お嬢様について その10
グレーの髪の男を背に2匹と1人は廊下を突き進む。
「全く、お前たちはピーピーウルせー鷹だな~」
「ピ」「ビィ」
「イタッ、そう言えば、あの時もそうだったな」
「フォボス、威嚇しちゃダメ!!ドンだよ。偉い人なんだから」
「ピ、ギビィーー」
羽をばたつかせて、ドンを睨みつける。
「ふふ、ダンパパ、鷹に威嚇されてるし♪」
「ふっ、ミノア、笑ったら失礼よ」
「はーい」
2人の姉はどこ吹く風だ。
相変わらず、凄みのある美女だ。
(いいボディしてるよな~)
威嚇されている当の本人は、何を考えているかよく分らなかった。
無表情。
(美丈夫の無表情は、本当に怖い。何考えてるんだろう、この人。怒ってたりして)
「も、申し訳ありません。きちんと言い聞かせます。ドンの誕生日パーティに呼んで頂いたのに」
わたしは、着物の裾を握り小さな緊張を強いられていた。
「かまわん。お前が主だ。それより、どうだ?」
椅子から立ち上がり、こちらへやってくる。
「どう、とは?」
「あら、キモノのことよ。ダンパパが選んだのよ。」
「そうそう、すっごーーーい悩んでたし。ダンパパは」
間髪入れずに話してきて、2人も私との間を詰めてきて、周りを囲む。
美女・美丈夫に囲まれて私は極度の緊張状態だった。
この親子は、普通の美女・美丈夫とは違って、妙な威圧感があるので毎回辛かった。
さすがは、マフィアのドンとその娘だ。
(助けて、柊、渡…)
従者と護衛は、扉の前で控えている。
「相変わらず、ちっさいねぇ、ヒノエは」
そう言ってミノアは着物に触れる。
「そうね、容姿も幼いし、今年は17よね。何がいいかしら?」
「それより、ソレの着心地はどうだ」
イノリの話を遮って、ドンは感想を聞きたがる。
「とてもいいです。ありがとうございます。」
カチン、カチンの私を差し置いて3人は何か揉めているようだった。
近くにいると未だ上手く話せない私は、内容を聞いていられる程余裕がない。
その頃、扉前
「おお、お嬢が完全に囲まれて何も見えん」
「口を慎みなさい、渡」
「だけどよう、かわいそうじゃないのか、アレ」
「ですが、父親ですよ。ファミリーのドンです。どうにもなりません」
「だけど、困ってるお嬢を助けんのが従者の仕事じゃないんか」
「くっ」
「あーあー、かわいそう。お嬢は超絶に緊張している」
「わかってますよ。行けばいいんでしょ」
「おー、さすが柊。お嬢の一の従者」
「ピーー」「ビィー」
鷹はそんな二人を視界に入れていた。
「ですから、ダンパパは威圧的なんですよ。ただでさえ無口、無表情」
「そうそう、40センチ以上も身長差あって、その顔!!」
「…お前たちはうるさい。私の誕生日だ。少しは黙っていろ」
「あら、嫉妬?」
親子の言い合いは続く。
私の緊張も続く。
(その腰と太ももにある拳銃を握って話すのは、ヤメテ)
今日は、ヒノエお嬢様の父、マフィアのドンの内輪のお祝い日である。