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【探偵#7】金花探偵事務所に迫る影

私の名前は星都風香、金花探偵事務所の探偵をしている。


現在は昼休み、友達の多くない私はよくこの豪華すぎる校舎を散歩している。


(なにこのレットカーペット…貴族の映画とかで見る奴じゃん)


正直、この学園でも少ない一般家庭上がりの私からするとある意味退屈しない学校生活になっている。


1階の売店前の廊下を越えてぼちぼち3階の教室に戻ろうか…なんて考えていた時だった。


私の平和な昼休みが音を立てて崩れていく。


「やぁやぁこれは入学以来学年1位の星都さんじゃないですか」


心なしか馬鹿にしたような雰囲気を孕むその言い方に若干イラっとしながら振り返る。


(またこいつか…だるい)


そこにいたのは___


「その顔、またこの僕を忘れましたか?2年3組の白武信也しらたけしんやですよ、常にテストではあなたとライバルじゃないですか」


わかりやすい金髪に首元にある校則違反の銀のネックレス、さらに取り巻きの複数人の女子を連れていつも歩いているのは見てた気がする…


「で、その私に負けまくってる2位の敗北者が何の用?」


私はこの学園に入学してから全て満点の学年1位をキープしている、優秀な瀬礼文学園でも史上初の快挙だとか。


思わず散歩を邪魔されたイライラをぶつけてしまったが、帰ってきたのは意外な反応だった。


「別に用事なんてないよ星都さん、美人がいたら話しかけてしまうのが男の性でしょう」


取り巻きの女が、私のほうが信也の事が~とか少し顔がいいから信也に色目使うな~なんていろいろ言い始めた時だった。


「あと言っておくことが一つ」


白武信也の空気が一気に変わる。


「探偵とかいうお遊びをしている今の星都さんに次のテストで負ける気がしない」


「この学園の来てから探偵な私に勝てない時点で、その理論は破綻してるわ」


少し本気な言葉に内心驚きながらもなんとか軽口を返す。


「まぁ。今回はこれくらいにしておこう、この娘達が嫉妬しちゃうからね」


両手に花な男はさらに続ける。


「俺は欲しいものがあれば手段を択ばない、順位でも、手に入れたい女でも」


「そう、どんな無謀な夢でも追いかける資格だけはあるからね」


そんな決意を決めた男の言葉も私は軽口で返す、取り巻きの女は私を睨んでくるが私は何も悪くないよね?


(白武…たしか白武財閥の息子か…相も変わらずボンボン息子しかいないのか)


白武財閥、人間の世界で政治から何まで勢力を広げる巨大財閥、敵に回ったらただ事じゃなさそうだ。


(まぁどうでもいいけどね…)


________



学校が終わった放課後、私はその足で金花探偵事務所へと向かう。


(小テスト、練斗とメリーが難しいとか騒いでたけどあんなの誰だってできるでしょ)


あの二人にまた助けてと言われるなぁ…多分。


学校から金花探偵事務所の距離は徒歩で10分程度、駅で言うなら一駅ほどの距離。


そして今日は三人で依頼人と話す予定だ。


(メリーと練斗は少し用事があるって…こっちを優先してよ)


スマホに二人からのメッセージが入っていたのを見ながら、予定なんて探偵事務所以外は基本無い私の嫉妬を吐きながらもすでに事務所についていた。


「ゴーレム、留守番と掃除ありがとう、ただいま」


ギィ~という建付けの悪い音を奏でる扉を開け、4人目の金花探偵事務所のメンバーに声をかける。


「風香様、帰宅を確認、事務所の異常なし」


銀色の機械的な見た目をするがたいのいいロボット。


「相変わらず真面目ね、いつも掃除してくれてありがとう」


私の言葉に反応するかのように緑のバイザーが光る。


「任務に戻りマス」


ゴーレムは金花探偵事務所の保護者的な存在、高校生三人じゃ何かとできないことがあるし…


ゴーレムの役割は掃除や雑務、サイバー系の仕事はゴーレムに任せてるし金花探偵事務所の防衛が役割、戦闘力は練斗も認めるほど。


ゴーレムが雑務に戻ったのをみた私は制服のままソファーにダイブ、これが人生で一番気持ちのいい瞬間だと思っている。


(さて…依頼人のために頑張りますか…)


私は探偵、この組織の頭脳、考えることが好きな私にとっては天職だ。



__________



「悪い風香、遅れた」


「風香ちゃん、私はサボろうとする練斗を止めてました」


「流れるように嘘をつくな」


私がソファーでくつろいでいる至福の瞬間、扉は開く。

目の前にいる二人は相変わらずの様である意味安心した、いや、成長していないと怒るべきところか。


「二人とも、そろそろキレるよ」


「「ひぃ…」」


私の冷たくどこか怒りを孕む言葉によって二人はまさに蛇に睨まれた蛙、まぁ事情は後で聞いてあげよう。



_______




それから数十分後、事務所に依頼人がやってきた。


さっきまで横になっていたソファーに練斗とメリーと三人で座り、反対のソファーに依頼人の三珠さんと篠原さんが座っている、なぜだろう、二人は席に座った時から落ち着きがない。


「すごいですね…これが噂の探偵事務所」


「秘密基地みたいだ…」


三珠さんがまるで美術館にいるようなそんなまなざしで事務所を見渡している、篠原さんは男の子らしい反応だ。


(この二人…そんなに事務所が面白い?)


ゴーレムが出してくれたお茶も冷め始めるんじゃないかと思うくらいに事務所に興味があるらしい…特に何にも装飾もしていない質素な事務所なのに…


「それで具体的な被害をもう一度教えて」


二人が事務所に関心しているところ申し訳ないが、本題へと切り込んでいく。


「具体的な被害は…」


眠たそうなメリーと練斗を置いといて私は話を聞いていた、この二人は後でぶん殴る…


「具体的な被害は学校に広がる誤情報、そして家に別れろ、などといった手紙による嫌がらせなどなど」


筆記用具などの物を隠したり壊したり、落書きに嫌がらせの手紙って…絵にかいたようないじめ…聞いてるだけで気分が悪い。


「つまり嫌がらせは二人とも同じ感じな被害か」


眠気から覚めた練斗テーブルに肘をつきいつの間にか話を聞いていた。


こいつ…いままで寝てたくせ話に入ってくるのがむかつくがそれは今はいい…いやよくないか…


「ほかには何かある?例えば付き合ってから違和感に感じてる部分とか」


私はマグカップの中身を全て飲み干してさらに聞き込む。


「そうですね…しいて言うのであればロッカーや机に嫌がらせされた後にどこか湿ってたりするくらいかな」


おぉ…これはいい情報…なんでこういうことを話さないかな…?重要な情報じゃん。


「たしかに…奈津の机とか湿ってたかも…」


篠原さんの反応を見るにこれは本当ぽい情報かな、私は頷きながら今までの嫌がらせの情報を使い古したメモ帳にまとめ始める。


「物を壊す、隠される、落書き、よくない噂、そして…」


家にわざわざ手紙…やたらと執拗なんだなと思う。


私が事件について考えてた時だった、練斗がとある質問をする。


「そいや…金花探偵事務所に来てくれるのはうれしいけどよ…先生とかには話したりクラスの人とか部活仲間には心配されないわけ?」


私もこの依頼を聞いた時から思っていた、多分この話がいくら”ご都合展開”とはいえそんな豪快に嫌がらせされたらクラスの人とか先生とか動き出しそうだけど…この学園にそんな常識は通じない。


「そうですよね…ですけど、私達一般上がりの生徒の厄介ごとに首を突っ込もうとするクラスメイトはいないんです、きっと先生達も…」


それはそうだ、この学園の先生なんか簡単にクビにして人生を終わらせることなんて簡単な生徒ばっかり、だからこそ”私達”がいる。


「わかりました、この依頼、正式にお受けしましょう」


私が依頼者の二人に向けてそう話す、メリーも練斗もすでに眠気から覚めてやる気に満ち溢れている。


「あ、ありがとうございます!」


三珠さんは今まで不安だったのか心なしか目が潤んでいる。


「私の家はあまり裕福ではなくて…バレーしかお母さんを支える方法が無くて…だから…」


(一般生徒…ね…)


私はどこかいやな胸騒ぎを感じてた。これが勘違い…になるほど私のカンは鈍くはない。



_______




それから私達はこれからの対応について話していた、やはりこの二人はクラスカーストがいくら上とはいってもやはり壁があるらしい。


「俺が朝と帰り、いつも家まで行って一緒に登下校しているのですが、校内は流石に俺ら二人じゃまだ不安が残ります」


登下校が一緒なだけで女子は安心するだろう、問題は犯人と目的だ。


そしてメリーがここにきて急に張り切りだす、最初からそのやる気を見せてほしい。


「じゃぁ今回の依頼は二手に分かれよう!私と風香ちゃんで犯人と嫌がらせを追う、そして二人の警護はうちの用心棒を派遣しよう!銀河一喧嘩強いから!」


「登下校と休み時間と部活の時間、俺がいい感じのところで監視しとけばいいてことか」


所長からの元気いっぱいな命令によって金花探偵事務所の方針は決まった。


「これでわかりやすくなった、練斗がいればまず手出しされても返り討ちにできるし私が調べれば…解決できる」


この生徒の力が先生と規則を凌駕する学園、そんな中での私達の役割。


「犯人は大きなミスをした、それは相手が金花探偵事務所ってことよ」


私も久々にやる気が出てきたかな…でも…私達の知らないところで物事は進んでいた。



________________




「今回のターゲット、どうやら護衛に瀬礼市の探偵、金花探偵事務所が付いたそうです」


そう報告するのは黒いジャケットの鬼人族の大男。


「ほう…ならば《封印者》の煉液と必ず出会えるという事か、楽しみだ」


巨大な豪邸、その中のどこかにあるといわれている部屋で二人の男が資料に目を通していた。


「昔、組織では負けっぱなしだったが…今は違う」


白い中華っぽい服と立ち振る舞いから感じる風格はこの世に”虎”として生まれてきたことを表している。


「私達の目的は主人の目的、主人は欲しいものに手段は択ばない」


鬼人族の男が椅子を飛び跳ねるように立ち上がり、ドアに手を添える。


「あぁ金花探偵事務所、食いごたえがあるか楽しみだ」


つられるようにもう一人の男も立ち上がっていた。


「私の中の虎は常に強者を求めている」


「この任務、鬼人族の誇りにかけて必ず達成する」


この解き放たれた二人の異様な男達…この二人が今回の事件をさらに巨大なものにしていくなんてまだ私は知る由もない…

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