お嬢様について その19
周りのやかましい様子をほって、ドンはさらに続ける。
「とりあえず、報告を続ける。名が挙がったものは強制参加とする
アウルム・スカルピーニ
ルイージ・ライネス
アルム・プロセス
ヴィート・オルコ
ホエル・バンデラス
キケ・デ・アンダ
ビダル・ベルグラーノ
ニコロ・アンバシャトーレ
イサーク・バロッコ
ガスパール・ムロ
ラウール・パス
ドナルド・プガ
最後に、従者柊
以上13名」
(誰ソレ!?…柊もですか!?)
ヒノエは、カタカナだらけの名前に反応出来ずにいた。
元々日本人だ。
彼女に外国名の羅列は厳しかった。
能面の様に完全に顔から色が消えていた。
娘の表情がなくなっていく所をドンやイノリは確認していた。
「もう一度言う、期限は1年だ。そして、1年後ヒノエをドンナとする。その間は、私の直属とする、以上だ」
そう発した後、ドンはそのまま会場を後にした。
「イノリ姉さん、一つ質問があります」
「ええ、何?」
「なぜミノア姉さんは、武器管理の部署ではなく、船の警備の部署なのですか?」
「…ああ、それはね」
イノリ姉さんが、マニキュアを置いた時だった。
「その件、私が説明したしましょう」
長身の灰色の男が現れる。
「?」
「初めてお目にかかります。アウルム・スカルピーニ、金の管理の部署に所属しています。柊とは幼き頃からの付き合いになります」
手の甲に口づけをした。
無駄にフェロモン垂れ流し男だなと思いながら、質問の返答を待った。
「武器の管理は、武器を製造・輸入出・開発を仕事としている。そして、この仕事は基本運ぶ手段として船を使用しているのです。だから、ドンは娘を船の警備に移動させたのでしょう」
無駄な微笑に裏がある気がして、それ以上の追言を辞めることにした。
(やっぱり、これ程大きくなると、マフィアと言えど企業の要領で全体が形成されているのか、もしくは小さな村の運営の様になっているという事になる。…でも企業にも村や町の運営にも暗殺なんてないし、無理…)
「そう、ありがとう」
「いいえ、お役に立てて光栄です」
胡散臭い笑顔だった。
私は、イノリ姉さんと静かにホールを退出する。
見計らったが如く、後ろに待機していた柊は声を荒らげた。
「アウルム!!」
「柊か、なんだ…」
「なんだではありません。お嬢様にあのような事をするなんて…お嬢様にキスなんて…」
「たかが挨拶だろ。第一お嬢さんの俺を視る眼、無表情で可愛げもない」
「あんなに可愛らしい人はおりません!相手があなただからです」
「はいはい、別にいいだろ。期限は1年。俺たちは強制参加なんだからな」
「……くっ、死になさい」
銃を発射させる音が響く。
ホールのざわめきとは全く別な空気を流し続けているものもいる。
ミノアとプロセスだ。
「今日はランは来てないの?」
「ええ、仕事がありましたから」
「そうなの、残念ね」
「そうですね、では迎えにでも参りますか?」
「そうするわ。…そう言えば、まだアルムは家出中?」
「ええ、全く仕方ない息子です」
ドンの執務室
「バーン」
「何か問題でもありましたか、ドン」
「ヒノエが、冷たい眼で俺を見ていた」
「はぁ、そうですか」
「…仕方ないだろう、なぁ藤」
ドンは結構落ち込んでいる。
「ドン、きっと落ち込んでてよ」
イノリ姉は、そう私に呟いたが、それどころではなかった。
ヒノエお嬢様は今後の事で頭がいっぱいだった。