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この道は、一寸先の闇行き。

 皆様こんにちはこんばんは、遊月奈喩多と申すものでございます!

 友情とは何なのか、人は何を以て人を友達と思うのか、そんなことに思いを馳せつつ、そんな自問とは特に関連のないような趣味の話となりました(笑)


 それでは、本編スタートです!!

 夜を徹して降り続けた雨粒が、何度も車窓を叩く。

 鈍色(にびいろ)に濁った空から落ちる雫は、なんだか私たちを責め立てているように聞こえた。

 私たちに逃げ場所なんてないと告げるように、私たちに手を伸ばすように。何度も、何度も。


 見知らぬ景色が雨に煙る様は新鮮だったけど、雨粒にうんざりした私たちは窓の外を眺めるのをやめて、ただお互いの顔を見つめるだけになった。ほとんど着の身着のままの姿でドアの両脇に立つ私たちは、周りからどんな風に見えているのだろう。そんな益体(やくたい)のないことをふと思ったりしながら見やった星華(せいか)の顔は、今の空模様のように沈んでもいて、けれど心なしか清々しい晴れやかさを宿しているようにも見えた。


 全てが真っ赤だった夕暮れ。

 私たちは、住み慣れた町を離れた。

 ある程度のお金を持ち寄って、私たちは電車に乗った。なるべく遠くに行きたいというのが、星華の望みだったから。といっても、ほとんど星華が出してくれることになったけど。なんでそんなにお金持ってるの、とは怖くて訊けなかった。

 その日がお母さんの誕生日だったことを思い出したのは、電車に乗ってしばらく経った頃──お父さんとお母さんそれぞれからLHEIN(ライン)が来ているのに気付いたときだった。

 お父さんと一緒にケーキを作る約束をしてたし、お母さんにもプレゼント楽しみにしててねって言ってたのに、どっちの約束も破っちゃったな。そんな感傷は、けれど心の表面にかすり傷をつけたくらいで、すぐに治まってしまった。そんなに家族仲が悪かったわけでもないし、両親のことも大好きだったはずなのに、そんな気持ちもすっかり褪せてしまっていた。今更になって後悔してみたけど、返信するのも怖いな……私の中でふたりの優先度が下がってしまっている現実を、まだ直視する勇気はない。

 終電の後は最後に降りた駅の近くで、薄暗くてちょっとタバコ臭いネットカフェに泊まった。お店の人は怪訝な顔をしていたけど、そこはそういう客も慣れっこだったのか、深くは追及してこなかった。なんで星華がそういうところを探し当てられたのか、そして、あのアパートにいた人が何者だったのか、なんであんなところに星華がいたのか……何も、星華の口からは語られなかった。だから、私も深くは尋ねない。


 ただ、ただ。


『友達でしょ、助けてよ』


 あの星華が──いつも明るくて、目がキラキラしていて、公明正大で、誰にでも分け隔てなくて、溌剌としていて、みんなのまとめ役もできて、元気で、みんなから好かれてて、みんなのことが好きで、人懐っこくて、無邪気で、誠実で、責任感が強くて、周りをよく見てて、思慮深くて、可愛くて、綺麗で、ちょっと手先が不器用で、それでも絵心はあって、料理下手なところも愛嬌で片付けられて、人気者で、流行りに詳しくて、ノリがよくて、優しくて、私を光で照らしてくれた星華が、あの時だけ。


 あの時だけは、暗い瞳でどこかを見つめて、その視界に私のことなんてひと欠片も入れないまま、自分勝手で醜くて無様で無遠慮で無思慮で押し付けがましくて迷惑で(おぞま)しい願い事を、恐らくその瞬間は躊躇うことすらないまま口にしたことが──そしてその後、いかにも自己嫌悪を感じていますという顔をしてみせたことが、どうしてだろう、すごく嬉しかった。


 恐ろしいなんて、ほとんど感じなかった。

 邪推や軽蔑も、私の中には全くなかった。


 あったのは、ただ。

「ねぇ、星華」

「……ん?」

 ほとんど眠れていないのだろう、朝日を覆い隠す雨景色の白が少し移ったような顔を向けてくる星華に、私はひとつだけ問う。


「私たち、友達だよね」

「  」


 眠たげな星華の声は、淡い微睡みの心地よさを否定するような車内アナウンスで掻き消されてしまった。私はこの世でいちばん貴重な宝物を目の前で掠め取られてしまったような悔しさと憤りに駆られそうになりながらも、やはり答えを返してくれたときの無気力そうな顔に深く感じ入って、だからこそ「そっか」とだけ返した。

 だって、どういう答えが返ってこようが関係ない。私に助けを求めた星華のあの言葉だって、私が彼女の言葉に逆らわないのを知った上での言葉に違いないから。

 だから、私も構わない。

 私は私の都合のいいように彼女の言葉を聞こう。私の都合のいいように、この逃避(いま)(まっと)うしよう──本気でそう思っていた。


 鈍色の空は十分明るく見えるのにどこまでも暗澹としていて、始発電車の進む先をすっぽりと飲み込む大きな穴に見えて仕方なかった。

 それでもよかったはずなのに。


 たぶん、私はどこかを間違えた。

 何を間違えたのか、もうわからないけれど。

 とにかく、私は道を間違えたようだった。


 でも、それがどこだったか……何度考えてもわからない。

 だから、朝雨に追い立てられる電車のなかで揺られる私にだって、わかるわけがなくて。

 次どこ行こうか──そう呟くために彼女がこちらを向くまで、私はただその横顔を見ていることしかしなかった。


 雨は数時間後、私たちが小さな無人駅で降りた後もしばらく降り続いていた。

 前書きに引き続き、遊月です。今回もお付き合いいただきありがとうございます!


 友情というと、私は友情と慕情の境界が曖昧な、いわゆる『クソデカ感情』と呼ばれるものが大好きなのですが、皆様はいかがでしょうか?

 まあね、クソデカ感情って友情だけでなく師弟の間でも存在するものですからね(遊月奈喩多は『聖闘士星矢 THE LOST CANVAS』という漫画で男から男に向けられるこの手の感情の濃度にやられて以来、約15年くらいはそういうのが大好きなオタクです)


 ということで、クソデカ感情という言葉だけ覚えて帰っていただければ、もう今回は満足だったりします。


 また次回お会いしましょう!!

 ではではっ!!

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