に。どうしたの?」
「睡眠中の方が、効率よく知識を処理できます。明日の朝には一通りの処理が終了していると思われますので、今夜は出来れば早めに就寝したいと思います。」
「あー、なるほど。OKOK。じゃあ、今日はさっさと寝ちゃうとしましょうか。」
明日の朝には完全体のオルが。どんな風に育っているのかしら。
私のいらん知識までコピーしてないことを祈るわ・・・。
【35日目を終了します。現在のカグヤのステータスは以下の通りです。】
名前:カグヤ 種族:人間 性別:女 年齢:15歳
レベル:202HP:496(566)MP:536(856)
STR:499
AGI:488(538)
DEX:491
INT:533(833)
VIT:476(496)
MEN:501(761)
LUC:468(568)
所持称号:完全適合者・魔術の深淵を求める者・妖精女王に祝福されし者・冒険者・蒼の祝福
スキルマスターLV2・命を刈り取る者・金の祝福
新たな称号【金の祝福】を獲得しました。条件を満たしたため、土系統魔法のレベル制限が解除されます。よって第8階梯へレベルアップしました。
新たなスキル【強靱な消化器官】【龍人語】【握力増強】を取得しました。




