お嬢様について その14
ドンは、まだ考え事中のようです
あの時、藤の命を保たせたのは、俺だ。
太夫が言うことには、藤と俺が出会うのは遅かった。
だから、仕方のない事なのだと説いたのだ。
蓮太夫は、変な遊女だった。
東の国の遊女は皆こんな女なのかと勘違いした程だ。
「…外人さん。
あなたは、私の愛しい子と愛する為にここへ来たのよ。
遥か昔から我が一族は婚姻するものは生まれた時決まっていて、先読みするものが引き合わせ一族を増やしていた。
元々、人と違う力を宿した私たちは、生殖機能が高くないの。
だから、自然とその形が培われていたわ。
もちろん、そうしなったものも存在するけれど、子は生まれない事が多かったわ」
蓮太夫は、遊び女とは言っても教養の高い女性のようだった。
「そうね、私はその力を身に宿す運命に生まれてきた者よ」
「…ふん、そんな一族いるものなのか?」
「ええ、了承などいらないわ。
あなたには、あの子たちを連れてここを出て行って貰わなくてはならないのだから」
「ほう、この私に指図するのか?」
「ここで貿易という名の商売をしに来たことは承知しているわ。そして、それが上手くいっていないことも承知している」
「……」
「だから、私がそれを上手く運ばせる助けになり、等価交換といきましょう」
「…ふん、いいだろう。女の面倒くらい見てやるさ」
俺は、どうしても成果とこの東の国から輸入したいものがあった。
その為なら、何でもよかった。
女の面倒くらいで、達成されるならそれでもよかった。
他国で大事になるよりは、その方が手っとり早かった。
「約束」
「ああ、守ろう」
「承知下さいましてありがとうございます」
藤に会ったのは、それから1日後。
子供のように小さき女だったが、黒い長い髪に、静かな眼が印象的だった。
「お前と他3人の世話を任されたものだ。ダンと呼べ」
「ダンさまですか?
…藤です。花の名の藤。そう言います。」
着物をすり寄せて、小さい身体をさらに丸めて挨拶する姿は可愛らしかった。
「ふ、じ」
「はい、異国語お上手な方で安心しました。…姉さんが、外国の方と」
「上手いか、そうか、褒めて頂いて光栄だよ」
「姉さんが、我儘を聞いて頂けたと言っておりました」
「……、ああ…、そうだ」
「…有難き事にございます。姉さんに代わり、深く深く感謝申し上げます。お世話頂けるのですから、精一杯私もお世話致します」
がらんとした遊郭の一室で、蓮太夫は静かに葉巻に火を付けた。
「その子の魂は、小さく細い。
しかし、その子の魂の意志は何より強い。
その子の魂は、生まれるその時に違う力のある魂に入れ変わる。
その子の魂は、強くそれを望み、自らの力で力のある魂を呼ぶ。
その子の力のある魂は、我々一族の力を操り、多く血を残す。
その子の力のある魂は、違う地で正しい形で一族の繁栄をもたらす。
……こんな理不尽な一族が、大きくなるなんて面白いことだよ。
ふふ…受け継ぐ能力は、元の魂の力・私の力・藤の力、自身の力、随分欲張りな子だよ。
全く、人生最後の方でこんなものをみるなんてねぇ…。
藤、私には巡らなかったことを、残りの人生で人を愛して愛して幸せを味うんだよ…」
この言の葉の予言は、誰も聞いていない
別宅の別棟のテラス
「伝えることが仕事ではない。先読みは、見ることだからね」
「柏木??」
「ああ、日下部ですか…」
「急にどうしたんですか?」
「…蓮姉さんが言ったことよ」
「懐かしいわね」
「ええ、何となく。ヒノエお嬢様は、藤に似てるけど蓮姉さんの力も宿してる気がしてねぇ」
「そうですわねぇ…力を持って生まれた一族の娘だけれど、相手が一族同士とは全く話が異なるものねぇ」
「そうよね、私たちの子は、東の国の人で力の現れなかった一族の人の子ですしねぇ」
「ええ、ヒノエお嬢様の能力の発現は曖昧でよく分らないところがありますから…」
「…私たちもよく注意しておかなくてはね」
「ええ」
ヒノエお嬢様は、藤の忘れ形見です
主人公が中々出てこないケド、今は仕方ない(-"-)