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【探偵#23】瀬礼文学園という聖域

私の名前は金花メリー。


「風香ちゃん…全力で蹴りすぎでしょ…」


「メリー、うるさい」


お尻を抑えながら歩く、世界で一番かわいい覚一族の女の子。


こう見えて、私は高名な金花きんか一族の跡取り娘なのに…


現在は六時間目の授業が終わり、風香ちゃんと一緒に休んでいる間の課題を出しに行っている練斗を待っている。


「今回の会議、間違いなく、白武も来る、人間派の代表として」


風香ちゃんは廊下の窓を見つめながら、この先の未来を予測していた。


「すまん!遅れた!!」


赤い角が目印の練斗が遠くから走ってくる。


「練斗、提出課題は全て出したのね?」


「おう、ほとんど桜田さんとメリーと風香の答えを全部写しただけだけどな!」


「自身満々に言う事じゃないでしょ…」


こんな感じなのに、私よりも勉強ができるのおかしいでしょ!!


それじゃ、向かいましょうか。と風香ちゃんが言いながら階段を上がり始めた。


瀬礼文学園活動者会議。


開催場所は常に変わる、多くは順番で回している幹事の部室、または活動拠点となる。


今回の幹事は美術部、美術室にすでに会場が設置されているという。


「美術室、そいえばあれから時間たったけど、窓ガラス全部治ったのか?」


「大丈夫、御影さんと加藤さんから話を聞いたけど、全部元通りらしいよ」


風香ちゃんと練斗が話しているのは数か月前の依頼。


私達は天才といわれる美術部員、加藤ミカから依頼を受けていた。


依頼内容は美術展前に狙われる自身の作品を守ること。


そして、黒幕は、御影財閥の跡取り娘、御影穂香。


彼女もまた同じく美術部だが、ライバルであるミカさんを妨害してきた。


そこで御影家につかえる闇の忍び、風雷一族と盛大に激突、その衝撃で美術室の窓ガラスを私達が吹き飛ばしていた。


そこからなんやかんやで二人はお互いを許し合い、今では合作で賞を取ってるとか。


「そいえば、そんなこともあったよね、もうだいぶ前なんだ!」


「メリーの記憶だと九九さえも怪しいもんね」


「言いすぎでしょ!」


だけど、私達には不安が残っていた。


そう、それは現生徒会生徒会長こそ、私達がぶつかった御影財閥の長男、御影帝一。


彼は文武両道で圧倒的なカリスマ性を持ちながらも冷徹な戦略で熾烈な選挙を勝ち抜き、人間派の会長として君臨している。


「そんなことより、今回はどんな事を話し合うんだ?前見たく事務連絡なわけないよなぁ?」


「生徒会に異界派に人間派、生き馬の目を抜くこの学園、しかも今回は選挙も近くなってきているし、多分何かある」


風香ちゃんの目はもはや凍っている。


そんなこんなでたどり着いたのは美術室、教室のそあの前には見慣れた人物。


「皆さん!今回は参加されるんですね!」


瀬礼文学園の制服を髪と一緒に揺らしながら、制服の袖には落ちないのか、絵の具がついている。


「加藤さん、お久しぶりです」


「ミカちゃん!おひさ!!」


私は思わずハイタッチ、彼女も意外とノリが良い。


彼女こそ、かつての依頼者、加藤重工の令嬢、加藤ミカ。


「今回は私達が幹事なのですが、私達でまとめれるか不安で…三人が来てくれて頼もしいです」


「大丈夫、うちの探偵と用心棒は優秀、たとえ美術室で暴れても必ず押さえて見せるよ」


「美術室を破壊した私達がそれを言うのはまずいのでは…」


教室を覗けば、まだ生徒は疎ら、開催は16時半で現在は16時、まだ三十分もある。


普段の美術室の机を立てに長く、コの字型に並べ替えられていた。


大切な作品や備品、そして制作道具は第二教室に避難させているだとか。


私が席に着いたと同時、続々と様々な活動者が現れる。


野球部、サッカー部、吹奏楽部などメジャーなものから、マイナーな異界生物観察サークルやEスポーツ部など様々。


「マジで、活動者多すぎんだろ…」


「というか…なんで毎度メリーだけが座れて私達が後ろで立たなきゃいけないのよ」


言い忘れていたが、この活動者会議はリーダー含めて三人まで参加可能、しかし席が用意されているのはリーダーのみ、他二人は席の後ろで立って待機。


まるで主人に仕える従者のよう、この学園の校風通り。


「私が所長なんだもん!座っていいでしょ!!」


「探偵は私なんだから、私が座るべきでしょ」


「二人とも喧嘩すな」


私達が言い合いをしていたその瞬間、美術室の空気が急激に変わる。


「なんだ…」


練斗がいち早くそれに反応。


「皆の者、集まったか」


それはまるで教室に冷気を吹き込んだような寒気。


「相変わらず、面倒な集団ね」


風香ちゃんの消えそうな呟きが私の耳に届く。


そう、現れたのは…


「これで全員か、遅刻などありえんぞ」


現、生徒会会長、御影帝一。


そして後ろに続く複数の生徒も同じく生徒会役員。


全員の顔つき、身のこなし、そして纏う空気、全てが本物、これが瀬礼文学園の英才教育を受けてきた生え抜き達。


そして、その中でも一人、異質なオーラの人物が目に入る。


「練斗、あの感じ…」


「あぁ、間違いない、風雷の忍びだろ」


帝一の横を音もなく歩くのは、おそらく風雷一族の護衛、制服姿だが、はっきり言って異質、分かる人が見ればわかってしまう。


その中で美術部の生徒が一人、教室に入ってきた生徒会の生徒を抜け、会長に小声でなにかを伝えている。


「風香、分かるか?」


「私を舐めないで」


練斗が風香ちゃんに小声で声をかけていた。


風香ちゃんの目がどこか一点を凝視。


「風香ちゃん…」


そうしている間に、真ん中の机と椅子に生徒会メンバーが腰を掛ける。


「何かわかったか?」


「ええ、どうやら今回の会議、異界派は参加しないようね」


「よくわかったね」


風香ちゃんは読唇ができる、しかも訓練したわけではなく、気が付いた時にはできるようになっていたという。


これだから天才は…と思っていた時、再び教室の空気が変わる。


「すいません、遅れました」


「失礼します」


この厳粛な空気の中、まるで散歩の途中といわんばかりに教室に入ってきた人物。


「現れやがったか、このクソ野郎」


後ろの練斗から、全てを焼き尽く強烈な殺気が漏れ始める。


そう、現れた人物こそ。


「白武さん、遅いですよ」


「すいません、教師に呼び止められたもので」


私達を執拗に狙う、白武信也、今回は茶道部としての参加のようだ。


しかも横には見たこともない、再び異質な女子生徒が白武の横を歩く。


「ごきげんよう、皆様」


スカートの先を落ち上げながら軽くお辞儀する女子生徒、なんだろう…情報にない。


「風香ちゃん、白武の横の女の子、知ってる?」


「知らないわ、ここにきて、また新しいカードを切ってきた訳ね」


制服を着ていながら、髪飾りや装飾にどこかメイドを連想させる白と黒のフリフリがついている。


白武財閥、やはり層が厚い、いや、そもそも人間派の勢力自体も学園最大級。


やはり、この学園、一筋縄ではいかないみたいだね。


「これで全員のようだな、ではこれより会議を始めさせていただく」


時刻は開始時間丁度、白武、いや人間派の連中で最後だったようだ。


「ではこれより、瀬礼文学園活動者会議を始めさせていただきます、進行は美術部の加藤ミカが務めさせていただきます」


ミカちゃん、声が震えている…緊張するよね…


「では最初に、現生徒会長、御影帝一さん、お願いします」


「はい」


御影帝一が立ち上がった瞬間に、どこか息が詰まるような窒息感を感じる、それほどの威圧感。


「この学園は、この混沌とした日本を今後を背負う特別な”人間”を育てるための場所」


帝一の言葉にはどこか含みがあった、人間、そう、御影は人間派。


「だが、そんなこの聖域も、異界という未知なる力によって脅かされている」


帝一の声が、一段低くなった。


「そんな奴らを跋扈させない、この学園はこの日本の、そして地球に産まれた我々の土地、私、御影帝一はこの学園の会長として、今後もこの日本を変える人材を作る学園にしていきます、どうか、今後も学園の発展の為、力を合わせましょう」


帝一の話が終わったと同時、美術室は拍手の嵐。


「流石、生徒会長!」


「一生ついていきます!」


異界人はまるでこの世界を悪くしているような言い方、心に引っかかる。


「メリー、今は落ち着け」


練斗が後ろから優しく私をなだめてくれた。


異界の力で人間は発展した部分もある、だが、この日本を背負う上位の住人たちにその理論は通じない、分かっていたはずなのに。


「では、続きまして、野球部、お願いします」


ここからは様々な部活動の成績発表や全国大会の出場報告や資金援助、部室の改築など、様々な意見が飛び交った。


そして、問題はここから、次の発言者は茶道部、そう、白武信也だ。


そして、この白武の発言が、私達をとんでもない陰謀に巻き込んでいく…


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