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【探偵#9】まさかの急展開?狙われる依頼者

私の名前は星都風香。


「すいません…本当はちょっとしたいたずらで終わらせるつもりだったんです…」


今回の依頼の犯人を捕まえて事情聴取をしている探偵だ。


依頼人の三珠さんと篠原君が付き合い始めてから起きた謎の嫌がらせ、まさかこんなに犯人が一瞬で見つかるなんて予想外だ。


私達が腕を組み仁王立ちするその先、教卓の下で体から水分が抜けてカチカチになった青いスライムの生徒、名前はミューというらしい。


…スライムも雄雌があって恋愛感情とかあるんだ。


「なんで…こんなひどいことができるの…?二人があなたに何かしたわけじゃないでしょ!」


夕日に照らされたメリーは依頼人の怒りを代弁するかのように怒っている。


「二人が楽しそうなのが許せなくて…」


全然いたずらで終わるつもりない、もっと理由をきかないと。


「あなたと二人の関係は?なんでそんな嫌がらせとかしてるわけ?」


私の問いに、言葉が堰を切ったようにあふれ出す。


「だって、一年の時は私が同じクラスで隣の席だったしスライムの異界人でも仲良くしてくれるいい人だったのに…それを奪われたのが許せなくて…三珠だってほかの男と仲良くしてる癖に!」


「だからってそこまでしていいわけないでしょ!」


三珠さん…?の話は置いておくとしてメリーの言葉がどんどん熱を帯びていく、当然今回の行為が正当化される理由なんかどこにもない。


「てか、スライムの粘液をわざわざロッカーとか机に残してったのはなんで?」


いくらスライムといえど常日頃から粘膜をまき散らしてるわけがない、うちの練斗だってそんなことしない。


「それは…」


固まった全身でもわかるほどスライムの体がプルプルしてる…少し気持ち悪い。


「風香ちゃんは女心をわかってないなぁ、そんなの匂わせに決まってるじゃん」


だから風香ちゃんはモテないんだよ…とあきれるメリーは後で説教するとして、これは意外…私もまだまだだ。


「ロッカーと机にいたずらと…あと今学園で流れてる二人の噂とストーカー、三珠さんの家に手紙を入れたのもあなたの仕業ね」


今回の依頼、なんだか物足りない。これであとは生徒指導室に連れて終わり…なんて考えたその時だった。


「ストーカー?噂?何の話?」


少し乾燥剤の威力が収まったのか、青いスライムの波から表情のようなものを感じる。


「とぼけないで!ここまで来たらもう話してよ」


メリーの言う通り…だけど…


「確認だけど、あなたがしたのはロッカーと机にいたずらしただけ?」


「は、はい…でも家なんて知らないし噂も私が流したわけじゃないです」


「ストーカー行為もしてないの?嘘ついたら乾燥剤をさらにかけてしばらく体の自由を奪う」


「本当にしてない!私の家門限厳しいから部活終わりの二人を追いかけるとか無理なの!」


この感じ、嘘ついてるようには見えない…そういえばあの時。


「確か二人から話を聞いた時、濡れていたのはロッカーと机だけって話してた気がする」


「風香ちゃん、とりあえず練斗に情報を共有しよ、多分時間的にもう部活が終わって二人のもとに行ってるはず」


メリーが練斗に連絡を入れている間、私は思考を回す。


(二人は一般上がり、この学園じゃ珍しいけどほかの王族みたいな生徒と違って狙う価値を感じない。目の前のスライムみたく嫉妬してる奴は多い…?確かにスポーツ上がりだし学力と家柄を重視する学園では格好の的…)


そんな思考を巡らせてた時だった、唯一このスライムが話して引っかかった部分を聞き返す。


「さっき三珠さんがほかの男子と仲良くしてるって話してたけど、その話を詳しく教えて」


三珠さんは男女関係なく交友関係は広いし、学校の中でも陽キャと言われる部類、男子と仲がいいなんておかしくない。


でもなぜか私の何かが引っかかった。


脅しがよほど聞いたのだろう、固まった体を起こして説明し始める。


「数日前に嫌がらせのためにバレー部の部室に忍び込んでたら突然体育館のほうから男と三珠が歩いて部室に入ってきて、ヤバいと思ってとっさに壁の隙間に隠れました。そしたらよく見たら男は白武君で…」


しらたけ…白武?あの面倒な男が三珠さんと接触したってこと?


「この話、もっと詳しく!後メリーこのことも連絡して!」


「了解!風香ちゃん!!」


私はさらにこの話題に切り込む、どうして事件はこのまま解決しないのだろう…


「は、はい、そしたら誰もいない部室で二人は何やら揉めてる様子で…少し遠くに隠れたせいで話はあまり聞こえなかったのですが…」


白武財閥の御曹司は女好き、だが口説いてるわけではなさそうだ。


さらに揉めてる様子だったというのなら無視はできない。


「ほかに聞こえたことは?」


私の焦りが伝わったのか、さらに青い粘膜を揺らし慌てたように話し始める。


「あとは…跡取りがどうだとか資金援助するしないとか言ってたかな…ただどちらかというと白武君が三珠さんを脅してるように見えたかも…スライムは音を聞き取るのは苦手なんです!」


異界のスライムは耳があまりよくない、こんな重要な時に…


「風香ちゃん、とりあえず練斗に連絡しといたよ!」


練斗に嫌がらせの犯人を捕まえたが、どうやら二人を狙うのはもっと重大な敵かもしれないと、メリーは意外とこういう時は頼りになる。


この話を聞いた、いや聞いてしまった私がはじき出した答えは一つしかない。


「白武財閥が狙ってる…かもしれない?だけど…何のために…」


白武財閥はあの御影財閥に匹敵するほどの財閥、そんな巨大組織と最悪は…


だけど、この予感は悲しいかな当たってしまうのだ。



________



俺の名前は煉城練斗、金花探偵事務所の用心棒だ。


「煉城さん、下校までついていただいてありがとうございます!」


礼をするのは今回の依頼者、三珠奈津、バレー部に入っている同級生。


「今まで二人だし…僕ら人間だけじゃ怖くて…」


そう話すのはもう一人の依頼者、篠原優斗、野球部だ。


「瀬礼市の、特に瀬礼文学園の生徒の依頼なら受けさせていただきますよ」


「とても頼りになります…」


前にあった時よりも不安げな感じはなくなった気がする、三珠さんは特に。


部活が終わり二人が下校するタイミングで俺が合流、そして一緒に帰宅している。


(二人の家は瀬礼市南側の住宅街、北側にある高級住宅街とは反対方向か、瀬礼神社が近いな)


さっき二人の家の帰宅ルートは風香から送られた資料の中にあったので頭に叩き込んでいる。


「二人はそろそろ春の大会が近いのか?」


少し重めな空気なので雑談してみることにした、依頼人の前にこの二人は同級生、話の話題ならいくらでもある。


「はい、バレー部は2週間後にあります、ですが正直チームの完成度に不安が残ります」


「野球部は1週間後でしかも最近できた新しい球場で試合です!気合入ってます!」


二人はこの学園に親の力や勉強ではなくスポーツで入学してる、そりゃ気合入るよな。


そんな雑談をしていたら二人の通学路の中でも唯一の裏路地に入りかけていた。


(裏路地…でもこのルートで行けば10分時間を短縮できる…この先は人が多い街中、最悪は俺がいる…)


少しハイリスクな気がしたがリターンも大きい、二人も多分同じ考えなんだろ。


だがこの判断が良くなかったんだ…


そんなことを考えながら裏路地に入ったその瞬間、スマホが鳴る!


スマホの画面を見ると相手はメリー、なんだか嫌な予感だ。


「どうしたメリー、なんかあったか?」


「練斗!いま風香ちゃんと嫌がらせの犯人は捕まえた!犯人はスライムの生徒、でも…」


連絡がきただけでも嫌な予感がしたが、どうやら俺の予測は当たってしまうらしい。


「いま風香ちゃんと犯人から事情を聞いてたんだけど、この事件の犯人は別にいて、もしかしたらあの白武財閥が二人を狙ってるかも!!」


「白武財閥!?おいおい事件が広がりすぎだろ」


また面倒なことになってきやがった…だが同時に俺の眼は曇った三珠さんの顔を捉える。


「奈津、体調悪いのか?」


「いや何でもないよ…」


篠原が三珠さんを心配そうに見つめる。


だがよ…俺の役割は依然変わりない。


「メリー、だがこの俺がいると知って襲ってくる無謀なチャレンジャーには相応の末路しかないことを教えるだけだ」


「練斗も気を付けて、私達も風香ちゃんのバイクですぐ向かう!」


事態はいきなりの急展開か、にしても白武だと…


とりあえずゴーレムに連絡しよう、まだ事務所にいんだろ。


連絡を終えた俺は、明らかに態度が急変した三珠さんに話を聞かなきゃいけないようだ。


「電話が聞こえたと思うけど、どうやら心当たり…しかないようだな」


「はい…」


うつむく三珠さんに篠原はわけもわからず寄り添っている。


そしてその瞬間、俺は路地裏の先から殺気を捉える…


(四人…来る!)


「二人とも!すまん!」


俺は二人の首根っこをつかんで横っ飛び!!


ほぼ同時に複数の凶弾が俺達を狙う!!


バン!バン!バン!


「きゃー!!」


「なんだ!!」


二人は大慌て、そりゃこんな戦場で焦らない高校生いないだろう。


だが…今の銃撃で分かった、一人だけ腕が段違いな奴がいる。


「おい、てめぇらいきなり銃撃つとかイカれてんのか?」


二人を俺の後ろに隠して啖呵を飛ばす。


「おいおい、簡単なミッションだと思ったらとんでもない奴おるじゃん」


現れたのは四人の暗殺者、だが真ん中の男だけオーラが違う。


「どうやら、用心棒の本領発揮ってとこか!!」


そして、この路地裏でとんでもない戦闘が繰り広げられる…だがその現場を高みの見物してる奴がいたなんて知らなかった。

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