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小さなぼうし

作者: マコト
掲載日:2012/08/07

 深い森の奥に小さなぼうしが落ちていました。

そこを通りかかったクマがそのぼうしを見つけました。

「あれあれ、何か変なものが落ちているぞ」

クマはぼうしを手にとってみました。でも、クマにはぼうしをどのように使うのか分かりません。手にしたぼうしを裏返してみたり丸めてみたり、クンクンと匂いをかいでみたり・・・。

 そこへネズミがやってきました。

「クマさん、どうしたの?」

「ああ、ネズミさん。ここにこんなものが落ちていたんだよ。これなんだかわかるかい?」

クマはネズミにぼうしを差し出しました。

「これは≪ぼうし≫というものだよ、クマさん」

ネズミはクマを見上げて答えました。

「ぼ・う・し?」

「これは頭にかぶるものだよ」

「頭に?」

クマは不思議そうにぼうしを見つめました。

「クマさん、かぶってごらんよ」

ネズミがそういうとクマは、

「うん、そうしてみる」

と黄色いぼうしをかぶってみました。でも、頭が大きすぎてうまくかぶれません。

「だめだ。ぼうしが小さすぎて頭に入らないよ。ネズミさんならかぶれるかもしれないよ」

そういうとクマはネズミにぼうしをかぶせてやりました。ところが、今度はぼうしの方がネズミよりもずっと大きくてネズミの体ごとすっぽりとぼうしの中に隠れてしまいました。

「おーい、クマさん、助けてー。これじゃ何も見えないよ」

ぼうしの中からネズミが叫びました。

「ああ、ごめんごめん。君にはちょっと大きすぎたね」

クマはあわててぼうしを手に取りました。

 そこへウサギがやってきました。

「クマさん、ネズミさん、こんにちわ。何してるんですか?」

「こんにちわ、ウサギさん。これなんだかしってるかい?」

クマがウサギにぼうしを差し出しました。

「わあ、かわいいぼうしね。これ、クマさんの?」

ウサギが目を輝かせて聞きました。

「いや、僕のじゃないよ」

クマは照れ臭そうに答えました。

「それじゃあ、ネズミさんの?」

「いや、僕のでもないよ。ここに落ちてたのをクマさんが拾ったんだ」

ネズミがウサギを見上げて答えました。

「そうなの。かぶってみてもいいかしら?」

「うん、いいよ。かぶってごらん」

クマとネズミにそう言われて、ウサギはぼうしをかぶりました。でも、長い耳がじゃまになってうまくかぶれません。

「私は耳が長すぎてだめみたい。ぼうしに穴を二つあければうまくかぶれそうなんだけどなあ・・・」

ウサギは残念そうに言いました。

 そこへサルがやってきました。

「やあ、みんな。こんな所でどうしたの?」

「やあ、サル君、こんにちわ。これ何だかしってる?」

「どれどれ。ああ、これはぼうしだよ。頭にかぶって楽しむものさ」

サルはクマからぼうしを受取るとそう言いました。

「なあんだ、サル君もしってたのか」

クマが笑って言うとサルは、

「これはクマさんのぼうしなの?」

と聞きました。

「いや、僕のじゃないよ。ネズミさんのでもウサギさんのでもないんだ。誰のか分からないけど、ここに落ちてたんだよ。サル君かぶってみるかい?」

クマがそう言うとサルは、

「みんなはかぶってみたの?」

と三人を見ました。

「私達にはうまくかぶれなかったの」

長い耳をなでながらウサギが言いました。

 サルはクマからぼうしを受取るとさっそくかぶってみました。するとどうでしょう。ぼうしはサルの頭にピッタリだったのです。みんな、目を丸くしてサルを見つめました。

「小さくないかい?」

目をパチクリさせてクマが聞きました。

「小さくないよ」

「じゃあ、大きすぎることはないかな?」

細いしっぽをピンと立ててネズミが聞きました。

「大きくもないよ」

「耳がじゃまにならない?」

耳をなでながらウサギが聞きました。

「全然じゃまになんてならないよ。このぼうしは僕の頭にピッタリだよ」

そう言うとサルは喜んで飛び跳ねました。

「よかったね、サル君」

クマが笑って言いました。

「なかなかお似合いだよ」

ネズミが感心して言いました。

「いいなあ」

ウサギがうらやましそうに言いました。サルはみんなの声にこたえるように飛び跳ねたり、ぼうしを取ってお辞儀をしたりしました。

 と、その時です。

強い風が森の木々をゆらして吹きぬけて行ったのです。サルがかぶっていたぼうしがその風に飛ばされて空に舞い上がりました。

「あっ!」

みんな一斉に叫びました。

「た、たいへんだ。追いかけよう」

クマが一番にかけだしました。

「おーい、待ってくれー」

ネズミも後を追います。

「ぼうしさん、どこへ行っちゃうの?」

ウサギもぴょんぴょん跳ねていきます。

「ぼくのぼうしやーい」

サルも頭をかかえて走り出します。

 黄色いぼうしは風にのって森の木々よりもずっと高くくるくると回りながら飛んでいきます。4人はぼうしを見失わないように、必死で後を追いかけました。ぼうしはまるで空の散歩を楽しんでいるようです。

「まるで鳥みたいだなあ」

かけながらクマが言いました。

「僕もあんなふうに空を飛んでみたいなあ」

クマの後ろをかけていたネズミが言いました。

「ぼうしさん、とっても気持ちよさそうに飛んでる」

ネズミの後ろでウサギが言いました。

「もっと飛べ、もっと飛べ。もっと高く天まで飛んでいけ」

一番後ろからサルが叫びました。ぼうしはまるでみんなの気持ちを知っているかのように空で何度も宙返りしながら飛んでいます。

 やがて風がやんでぼうしは森のはずれにある広い原っぱに、ゆっくりと舞い降りていきました。そこには近くの保育園の子供たちが遠足に来ていました。

 ぼうしは弁当を食べていた男の子の足元に舞い降りました。その男の子も同じ形の黄色いぼうしをかぶっています。男の子は弁当を横に置くと、ぼうしを手に取り裏返してみました。するとぼうしのつばの所に『きのした ゆう』という名前が書いてありました。

「ゆう君、さっき風で飛ばされたゆう君のぼうしが、こんなところにあったよ」

男の子がそう叫ぶと、ぼうしをかぶっていない男の子が走ってきました。

「あ、ほんとだ。僕のぼうし。だい君が見つけてくれたの?ありがとう」

ぼうしを受取ったゆう君は大喜びです。

「先生、ぼうしがあったよ。だい君が見つけてくれたんだよ」

ゆう君が叫ぶと先生や他の子供たちが駆け寄ってきました。

「ゆう君、ぼうしが見つかって良かったね。だい君、よく見つけたわね。えらいよ」

先生は微笑んで二人に言いました。

「でも、このぼうしどこに行ってたんだろう?さっきまであれだけ探しても見つからなかったのに」

ゆう君がぼうしを見つめて言いました。すると先生は、

「きっと風にのって森の中を探検してきたのよ」

と言いました。

「ほんとに?森の中ってどんなのかなぁ?僕も行ってみたいなぁ」

だい君が目の前の森を見つめて目を輝かせました。

「森にはウサギさんやクマさんいるのかなぁ?」

髪の毛を赤いリボンで結んだあいちゃんが先生を見上げて聞きました。

「そうねえ、ネズミさんやおサルさんもいるかもしれないわねぇ」

「じゃあ、パンダはいる?」

「コアラは、先生?」

みんな目を輝かせてそう言いました。

「じゃあ、今度来た時はみんなであの森を探検しようか?」

「さんせーい」

「やったー」

みんな大喜びです。

 この様子を森の木の陰から見ていた4つの影が有りました。ぼうしを追いかけてきた4人です。

「あのぼうし、あの子のだったんだね」

クマが嬉しそうに言いました。

「持ち主に返ってよかったね」

ネズミが安心したように言いました。

「あの男の子、ほんとうに嬉しそうね」

ウサギが笑って言いました。

「あのぼうしはあの男の子に一番似合ってるね」

サルが照れ臭そうに言いました。

「さあ、みんなで森の奥に帰ろうか。今日はとっても楽しかったね」

クマがそう言うとみんなはうなずき合って森の奥へと去って行きました。

 森の中を優しい風がサーっと吹きすぎていきました。

                                          (おわり)

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