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【探偵#11】路地裏の大乱戦

俺の名前は煉城練斗…路地裏で依頼人を守りながら戦う探偵の用心棒だ。


春風が通る夕方の路地裏、埃よりも血が舞う戦場と化している。


「俺に敗北の概念はない、二人まとめて地獄に送ってやる」


「殲滅、金花探偵事務所の戦場での規則」


ゴーレムと俺が睨む相手。


「煉液、組織最強は私がいただく」


「鬼人族の誇りにかけて、敗北は許されない!」


今は亡き対異界組織の元同僚、白い中華服っぽい戦闘服を身に纏うのはコードネーム《白虎》、俺と同じく体に強力な異界人を宿している。


もう一人は名前以外はよくわからん謎の黒ジャンの鬼人族、鬼山。


この二人の発言などなどを鑑みるにおそらく同じ組織の戦闘者なのだろう…



俺達金花探偵事務所はストーカに悩む、カップルの依頼者の篠原と三珠さんのストーカーの犯人捜しを進めていた。


犯人は風香とメリーによって見つけて事情聴取を行っていた時、三珠さんと金花探偵事務所がマークしている人物、白武財閥の御曹司白武信也と接触しなにやら揉めていたことを知る…


そしてメリーが俺にその連絡を入れた瞬間、信じられないほどのタイミングで暗殺者二人が襲撃。


俺一人で抑えるのは骨が折れたが、ゴーレムの到着で状況は五分。


こいつらを相手にしながら二人を逃がす、できるか?


だがな、用心棒はどんな理不尽な状況でも依頼主や探偵を守るのが存在意義なんだよ。


目の前の鬼山はどこかこの状況を楽しんでいる。


「煉液!この俺をもっと強くしてくれ!故郷にお前の首を土産に持ち帰る!」


「どこの世界に首持ち帰って喜ぶ家族がいるんだよ」


鬼人族は戦闘民族、いくら人間に近い異界人とはいえ価値観はまるで違う。


俺と鬼山がにらみ合う一方、ゴーレムと白虎がすでに臨戦態勢で向かい合っていた。


「風香様に連絡完了、ターゲット補足、任務を遂行しマス」


「古の鋼の戦士、私の虎の餌になれ」


ゴーレムが構えるのは巨大な戦斧(バトルアックス)、機械的な見た目の銀の鋼は電飾が入り近未来を彷彿とさせる。


そして戦いの火蓋はいきなり切って落とされる。


「そうか、ならば食い殺されろ」


地面のアスファルトは白虎の強烈な踏み込みで爆破されたように弾ける!


「速度、観測史上最高、迎撃シマス」


白虎の刃は速く、そして力強く振り下ろされる。


「そこを退け、ガラクタ」


「パワー出力を50%アップしマス」


ガッキーンっと鉄がぶつかる音が響く!ゴーレムは白虎の一撃を避けずに真正面から受け止めた!


二人はそのまま刃と刃をぶつける斬り合い!


「私は生まれながら虎としてこの世に立った、貴様風情に苦戦してる時間はない」


「戦闘スタイル、速度重視に変更しマス」


白虎はかつての組織ではトップクラス、簡単な相手じゃない、だがゴーレムも猛者だ、バトルアックスが縦横無尽に駆け巡る。


その戦いを横目で見ていたころ、鬼山が語りだす。


「雇ってくれる主人は時間がかかることを好まない、つまり!お前ら探偵どもを倒さないと先には進めない!」


鬼山が人差し指で俺を指しながら叫ぶ。


「お前らを倒して娘を攫う!これが一番!」


俺は握った刀に力を籠めながら思う、やっぱどこかでこいつらはまだ俺らを舐めてやがる。


「そうか、バカな頭で沢山考えとけよ!」


そう言いながら俺は飛び出す、全力で行くぜ。


「俺は勝つ!鬼人族の誇りにかけて!」


こいつがずっと言うこの言葉、まるで自分を奮い立たせる合言葉のようだ。


そしてそのまま鬼山が突っ込んできやがった、銃を警戒していた分これは予想外。


「夕暮れ!男同士の決闘!燃えてきた!」


「これから燃えることになるのはお前なんだよ」


鬼山と再び真正面からの斬り合い、奴の二本の刃は俺を狙い空間を走る。


だがな、俺と正面でやるなんて無理なんだよ。


「クソ!!どうしようもないな!!」


「あきらめて帰ればいいだけだ」


鬼山の体を煉獄刀がさらに赤く染める、才能から違うんだよ。


(ここだ…通る!)


次の瞬間!俺の斬撃が再び奴の胸を抜ける!


「来世は頭良く生まれるといいな」


「がはぁああ!」


もう鬼山の刀傷は数えきれないほど体に刻まれている、だが、この男は今まで見たことないほど分厚い。


「これくらいで倒れてたまるかぁ」


刀から伝わる感覚でわかる、切れたのは肉のみで骨には達してない。


これが鬼人族の真骨頂、厳しい異界を生き抜いた戦士の力。


今までの負傷が全て無かったかのように奴はナイフを振り上げる!


「おらぁああああ!」


「マジで分厚いな」


カウンター気味の刃、並みの戦闘者なら当たるのだろうが俺には通じない。


俺が鬼山から距離をとったその時、鬼山の空気がいきなり変わる。


「認めるしかねぇなぁ煉液、まともにやればお前には勝てない。だからよぉ」


手に取りだしたのは黒い光を宿す銃、狙いは俺じゃ…ない!


「さぁ用心棒!どれくらい守れるかな!!」


「正々堂々が鬼人族じゃないのかよ」


「戦場に卑怯なんて文字はなぁい!」


狙いは先ほどとは違い、完全に車の影に隠れる彼氏の篠原、いくら車の影とはいえ狙われたら危ない、何より依頼人が負傷すれば金花探偵事務所の名に傷がつく。


「俺の前で撃てるわけないだろ」


俺は最大出力で踏み込み距離を潰す、そんなことさせるかよ。


「人を守りながらの戦闘は難しいよなぁ!」


撃鉄が落ちる…その瞬間!煉獄刀は銃口に向けて放つ。


(どんな優秀な戦闘者も制約があれば読みやすい、煉液も例外じゃない!)


鬼山はさらに俺の刀の間合いを読みバックステップを踏む、攻撃のリーチを読む、それは戦闘者ならだれもがする行動。


だからこそこの技が光る!


爆発的に下がったはずの鬼山の銃を俺の刃が捉える!


「なんだ!?」


刀の距離を抜けたはず、なんて疑問符が顔に浮かぶ。


弾丸が通らなかった拳銃は持ち手から上がキレイに斬れて落ちた。


そしてその動揺した隙を俺は見逃さない、すでに刀を翻している。


「燕返しだ、これで死んでくれよ」


俺の刀が胸を目掛けて空を裂く、鬼山の体制は悪い。


「もう見えてるんだよ!!」


なんとすでに銃の持ち手を捨て二本のナイフを構えている、なんと俺の刃に追いつき始めたのだ。


俺の全力が乗った斬撃を二本のナイフで受け止める!


「吹き飛んでくれ」


「もう見えてるわ!」


気合は十分だがな…


俺の斬撃を止めれる奴なんてこの世界には存在しないんだよ!


衝撃的なパワーを受け止めきれずに鬼山が路地裏の壁まで吹き飛ぶ。


「これまずいな!」


壁に打ち付けられた鬼山、後ろは路地の壁だ、もう逃げ場はない。


「さぁ終わりにしようぜ」


壁までの距離を一気に詰める、これで決まりだ。


「瀬礼市の治安を乱す奴は生きる資格ないんだよ」


もうすでに間合い、俺のもはや見えない斬撃が鬼山を深々と切り裂く!今までで一番の手ごたえを感じた。


だが…その手ごたえはまたも、肉で刃が止まった感触。


「ぐふぁぁ!」


奴はもう数えきれないほどの攻撃を食らっている。


「スライムの能力で腕を伸ばす…シンプルな技だが…すごい…これがあの煉液!」


でも、それでも奴は倒れない。


「ここまでのダメージ、何年ぶりだぁ?俺の村にもここまでの奴はいなかった!」


奴の黒いジャケットはボロボロ、体は赤に染まり、切り傷は数えきれない。


「俺は誇り高き鬼人族、こんなもんで寝るほどやわじゃないんだよ」


頑丈…そんな表現では表せないほど、ボロボロの体でもナイフともう一つの銃を取り出して啖呵を吐く。


「さぁ、もう一回だ、お前を超えて俺は強くなる!」


そんな体でなお気迫が衰えない、俺に何発斬られてると思ってんだよ。


「鬼人族の驚異的な身体とそこに強烈な気合が乗ってやがる…」


俺のほうが強い、だが心のどこかで思ってしまう。


こいつが何か起こすと…弱者の大逆転が起こるのはいつだって諦めずに戦う心、チャンスを拾い上げる執念。


これが全てこいつに備わっている。


そんなことを思い、横目でゴーレムの戦いを確認する。



二体の怪物がにらみ合う、そこの空間は歪んでいるようだ。


「古代の兵器よ、最終警告だ。そこを退け、さもなくばお前は私の餌になる」


白虎はまさに体に宿す異界人同様のスピードスター、雷と風の能力を組み合わせて戦う厄介な戦闘者。


「ターゲット再補足、無力化しマス」


ゴーレムのゴツゴツとした鋼のボディとは裏腹に見かけによらず俊敏、いつの間にか距離を縮める。


そして、両者のナイフと斧が事故のようにぶつかり合う。


「パワー、スピード、ともに出力を70%アップ」


「死して虎は皮を残す、私の手柄となれ金花探偵事務所」


ゴーレムの斧の一撃の威力はとんでもない。


「破壊シマス」


白虎はスピードを生かして回避、避けた斧は隕石が落下したかのように地面を揺らす。


「ほう、威力はすさまじい…だが,甘い!」


白虎の風を纏った刃がゴーレムを削る、雷と風…やはり手数は白虎。


「装甲のダメージ30%確認、シールド展開しマス」


手数なら白虎だが、戦場においての引き出しはゴーレムのほうが上、能力の多彩さは現代兵器には勝てない。


ゴーレムがいきなり仕掛ける!


「エネルギー充填完了。ターゲット再補足。発射」


なんと展開したバリアの裏からロケットパンチが飛ぶ!


「これは素晴らしい…」


衝撃が路地に広がる…だがこれも素早く後ろに回避する白虎、速い、捉えるのは困難。


「この程度で私は死ねん、我々の悲願のために」


白虎、組織の時から熱く信念の男だった…今は何を背負ってんだ?



__________



私の名前は白虎、現在路地裏で任務を遂行する戦闘者だ。


…鬼山、やはり煉液相手は厳しいか。


私の目線の先にいる鬼山、タフネスと気合なら戦闘者の中でも一番、ただ今回は相手が悪い。


鬼山は異界の村を飛び出しこの組織にたどり着いた、村のために大金を用意しないといけないようだ。


鬼人族は異界の中でも辺境の森に暮らしてたという、だがその戦闘能力や体の頑丈さを目当てに異界の魔王が鬼人族を制圧。


そして長きにわたり奴隷として働かせられた暗い過去がある…


さらに人間世界とのゲートが開き人間が異界に侵攻、一時鬼人族は奴隷から多くは解放された。


ただしそれは雇い主が変わっただけ、次は人間に労働力として酷使される現実、人間のほうが賢いからだ。


だが周りは関係ない、私には引けない信念がある、たとえ強大な相手でも私は引かない。


私の前に立ちふさがるのは古代兵器を改造しさらに強力になった自立思考可能なゴーレム。


「ターゲットの体力観測時より40%ダウン、無力化の最適プランを実行しマス」


強い…噂には聞いていたが金花探偵事務所は油断ならない。


次の瞬間!ゴーレムの方から無数のロケット弾が発射!それは私と鬼山を狙う軌道。


「多機能だな、古代の兵器よ」


「ぐふぁぁ、まだまだ!」


鬼山は限界に近い、あれだけ斬られてしまえば耐えられる者なんて存在しない。


私が風の防御壁を展開、鬼山を陰に隠す。


「そんな鉄クズをいくら放とうと無意味だ」


風の防御壁に当たった弾が次々に爆破する。


煙の量が以上だ…何が狙いだ??


無数のロケット弾のどれかに何か混ぜたな、ここで私は思考を研ぎ澄ます。


「全て燃えろ!!」


すでに龍の翼を展開した煉液が飛翔、煉獄が私達に降り注ぐ。


「甘い、読めるぞ煉液」


私は風のガードとは反対の手ですでに雷撃を放つ。


雷と炎の激突、煙が一気に晴れるほどの衝撃、私の体を盛大に揺らす。


だが、これでは終わってくれないのが煉液だ。


「名付けてスライムレイン!」


追撃がもう来てる、次は無数のスライムの雨…これは当たるとまずい…


「空飛ぶなんて卑怯だぞ!!」


鬼山が空に向かって銃撃!


「この俺にそんなもん当たるかよ」


後手の弾は奴には当たらない…スライムの雨が来る!!


「来い、鬼山!!」


「白虎様!了解です!」


雷と風の渦の防御で防ぐ、これはまともに食らえば重症だ。


「こんな攻撃…なにが狙いだぁ!」


「鬼山、あれを見ろ、これがこの攻撃の恐ろしいところだ」


「え…なんだこれ…」


私と鬼山が防御の外を見た時、文字通り地獄絵図だった。


路地裏は煉獄が広がり火の海、さっき煉液が斬り飛ばした消火器はもうぐちゃぐちゃに溶けていた。


「これが…能力の真骨頂…」


スライムの雨の中に煉獄が混じる。それが一度付着してしまえばスライムの消化液と煉獄で跡形もなくなる。


私を舐めるなよ…これぐらいなんてことない。


「いい餌だぞ…だから力をもっと寄越せ!!」


次の刹那、私の風の刃が路地の炎をかき消す!白虎よ力を私に貸せ。


「隙あり!!」


鬼山がその隙に銃撃!


「まずいな!!」


煉液は地上に落ちるように回避!だが…私達は見逃していた…


「状況把握、攻撃タイミング最適!」


もうすでにゴーレムが風の刃を切り抜け斧を振りかぶっていた。


「白虎様!危ない!!」


鬼山のナイフでガード!しかしボロボロの鬼山で防げるほど甘くはない。


「やばいなぁぁぁぁあ!!」


「鬼山!」


私は吹き飛ばされた鬼山を抱える、衝撃を殺しきれない…私も吹き飛ぶ。


(これが煉液…組織を抜けて手に入れた力だというのか…)


だが、私の思いは、夢は、野望は、こんなものでは折れたりしない。


人間の真なる発展のために…


私と鬼山が衝撃で砕いた瓦礫の中から立ち上がる。


「鬼山、まだ、いけるか?」


私の問いに、奴は笑顔で答える。


「こんなもの怪我のうちにも入りません!!」


そして目の前にはすでに二人の猛者が立ち並んでいた。


「ここで事情を全部話して諦めればもう追わないぞ」


「尋問モードに移行しマス」


私達をもう制圧したかのような態度だな、癪に障る。


「まだ…終わってないぞ…私の虎はまだ食い足りないと言っている」


この路地裏の戦いはここから、誰も予想もしていなかった方向に事が進んでいってしまう。


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