お嬢様について その3
あの日は、月の光の入らない日だった。
ワシが、このバレルファミリーの仲間入りしてから、かれこれ14年経過していた。
食うものに困り、訳の分からない奴等にファミリーに侵入して来いと言われたことがきっかけだった。
とりあえず、食べ物にはありつけたが、囮だったワシは、敷地内で力尽きた。
死ぬのもイイと思った。そうすれば、すべてが終わると思ったからだ。
妻や息子は、事故でなくし目標を失っていたワシには丁度よかったのだ。
目を覚ますと、小さな手が見えた。
「だいじょーぶ、おじちゃん」
黒髪、黒眼の幼子だ。
「ああ」
「よかった」
「だれだ、おまえっ…痛っ~」
「お嬢様です。そのような口は慎んで頂けますか」
幼子の後ろに控えていた、黒服の子供?はそう言ってワシを殴ったのだ。
その時、はじめて綺麗なベッドに寝かされていることを悟った。
「おじちゃん、行くとこないの?」
「行くとこ??」
「うん、ひいらぎがいった。」
「えっ、ああ、、気にするな、お嬢様」
「えっとね、じぁあね、ここで働けば」
「は?」「ええ??」
「そうだ、今日からわたりね、名前はわたり。」
「渡、おはよう」
あの頃より少し成長したヒノエお嬢様が車の前に顔出した。
「おはようございます。今日はどちらへ」
扉を開けて車の中に乗車させる。
「渡。何でも皆集合なんだって…、わたし行ってどうするんだろうねぇ…はぁあ」
「そうでございますね…」
「渡!!」
「はい、はい、そうだなぁ…、ワシにもわからん。まあ、行ってから考えたらどうじゃ」
「うぅぅ…、そうするしかないんだね」
「ハハハハハハ」
雇われることになってから、力のあるマフィアの末娘だと知った。
護衛をするに辺り、かなり身体を鍛えなおされた事が一番しんどかった。
ヒノエお嬢さんはワシのことを気に行ったのかよく様子を見に来ていた建前気は抜けんかった。
面白いお嬢さんで、ワシに名前を付け、新しい家族の一員とした。
名づけるとは、マフィアの世界では、そういうことを意味するらしい。
一度無くしたものだった命、それもよかろうと感じた。
あれから14年、身長はあまり伸びんかったお嬢様は、ワシより20センチも低く、未だ子供のような容貌だ。よい家柄の娘としても少し変わっているが、よき娘に育った。
ワシも年をとったということか…。
「渡は、イケメンだよね、だから!!」
ヒノエお嬢さんになぜワシを助けたか聞いた時、そういった。
キラキラした顔だったので聞けんかったが、一体あれはなんだったのか未だわからん。
ただ何か、大きな期待が含まれていたのは事実のようだったが…。
期待してくれているのだから、答えねばならんがと結論付けた。
(イケメンなら、いづれダンディーになるかもしれないし、見てみたいじゃん♪)
(彫の深いイタリア系ダンディズム♪)
「イイ感じだよねぇ、わたし凄い」
「お嬢さん?」
「ううん、一人言」
ヒノエお嬢さんは、マフィアの末娘だ。