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【探偵#6】新たなる依頼者

俺の名前は煉城練斗、この異界と繋がった現代を生きる探偵の用心棒。


俺とメリー、そして探偵の風香の三人で金花探偵事務所を営んでいる。


「学校…めんどくせーなぁ」


春風が吹く街中を考え事しながら歩くのは悪くない。


俺が通っているのはこの日本トップオブトップの名門校、瀬礼文学園。


とある裏ルートで入学してしまった戦うこと以外知らない俺にとって勉強についていくのは大変だ。


「風香にまた怒られるなぁ」


この瀬礼市はこの地球でも数か所しかない《ゲート》がある街、そのせいでこの街は異界人と人間とのトラブルが絶えない、もともとゲートが出現する前は貧富の差が極端に現れる街でもあった。

そんな事情もあってこの街の事件は絶えない。


「俺達の仕事がただの散歩になることが一番の理想なんだけどさ」


瀬礼市の海に浮かぶ青白い光を放ち続ける異界への扉、いや地球への扉はきっと今日何らかの事件を呼び寄せているのだろう。


_________



この時期の校舎が一番過ごしやすいかもなんて思いつつ校門を抜け階段を上がり自分のクラスに入り自分の席に座る…


今まで何回も繰り返してきたこの”朝”が何やら今日は少し違うらしい…


「あ!やっときた!遅いよ練斗!」


「多分練斗は執事に送り迎えしてもらっているメリーだけには言われたくないって思ってるわ」


窓側の一番後ろという最高の条件を誇る俺の席とその隣の席を朝から侵略するのは…

同じクラスであり金花探偵事務所の所長と探偵、金花メリーと星都風香。


瀬礼文学園の白を基調とした制服が二人ともよく似合っている。


「風香、正解だ。てか風香と俺、部屋隣同士なのになんで風香のほうが速いんだ?てか前から起こしに来てもいいって言ってるだろ」


「めんどい」


「薄情にもほどがあるだろ!」


俺と風香は近くの同じマンションで暮らしていて部屋は隣同士、俺はそもそも家族なんていない一人暮らし、風香は母親との二人暮らしだが忙しいのかめったに帰らずほぼ一人、なのでよくお互いの家に行って飯を食ったりする。


「お二人さん…いいんだよ私は…別に二人の関係に何かを言うつもりなんてないし、関係がばれないようにあえて時間をずらしてるんだね…ただ所長の私に一言あってもいいじゃないか」


「練斗、いまからメリーをスライムで溶かそう、跡形もなく」


「残虐すぎるが仕方ない、メリーごめんよ」


「ごめん!ごめんってばぁ!」


朝から俺は席に座らずに立って何してんだか、そんなこと思い始めた時だった。


「星都さん、煉城くん、金花さん、おはよう…えっと朝から元気だね」


申し訳なさそうに登校してきたのは俺の隣の席の桜田梨乃さくらだりの。おとなしそうな性格で眼鏡が似合う文学少女的な感じの人だ、よく隣で小説を読んでいるし図書委員だし、わかりやすいキャラをしている。


「すまん桜田さん、すぐにこいつら退かすから」


「いや…いいんだ、まだホームルーム前だからさ」


風香とメリーが俺達の席を侵略することはよくあること、俺が女子で梨乃の立場だったら多分この二人に強くは言えない気がするからよく俺が追い払っている。


「メリー、どうしてあなたは人の気持ちも考えられないの?桜田さんが悲しんでるでしょ」


「えぇ?私が悪いの?」


こんな感じで朝からエネルギーを毎度持っていかれてしまう、風香に至っては桜田さんの前の席なのでわざわざ後ろに来る意味ないだろ。


________



「煉城くん、次の小テスト、勉強してきた?」


朝のホームルームも終わり一時間目の授業の準備に取り掛かっていた頃だった、いつもの通り桜田さんが俺に話しかけてくれる。


「一応勉強したけど自信ないな」


「まぁまだ新学期始まったばかりだし、数Ⅰとかの復習とか出そうだよね、まぁ一般的な学校の基準で話したらだめかもしれないけど」


そう…何度も言うがこの学園は超が付く名門、普通なんて概念は残念ながら存在していない。


「一般人の俺にはクラスの皆と違って失うものないから大丈夫!」


「先生にまた呼び出されるよ、最近もまた三人が職員室に呼ばれたって噂で聞いたけど大丈夫?」


「ま、教室の窓ガラス全部割ったくらいだからそんなに怒られなかったよ」


「はい?そんな…?」


このクラス…いやこの学園で俺達の名前はそれなりに広がっているらしい、広告という広告をしたことは一度もないが…良くも悪くも話題になっているようだ。


「まぁ俺と風香は一般人あがりだからそもそも教師からの扱い悪いしな」


「そこは否定しないけど…私だってこのクラスの中だったら一般人の部類だよ」


眼鏡を掛けなおしながら話す桜田さんだが、両親は外交官という”普通”で考えたら規格外、しかも…


「いやいや、桜田さんの両親は外交官の中でも優秀な異界の国にいるんだろ?十分に規格外だよ」


「そうかな?周りが凄すぎて実感ないよ」


確かに…例を上げるとまさにメリーはあの金花グループをまとめる異界の覚一族、金花財閥の娘だし、このクラスの今黒板を消しているクラス委員長は妖精族の王の息子だという…


「確かに…桜田さんの言いたいことは痛いほどわかる自分がいる」


風香の母親だって確かバリバリ前線の外科医。親が医者でも一般の貧乏人扱いってどうなってんだよ…


そんな桜田さんとお隣トークで盛り上がっている時だった。


「練斗、ちょっといい?」


メリーが珍しく真剣に声をかけてくる、こういう時は大体厄介事と相場が決まっている。


「なんだメリー、俺と桜田さんが楽しく会話してるのをみて嫉妬でもしたか」


「練斗が風香ちゃんのプリン間違って食べたことを報告するよ」


「メリー様、どうやら出番というわけですね」


俺はどうやら所長に握られたくない秘密を握られてるようです…


________




授業終わりの休憩時間、メリーに連れられるように俺は廊下を歩いていた。


向かったのは今は使われてない3階の空き教室、俺達2年生は3階の教室で授業を受けてるが、同じ階にこんな教室があったなんて初めて知った。


「二人とも遅い、ここまで来るのに何分かかっているの?」


教室の扉を開けるとすでにご機嫌斜めな風香がいた…アイスの事じゃないよな?


「メリーが俺を連れてくるのが遅いからだよ」


「いやいや練斗それは無理があるでしょ」


俺とメリーはすぐに不満を漏らすが、この教室にはすでに2人ほど”依頼人”が集まっているようだった。



__________



「つまり、なんとなくストーカーされてるかもってことね、大体理解したわ」



俺達三人が黒板の前に立ち、”依頼人”の事情を聞いていた、何やら今回もめんどくさそうな話だ。


「はい…登下校中になんとなく視線を感じたり生活の中で違和感を覚えるときが多くなっていて…」


そう椅子に座りながら話すのは同じ学年の三珠奈津みたまなつ。確か…別のクラスで族に言う陽キャで一軍女子、たしかバレー部だったような…


「やっぱり奈津は異界人にストーカーされていると思う、そんな気がしてならない」


その横で話しているのスポーツ刈り?いや坊主か?えっと確か…篠崎優斗しのざきゆうと、野球部…だったような?


こいつも確か三珠奈津と同じクラスのスクールカーストトップ、この二人を含めて2年2組の5~6人の男女グループがあった…ような…どうだっけ?


「その違和感はいつごろからなの?あと具体的に”変”って感じる部分は?」


少し焦り気味の依頼者を前にしても氷のように冷たく冷静な風香がさらに詳しく事情を聞く、メリーは…考えすぎてパンクしてきたか?


頭を抱えてくるくるしている我らの所長を一旦置いて、二人は語り始める。



「多分…2週間前くらいから…試合終わりの帰り道でなんとなく誰かいるような気がしたの、あと最近よくない私の噂も流れてて…」



噂…俺は聞いたことないぞ。



「俺の机に落書きで奈津と別れないと殺すと書かれたり、俺にもよくない噂が流れてて、でも心あたりは一切ないんだ」


三珠さんは短髪を揺らしながら、篠原は拳を握りしめながら話すのを見るに今回の一件は結構来てるのか?


「友達のあまりいない私でも聞いたことあるわね…たしか”一般上がり”の奴が調子に乗ってるとかパパ活とか万引きとか」


風香…俺とメリー以外にマジで友達いないからな、その噂の広がり方は凄いな。


「はい…俺と奈津はこの学園でも珍しいスポーツの一般上がり、さらにクラスでもそこそこな地位にいることも自覚してるよ、気に入らない誰かにやられている可能性が高い気がするんだ」


「私も一般上がりだから気持ちはわかる、だけど結論に至るのは待って」


隣の風香を見ると割と何でも無関心なのに今回は違うな、やはり境遇が似てる奴はほっとけないのか。


「なぁ、気になってたんだけどよ、二人は付き合ってんのか?」


俺はそもそもの純粋な疑問をぶつける、さっきの話の嫌がらせは色恋沙汰っぽかったから。


「その…公にも言ってないんですが…」


「はい…優斗とは丁度2週間前からそういう関係です…」


「俺達に言うのが初めてってことか、まぁなんで落書きの奴が知ってるか知らんが、しかもこの違和感のタイミングも同じなわけね」


なんとなくこの先の展開が読みやすくなったかもな、なんておもってた矢先、どうやら隣の探偵は心なしかやる気が出てきた気がする。


「二人のグループには言ってないわけ?黙ってる理由は?」


風香がこの話を聞いている人がいれば当然疑問に浮かぶ質問をする。



「その…言いずらのですが、私のクラスのグループのリーダー的存在に告白されてそれを断った後に付き合い始めて…」



言いずらくて、という彼女を見るとなんだか面倒だななんて薄情な感想しか浮かばなかった。



「俺と奈津で話し合って、みんなに言うのはまだ先でいいって決めたんだ」



やはり野球部、なんだか男気を感じる。



「まぁ大体わかった、あとはこの金花探偵事務所に任せて」


風香の長い髪がまるで勇敢な騎士のローブのように翻る、いや、今は騎士ではなく探偵か。


「いいぜ、どんな事件や異界人が相手でも金花探偵事務所を敵にした時点でムリゲーってことを証明してやるよ」


俺も風香がやる気になってやる気がみなぎってきた気がする。


だが…この依頼が俺達金花探偵事務所を日本と異界の関係が変わる大事件に誘うなんて知る余地もなかったんだ。


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