お嬢様について その18
(いったい、私の現在の父は何を言ったのか、さっぱり理解不明だ)
「お嬢様、大丈夫ですか?」
隣の柊が何か言っているが、あまり頭に浸透して来なかった。
「あら?…随分驚いてるのね。私は面白くて笑いが止まらないのに」
もう、すでにイノリ姉の話は置いておくことにする。
(私が、マフィアのボス………、あ、ありえないっ!!それだけならいざ知らず、夫も決められているなんて……、私マフィアは無理…)
「…では、続ける」
こうしている間にもドンはどんどん話を進めている。
(止めなくちゃ!…それ以上聞きたくない。私の平穏が崩される!)
「御待ち下さい」
ザワザワしていたホール内がもう一度音を消しさる。
「ドン、私はこのファミリーの頭として立つ力があるものではありません。すぐに、このお話はなかった事にして頂きとうございます」
この島やこのバレルファミリーが治めるすべての人間より小さい女性が、ドンの前に進み出た。
変わった衣服を着ている姿は、目を引いた。
また、彼女は強い眼を宿していた。
だからだろうか、誰も何も声を発しない。
強いものが宿すオーラのような物を発しているからだ。
マフィアは、身体的に強いものだけがなることができる職業ではない。
そして、バレルファミリーのドンと対等に話そうなどと思うものも、この中には殆ど存在しない。
「いいや、ヒノエ、お前がこの島の頭だ」
「ですが、何もこのファミリーについては存じあげません。…店を運営するならいざ知らず、ファミリーともなれば大きな企業体系、そして何より、私はマフィアを存じ上げません」
「知っているではないか。お前は、私をイノリをミノアを柊をずっと幼きころから」
「それは、家族だから!」
「ああ、ファミリーは家族だ。家族を知っているお前になら、このバレル任せる事が出来ると思っている」
「ドン!!」
「お前は、このファミリーを知ればよい。家族を知ればよい。…そしてこのファミリーの上に立て」
「……どうなっても知りませんよ」
「構わない。お前はいつでも正しき道へ行く。その為に我らがいるのだからな」
「そうよ、ヒノエ。この私が補佐なのよ」
「そーだよ、イノリ姉の泥船に乗ってるんだし、これ以上沈まないって」
「ミノア…それはどういう事?」
「…♪」
「全く…まあいいわ。あんたはササと嫁ぎなさい」
「はーい♪」
「……はぁ」
「ヒノエ、異論は受け付けん。質問はないな」
「待ってよ、ダンパパ。それより、私の話が先!!」
「ミノア!」
「いいじゃない、ねぇ、ヒノエ」
「…ふぅ、仕方ない。…皆よく聞け。ミノアはプロセスの嫡男の許へ嫁ぐ事になる」
周りから祝福の拍手が起こる。
「プロセスはいるか?」
「ここに」
ガタイのいい男が現れる。
筋肉質で如何にも海の男と言った風貌だ。
「お前の息子に娘を預ける」
「確かにお受け致しました。ミノア様を迎えられること大変嬉しく思うております」
「ふふ、3人の中で一番乗り♪」
ヒノエお嬢様の姉ミノア様は、東の国ではこう言う「じゃじゃ馬娘」