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【探偵#28】主人を守る盾

私の名前は金花メリー。


今、私は生徒会長候補をキャリーケースに詰めている。


……いや、状況だけ切り取ると意味わからなすぎるんだけど、こっちも必死なんだよ!


「ちょ、ちょっと練斗、ほんとに入るの!?」


「黙って押し込め!このキャリー、“一人用”にカスタムしてあるからな!」


ステージ裏の非常口の脇。


煙とざわめきがまだ体育館の中を覆っている中、私達は白武信也を“回収”していた。


ゴーレム特製・“人間一名強制格納可能キャリーケース”。


本来は「要人の緊急避難用ポッド」とかいう立派な名目だったはずなんだけど、今はどう見ても誘拐グッズだ。


「離せ!煉城君!何をするつもりだ」


「ちょっとばかしステージから退場してもらうだけだよ、王子様」


練斗が軽く片腕で白武を担ぎ上げ、そのままキャリーケースへ。


「狭っ……っ!?」


「我慢しろ、スーパーハイグレードなクッション仕様だぞ、贅沢言うな」


ガコン。


ふつうの荷物みたいな音を立てて、白武信也・収納完了。


「よし、ファスナー閉めろメリー」


「は、はい!!」


私は全力でファスナーを引き上げる。


中から「待て!」みたいな声が聞こえた気がしたけど、知らない。今は知らないふりをする。


「よーし、“荷物”の準備完了。行くぞ――」


その瞬間だった。


空気が、ぞわりと変わる。


「……来た」


ほとんど音のない足音。


次の瞬間には、ステージ袖の薄暗闇から一人の少女が飛び出してきていた。


「信也様!!」


黒と白のフリルが揺れる。


瀬礼の制服をベースにした、どこかメイド服を思わせるアレンジ。


活動者会議で見た専属メイド、ミゼ・レムナント。


早い!煙も暗がりもほぼ意味をなしてない。


まるで、最初から“ここ”を読んでいたみたいに一直線だった。


「何を…している!」


ミゼの視線が、白武入りキャリーに突き刺さる。


その瞬間、床板を割りそうなほどの踏み込み。


「信也様から離れろ!」


腰のホルダーから伸びるは、数多の血を吸ったナイフ。


殺意の塊の様な武器が一瞬で抜かれる。


「やばば!」


「遅ぇよ」


それより先に、すでに“抜いていたやつ”がいた。


「……!」


ミゼの前に立ちはだかる赤い角。


煉獄刀を肩に担いだ、うちの用心棒。


煉城練斗が、ニヤリと笑う。


「悪いなメイドさん、ここから先は通行止めだ」


「退け、信也様を…返してもらう!」


「おー怖、だったら!」


一歩、踏み込んだ瞬間にはもう、剣閃が走っていた。


「ぶっ飛んどけよ!!」


豪快すぎる袈裟斬り。


煉獄刀が半円を描き、空気を裂き、床を砕く!


「……っ!」


ミゼは刃を横薙ぎに構えて受けに回る。


だが、間に合わない。


ガギィィィィィンッ!!


火花と共に、衝撃が爆発した。


次の瞬間、メイドの少女の身体が、舞台袖から廊下側へ吹き飛ぶ。


「くっ」


人形みたいに軽い身体が、非常口の扉を押し開け、そのまま壁に叩きつけられた。


ドゴォォンッ!!


「……はぁ……っ」


ミゼは、その場で片膝をつきながらも、まだ意識を保っていた。


でも、今の一撃で数秒の猶予は稼げたはず。


「今だメリー!」


「りょ、了解!!」


私はキャリーの持ち手を全力で掴む。


見た目より軽い。


ゴーレムが重さ調整したって言ってたっけ。中身・白武信也なのに、女子でもギリギリ走れるレベルだ。


練斗もすぐさまこちらに向き直る。


「体育館から出るぞ!本校舎まで一気にぶっちぎる!」


「先生達も生徒会もみんな総会で体育館だもんね…見つかるとしたら、途中の警備くらい……!」


非常扉を蹴り開けて、私達は外へ飛び出した。


昼の校庭。


いつもなら生徒が歩いている中庭も、今は嘘みたいにがらんとしている。


「うわ……ほんとに誰もいない」


「生徒総会は“全校生徒強制参加”だからな。教師もほぼ体育館。警備は外周に数人いりゃいいほうだ」


つまり!


「今この時間帯、この瀬礼文学園で一番自由に動けるの、私達じゃない?」


「そういうこった!」


キャリーをガラガラ引きながら、私は本校舎に向かって全力疾走する。


運動部じゃないから、もうすでに息が上がり始めてる。


キャリーの中からは、ゴトン、とかドン、とか不穏な音がするけど今は聞こえないふりをしている。


「星都が言ってた隠し部屋って、どこの階だっけ!?」


「二年棟三階の旧資料室の裏。もうゴーレムがロック解除してるはずだ!」


「またそんな秘密基地みたいなとこ……!」


靴音が、静かな校舎にやけに響く。


廊下の掲示物。


誰もいない教室。


いつもなら先生がうるさく怒鳴ってる職員室前も、今はひっそりと閉じられている。


なんか……学校って、こんなに無人になると逆に怖い……


そう思った、その時だった。


背筋を、ぞわりと冷たいものが走る。


「……メリー」


練斗が、走りながら低く言う。


「後ろ見るなよ。振り返るよりも、走ることに全力を注げ」


「え、なに?」


そう言われたその瞬間、‘聞こえたくない音’が迫っているのを感じる。


そう、私達よりもずっと奥。


コツ、コツ、コツ、コツ


一定のリズムで迫ってくる、軽い足音。


でも、それが“速い”。


人間が走るより速いのに、まるで歩いているかのような音。


「……っ!」


「聞こえたな」


練斗が笑った。


振り返らなくても分かる。


さっきの一撃で吹き飛ばしたはずのメイド。


ミゼが、目にもとまらぬスピードで距離を詰めてきている。


「さすが、“白武専属”ってとこかよ」


紫の髪が靡く、再びミゼが急接近!


「信也様を…返してもらう」


さっきより、声が近い。


廊下の角を曲がるたびに、その距離が縮まっていくのが分かる。


うそでしょ……さっき壁にめり込んだよね!?


「やっぱりあの一撃で終わるタイプじゃなかったか」


練斗が、ちょっと楽しそうに言うなぁもう。


「メリー!」


「なに!?」


「このまま三階まで走れ!階段の踊り場で一回止まるから、そこで“アレ”使え!」


「アレってどれ!?うち、そういうの多すぎて分かんないんだけど!!」


「ゴーレムがくれた“非常用スライムボール”だよ!」


ああ、あのぷにぷにしたやつか!

忘れてた。ポケットに入れっぱなしだった。


「とにかく、止まったら振り返らずに廊下にぶち投げろ!あとは俺がどうにかする!」


「……練斗、もしかして――」


「もしかしなくても、ここからは俺の仕事だ」


そう言って、彼はニカッと笑った。


まるで、これから楽しいゲームでも始まるみたいな顔で。


「所長は荷物持って、目的地まで全力疾走。用心棒は、追いかけてくる“メイド型の化け物”止めてくるだけだ。簡単だろ?」


「どこが簡単なのか、一生理解できる気がしないよ!!」


…それでも!


私はキャリーケースのハンドルを握りしめる手に、ぐっと力を込めた。


ここで止まったら、風香ちゃんの狂気の大作戦が全部終わっちゃう。


だったら!


「分かった!階段まで全力で走る!!」


「おう!」


そうして私達は、無人の校舎を駆け上がる。


背後から迫ってくる、メイドの高速接近音と共に!


その頃…


階段前の廊下でミゼと練斗が向かい合っていた。


「ふざけるなよ…下民風情が…私の信也様に触れるなんて極刑でも足りないくらいだ」


ナイフを構える美少女メイドは激怒している。


「俺達を敵に回したらどうなるか、盛大に体験していけよ」


主人を守る盾であり矛である、各組織の最高戦力がまさに主人をかけてぶつかり合う…


次回!ついにミゼVS練斗…ミゼの真なる力?

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