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第1ホール はじまりのドキドキ
朝の空気が少しひんやりして、フェアウェイはまだ露に濡れていた。
ご主人はティーの前で立ち止まり、クラブを握る手に力が入る。
僕――小さなゴルフボール――は手元のケースでじっと待つ。
バッグの中では、予備のボールたちがそっと見守っている。
心臓の音が聞こえるような静けさ。
「よし…行くぞ…」
小さくつぶやくご主人の声が、周りの空気を揺らした。
ぱーん、と打たれた僕は空中でくるくる回り、芝の上を転がる。
思ったより遠くへ飛んだけれど、枝にちょっと当たって揺れ、足元の葉っぱに埋もれそうになる。
でもご主人の視線が温かい。
僕は少し弾けるように揺れ、嬉しくなる。
ここから長い旅の序章が始まる――
二人で、まだ見ぬホールを歩いていく予感が胸に広がった。




