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【探偵#10】激突!!鬼人族VS用心棒

俺の名前は煉城練斗、現在ピンチな金花探偵事務所の用心棒だ。


「これはヤベーかもな…」


そんな独り言を言ってる場合じゃない。


路地裏で複数人の暗殺者から依頼人二人を庇うシビアな展開。


風香の推理によって、三珠さんと篠原に嫌がらせをしていたスライム系の異界人生徒を発見し事件は解決したかに思えたが…


「やっぱり悪い予感は当たるんだなぁ」


まさか驚いたよ、三珠さんがあの白武財閥に狙われてるなんて。


「二人とも、そこに隠れて」


「はい!」


俺が二人を路地裏にある車の陰に誘導させ、暗殺者の前に立つ。


「お前ら、白武財閥の暗殺者だな…いきなり路地裏で襲うとか常識とかないわけ?」


俺の冗談のような会話に一瞬緊張の糸がもつれる。


「暗殺者になに常識を解いてんだよ、面白いなぁ」


敵は4人、そのうちのツッコミを飛ばす真ん中に立つ黒い革ジャンの大男だけ明らかに雰囲気が違う。


(多分奥の三人は何とかなる…問題はさっきだけ銃の腕前が段違いだった大男)


俺が思考を巡らせる中で大男は逆に話しかけてきやがる。


「用心棒さん、悪いことは言わない、女をおいて彼氏を背負って逃げたら危ないことは何もしない、雇い主からはなるべく戦闘はなくして安全に娘を回収しろって言われてるからな」


「おいおい、それはもうお前らが白武の手のものって暴露したようなもんだろ…」


舐めてんのかこいつら…それに…


次の瞬間、俺が放つは全てを焼き尽くすような殺気。


「お前ら、この金花探偵事務所がいるのに攻撃を仕掛ける、それがどれだけ無謀か衝撃的にわからせるだけだ」


煉獄刀を流れるような手つきで抜刀した俺に隙なんか一つもない。


「そうか…それは残念だ…じゃ!」


もうすでに大男は拳銃を構え照準を合わせていた、そのスピードは一流。


「そんなもん当たるほうがムズイわ」


引き金を引くよりも速く奴らの間合いを侵略する、まさに電光石火。


(この大男、よく見ると角がある…鬼人族か)


そして俺は全てを消し去る豪快な横一文字を放つ!もうとらえたぜ…


「これはヤバい奴か!!!」


鬼人族の大男は爆ぜるようなバックステップ!だが狙いは後ろの雑魚どもだよ…


次の瞬間!3人の黒服を着た男が煉獄刀により弾け飛ぶ!!


「「「ぐぇぇえぇ!」」」


3人に暗殺者が路地裏の壁に弾丸ライナーで衝突、聞き心地の悪い鈍い音が路地裏に木霊した。


(峰打ち…殺してないだと…)


バックステップを踏んでいた男はその刹那で状況を把握する。


「おいおい、俺らは命を狙ったのに優しすぎやーか?」


「お前は優しくしないけどな!」


再び間合いを侵略する、本気を出した俺はもはや弾丸なんだよ。


そして放つのは音速の斬撃!


「登場したのにすぐ退場、モブの運命だよ」


「ヤバいな!!」


だが男は再びバックステップで回避する。


「痛いがまだかすり傷にも入らない!!」


(視認してからじゃ間に合わない…これが噂の煉液…)


煉獄刀が胸をなぞり胸はそこそこ斬れている…だが


「今のは3%の力だが、次は100%で行くぞこの野郎」


(鬼人族、今のを避けるか、しかも捉えたはずなのに筋肉が分厚い)


今回の依頼、久々に骨のある奴がきたな。


俺と距離をとった男がいきなり名乗り始める。


「俺は鬼山(おにやま) 欄次郎(らんじろう)、誇り高い鬼人族だ」


「いきなり名乗るとか漫画に影響されすぎてんのか?」


だが、言葉とは裏腹に奴の目は本気だ。


「最終警告だ、そこの男を連れて女を置いて逃げろ。そうすれば戦わなくて済む」


この言葉…本気で俺の事を舐めてんだな…


俺は後ろの二人を見ながらも鬼山と名乗る男に問いを投げる。


「逆にお前が手を引け、そうすれば俺と戦わなくて済むぞ」


二人はとりあえず安全な位置にいる、指一本触れさせるかよ。


「まぁこうなることはなんとなくわかってたよ」


この鬼山という男は鬼人族、気合は十分だ。


(今回の目的はあくまで娘の回収、無理に命かけて煉液と戦闘する必要はない。学園と事務所からも近い、長引けば増援も来るが…)


「まぁ考えたが、どうやらあんたを倒さないと目的は果たせないようだな」


強烈な殺気を放つ鬼山が構えたのは鬼人族秘伝の鋼を使用した二本のロングナイフ、その構えは荒々しいオーラを放つもどこか洗礼されている。


「俺がいる時点でもうお前らの負けは確定してんだよ、とっ捕まえて全部ゲロってもらうぞ」


俺が煉獄刀を構えたその瞬間!


空間を歪めるほどの圧が裏路地でぶつかり合う。


「さぁ煉液、さっさと死んでくれ!!」


鬼山はすでに突っ込んでいた、その踏み込みの強さは類を見ない。


だが、俺相手にただ突っ込むのは創意工夫がねぇなぁ!


「俺、将来の夢はサッカー選手なんだわ」


奴に向けて地面の石をフルパワーで蹴り飛ばす!


「蹴っただけなのに速すぎだろ!」


石は奴の脇腹を抉る!だが鬼人族にとって傷のうちにも入らない。


そのまま鬼山のとんでもない横薙ぎ!


「スライムとドラゴンに分けてやるぜ!!」


「当たるか!!」


見える、だが想像より何倍も速い。


ナイフが俺の額を掠めながらも俺は刀を振りかぶる!


「ぶった斬られてくれや!」


「やばぁぁい!!でもみえぇぇる!」


片手の斬撃を鬼山は二本のナイフで受け止める!


「くぅぅぅ!」


(片手でこのパワー…規格外だ)


だが…そんなもんで…


「俺の煉獄刀が止まるか!!」


鬼山のナイフを吹き飛ばし強引に斬り落とす!


「イてぇててて!」


豪快に放たれた刀を鬼山の胸を赤く染める…


だが、もうすでにバックステップで距離をとられていた。


「これが噂の煉液!強すぎるなぁ!」


安心するのはまだ早いぜ黒ジャンの鬼さんよ、俺と戦えば安全地帯なんかねぇーんだよ!


「そうだろ?恨むなら敵の強さを考えれない依頼主にしてくれ」


俺が離れた距離を強引に潰す。


「さぁ決着と行こうか!!」


「いいねえ楽しくなってきた!!」


そこから二人の間に閃光のような刃の応酬!


煉獄刀が変幻自在の太刀筋で鬼山の体を削っていく、ダブルナイフでも追いつけるかよ!


「俺とまともにやって勝てると思ってんのか?」


「あきらめないのが男だろ!」


俺の斬撃をまともに食らってこの動き…タフすぎる…


足を止めての斬り合い、だが今回は全力だよ。


「引き出しを開けていくぞ」


煉獄刀の斬撃に拳と頭突きの攻撃を混ぜ込む、スライムの伸縮力を舐めんな。


「これ…どうすりゃいいんだよ!!」


おちゃらけた鬼山の顔が急激に曇る。


(この連撃…避けれるか…)


持ってるナイフは俺の斬撃を止めるのに精いっぱい、その隙に頭突き!


「青いネコ型ロボットを超える石頭なんだわ」


「夏休みの冒険に役立ちそうだな!!」


鬼山は額で受け止めるも怯み、そこに隙が生まれる。


そして頭突きで怯めば刀を防げない!


「もうあきらめろ」


「いだっぁい!!」


ナイフを抜けた刃が体を抉る、だが俺の攻撃は止まらない。


「どんなに頑丈な奴でも壊れるまで壊し続けるだけだ」


繋がるのは矢の如き拳。


「まじで避けれね!」


俺の拳は鋼鉄のような奴の腹筋を穿つ。


徐々に削れていく鬼山、俺のギアもまだまだ上がり続ける、このまま終わらせてやるよ。


だが、路地裏の空気の流れが急激に変わる。


なんだこの感じ…どこかで…


戦闘者としてのカンがアラームを鳴らし始める。


そして俺の視界の端に黒い何かが映る。


「煉液…ここまでだ」


そんな声が聞こえた時にはもう遅かった、まったく気配を感じない隠形。


暗い夕闇の路地裏から突然、風の刃が出現する!しかもそれは俺に向かって。


「くそったれ…これはやらかした!」


次の瞬間、その刃は俺の胸を盛大に切り裂く!


「はぁぁぁぁ!」


間一髪で半歩下がる、だがそれを見逃してくれるような相手じゃない、すでに鬼山の撃鉄は落ちていた。


「やっと隙ができたな!煉液!」


バン!っと乾いた音が響き渡る!もはやそれすら想定内なんだよ。


「当たるか!」


俺は転がるように弾丸を回避、俺は後ろを見ながら二人の安全を確認する。


(よし…後ろの二人は大丈夫か)


「不意打ちとか女々しいんだよ」


俺は立ち上がりながらいきなり現れた新手に軽口を飛ばす。


だが…その目に映った人物は俺にとって想定外の過ぎた。


「久しいな、煉液。今は探偵の用心棒とは腑抜けたな」


「白虎様、来るのが遅いです」


「鬼山、斬られすぎだ、気合を入れなおせ」


白虎…だと…おいおいいきなりヤバい奴がきたじゃねーかよ。


コードネーム《白虎》。


体に異界人、白虎の力を封印している強力な戦闘者。


「その白い中華服っぽい戦闘着、組織のころからなんも変わってないな」


「貴様が組織の事を語るな、この裏切り者」


裏切り…まぁ同じ組織でも思想は違う、俺の行動は未だに正しかったのかもわかっていない。


「俺はあの組織を抜けたからこそ、今の生活に出会えた。昔の自分の行動は間違っていない」


俺の過去はまだちゃんと風香やメリーにも話せていない。


でもあの二人なら、あの二人だからこそ今の俺がある。


「貴様の主張など、聞く価値もない」


思い出話に浸る暇もなく、白虎の手からいきなり雷の刃が飛んでくる!爆発した殺気を全身に満たしながら。


「避けるだけが戦闘じゃねーんだよ」


白虎の攻撃は視認してからじゃ遅い、しかも鬼山の銃撃も頭に入れないとなぁ


能力は文字通り疾風迅雷、しかも相手は二人。


一工夫必要だ、俺はスライムの防御壁作る、変幻自在、これがスライムの真骨頂。


「相変わらず柔と豪の戦闘、実に難解、だが私の中の虎は喜んでいる」


雷の刃がスライムの防御壁を爆ぜるように破壊していく!


が、これが狙いなんだよ。


「鬼山、鬼人族なら銃じゃなくて刃で語れよ」


俺の狙い通り、宙を舞う大量のスライムは目くらましとなって鬼山の射線を消す。


「スライム多すぎだろ!!!さすがに見えない!!」


この状況で二人の事狙われたら流石にきつい、弾けたスライムが路地裏の家や地面にへばりつく。


「誰かを守る戦闘は読みやすく、隙が増える」


スライムの目くらましを強引に突破してきたのは白虎、すでに至近距離に入っていた。


白虎の獲物は巨大な爪や牙のような鋭いマチェットナイフ。


「俺と正面でやる無謀さはお前が知っているだろ」


「組織の時と同じだと思えば死ぬのは貴様だ」


そして、まるでトラック事故のような重たい斬撃が飛び交う斬り合い!お互いの武器から衝撃が起こる!


「私も強くなっているのだよ!煉液!」


「そもそも俺に勝てるわけないんだよ!」


全ての攻撃が速い!これだけはあいつのほうが上、白虎が振り上げた一閃、俺は煉獄刀で受け止める!


パワーもあの頃より上がっているな、だが刃を滑らせて反撃!


「近距離戦は俺の土俵なんだよ!」


次の瞬間!まるでマシンガンのような斬撃と拳の連撃!こいつ相手だ、出し惜しみはしない!


「相変わらず化け物だ」


白虎は俺の連撃を外そうとするが、無謀だよ。


(煉獄龍のパワーとスライムの伸縮性、それらを合わせることで凄まじい爆発力と連続攻撃を可能にしてるのか…)


白虎からいきなり血飛沫が舞う!当然この攻撃をさばける奴なんていない。


だが、俺が相手にしてるのは一人じゃない。


「おいおい、俺の事も忘れないでくれよ!」


真横に統べるように現れる鬼山、しかも引き金に指がかかってる。


(避けてカウンター…いや、やべぇ)


俺を狙う射線上に物陰に隠れている篠原と三珠さんがいる!


避ければ車を超え当たるかもしれない、計算してやってるとしたら戦場慣れしてやがるな。


「悪いけど、ピンチって概念はないんだわ!」


白虎に向けて放った右手の一閃!


「単純な攻撃が私を超えると思うな」


斬撃は素早い防御によって弾かれるが、狙いはこれだよ。


「環境を利用するのが一流なんだよ」


弾かれ振りぬかれた刃はそのまま道端の消火器を綺麗に切断する、そうすりゃ…


ブシャー!!


狙い通り噴出した白い煙が鬼山の視界を再び乱す、これで射線は潰したぜ。


「なんだと!!」


鬼山と白虎が一瞬動きを止める、予想外にはどんな戦闘者でも対応しずらいものなんだよ。


(いまだ…ここしかない!)


俺は全身の力を左手に集める、今回はうまく扱って見せるぜこのクソドラゴンよ。


「下がれ鬼山!!」


白虎が感づき叫ぶがもう遅いぜ、俺は煉獄を纏う手をかざす。


「吹き飛べ、卑怯者ども」


そしてこの古びた路地裏が地獄のように紅蓮色に染まる!!


俺の手から放たれた煉獄は二人を飲み込み吹き飛ばす、全てを燃やす煉獄の炎に対抗手段はない。


「ぐぁあああ!」


「耐える耐える耐える」


景色を赤く染めた煉獄が晴れた…が、俺の目は見たくもない景色が映ってしまう。


「白虎、お前いつから器用なことができるようになったわけ?」


「人は成長するのだよ煉液、強さに胡坐をかくようなお前とは違う」


俺の煉獄は奴の雷と風の防御壁によって耐えられてしまった。


「白虎の力、スピード以外に活かせる部分あるんだ」


「貴様こそ、相変わらず煉獄龍の力を完璧には使いこなせない、近距離戦闘とスライムで誤魔化しているな」


お互いの手の内がわかるのはやりにくいな、なんて考えていた時だった。


俺にとって最高の展開が急に訪れる。


「ターゲット補足、落下地点確認」


聞こえ慣れた機械音とともに空から鋼鉄が降ってくる。


「練斗様の安全を確認、バトルモードに移行しマス」


地響きを起こしながら豪快に着地してきたのは…


我らが金花探偵事務所のゴーレム!


戦闘においてゴーレムの右に出る奴はいない、さらに乱戦であるなら…


「白虎、そしてよくわからん鬼!これでイーブンだな」


ゴーレムが来てくれたなら状況はかなり変わるぜ、より二人を守りやすい。


「いいねぇ!しばらくターゲットを泳がせた甲斐がある」


「私の中の”白虎”は強者を食らって強くなる」


どうやら鬼山も白虎も撤退は考えていないようだ、白武財閥やストーカー事件の事や今は亡き組織の事など聞きたいことは山のようにあるが。


「金花探偵事務所に敗北という概念は存在していないんだよ」


「捕縛、情報収集の依頼を風香様より確認、優先順位の入れ替えを行いマス」


この四人の戦闘者がにらみ合う路地裏はまさに異界そのものだ。


________



そんな時、物陰からこの戦いを篠原と三珠さんは息が詰まりそうな圧に負けながらも目に焼き尽くしていた。


「なんだ…これ…これが異界人の戦い…」


篠原はとんでもない戦いにビビッているが、その横にいた三珠さんは違った。


(私のせいで…でも…)


路地裏の隅っこの車の影、そこに二人は身を寄せていた。


何度か現場を離れようかと考えてはいたが、陰から飛び出て俺からのマークが外れれば死ぬ、それを本能で理解していたのだ。


「優斗、私のせいでごめん…でも私が何とかするから!」


そう話す三珠さんの手には意味ありげに握られたスマホ。


「奈津…?」


この時の俺は知らなかった、三珠さんの過去によってこの戦闘をさらにめちゃくちゃになるなんて…

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