表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

蒸し暑い密室

作者: ヒーラギ

私はエレベーターが苦手だ。逃げ場がなく、落ちたりしてもどうしようもない。そしてなにより―。


夏の日だった。私は一人で近くの人工河川で魚をとっていた。人工河川には、地点地点に少し幅が広がった、水を分岐させる四角い場所がある。そこは魚がたまることで知られる場所であった。

その日は特別よくとれた。よくとれるので、時間を忘れて魚を追った。気づけば18時を回っており、あたりは少し、暗くなっていた。


早く帰ろう。そう思って顔をあげると、目の前の建物に目が行った。壁にはつるが伸び、照明もところどころしかついていない、私の友人の住むアパートだった。

普段は取った魚に夢中で一目散に帰っていたのだが、この日は多すぎたためすべて逃がしていたのだ。


「そうだ、急に行って驚かせてやろう」


そんな考えがふと浮かんだ。かごやあみをその場に置き、アパートへと走る。


建物に入ると、エレベーターホールがあった。来るのは初めてだったが、住んでいる部屋は知っていた。ボタンを押し、エレベーターを待つ。

上がってきたエレベーターのドアが開くと、異様に蒸し暑かった。まるで満員電車に乗っているような、押し込められた蒸し暑さだった。私がとっさに足を引っ込めると、他の階から呼び出しがあったのか、ドアは閉まり、また動き出した。私はなんだかどうでもよくなってしまい、おいていた道具をもって家に帰ったのだった。


次の日、学校で件の友人と会話する。


私「おまえんちのエレベーター、狭いうえに暑すぎ」

友「あー、そうだよな。家族が多かったりしたら全員ではのれないわ」

私「しばらく地下にあると湿気がこもってさらに暑くなるのかね」

友「え?」

私「湿気もすごいだろ。あのエレベーター」

友「うちのアパートに地下はないぞ。」




あの日、確かに「上ってきた」のだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ