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4話ー使者と死者

レイラは頼み込んでいた。

極東から来た優秀な書記官に陳情をしたのである。

ソウジ・オキモリにミーシャがキーラに不当なパワハラをするのをやめるように、そう頼み込んだ。

状況を知っていた、ソウジ・オキモリは「たぶん、私怨から来るものだし、難しいと思うが…、やれるだけやってみる。ミーシャが異動になる可能性もあるけど、それでも良いかな?」と言う。

レイラは「えぇ、キーラへの不当な扱いがなくなるのでしたら、ミーシャが異動になっても構いません」と答えた。


今日は久々にレイラさんと一緒に遺体を回収することになっていた。

すると、いつも通りにヨハンが現れた。

私は気になっていた事を聞いてみた。

「この前、一番強い魔女を送り込んだって言ってましたが、その魔女って赤髪の若い魔女でしたか?」と言う。

ヨハンは答える「そんな見た目だった気がする。俺も名前は覚えていねぇ」

私は「あの後を付けてきていた魔女。闇の会の手先だったんですね…」と言い、私は遺体の回収作業に戻った。

レイラさんと一緒だったおかげで、効率よく回収が出来たので、仕事がかなり早く終わった。

私たちは手を洗い、少し離れた所にある喫茶店へと入った。

すると、ヨハンが偶然にも同じ喫茶店に入ってきた。

レイラはヨハンに言う。

「そういえば昨日、強い魔女がいたけれど…、あの子ってどういう教育を受けたの?」と聞く。

ヨハンは「まともな教育は受けていない。だから、最前線で防御魔法を展開せず、攻撃魔法ばかりを打ち続けたのだと思う」と答える。

続けてヨハンは「闇の会はそういう組織だ。俺も抜けて正解だった」と言い、店員にいつものコーヒーを頼んでいた。

そして、ヨハンは言う。「そういえば最近ミーシャを見ないが、どうしているんだ?」

レイラは「私たちがゴタゴタしている間に、私たちよりもっと上の上司に取り入って、今じゃ私より上の室長ポジションよ…」と言い溜め息を吐いた。

ヨハンは「ミーシャは昔から、そういうクセというか。そういう素質があったからなぁ…」と言い、頭を抱えていた。

レイラは「あの子、昔からそうだったのね…」と言い、近くに来たウエイトレスに紅茶とコーヒーを頼んだ。

レイラは紅茶派、私がコーヒー派なので、そうやって私の分も含めて頼んでくれたのだと思う。

ヨハンはコーヒーを飲み、私はコーヒー、レイラは紅茶を飲み、そして、軽食も頼んで、少し食べては落ち着いた。

私たちはお金を払って各々帰る道へと進んだ。



ミーシャとソウジは職場近くのレストランで会食をしていた。

ソウジは言う。「具体的には言えないのだが…、キーラの扱いがひどいんじゃないか?って話が複数の局員から出ているんだ。何があったんだね」

ミーシャはいつもの甘ったるい声で「そんなことはないんだけどなー。ソウジ・オキモリさんの勘違いじゃないかなー?」と言う。

ソウジは「一人じゃない、これは複数人から上がっている証言なんだ。何があった」と問い詰めるように言う。

ミーシャは「しかたないわね…」と声のトーンを変えて語り出した。

「キーラが変な本を出版したのは知っている?」

ソウジは「私のいた島国でも話題にはなりましたので、存じております」と答える。

ミーシャは続けて「あんな本を書いたら、双方の国から追われる立場になるのが、分かる筈なのにね?全くあの子は、そこまで考えが及ばないのか…。それで私は、あの子に対して呆れちゃったの。理由はただそれだけ。レイラもあの子を匿うなんて、本当にバカでお人好しよね…、でも、レイラのそういう所は憎めないわ」と言って、ワインを一口飲む。

ソウジは手帳に聞いた事をメモする。

そして、鞄に手帳をしまう。

ソウジは言う。「私は仕事があるので、これで失礼します」

ミーシャは言う。「夜はこれからなのに?もう帰っちゃうの?」

ソウジは「お金はちゃんと二人分払ってあるので、大丈夫ですよ?」と言い鞄を持って立ち去った。

ミーシャは溜め息を吐き「何も帰らなくても良いじゃない…。せっかく情報を渡したのに、損したわ…」と言った。

ソウジは一直線に家に戻って、手帳を開き仕事の続きをする。

メモをした聞いたことに自分の私見を書き込み、どうすれば、解決できるかの案をいくつか書いていった。

手っ取り早いのは更迭だがミーシャは実績がある上に、上司達に取り入って出世した経緯もあり、簡単ではない。

二番手の態度をあらためさせるも、あの反応を見るにキーラを心底嫌っている。

だから、難しいだろう…。

何とか、ならないモノか…。


次の日、室長室にキーラとレイラで入る。

ミーシャは「今日は二人でC地区の遺体の回収を行って貰いたいわ」と言い、表面上はキーラへの態度をあらためたようだった。

いつものような、甘ったるさは無かったが…。


C地区に着いた。

レイラは「今日はそこまで激戦地では無さそうね…」と言い、遺体があまり落ちていないことに安心をしつつ、回収を始めた。


しかし予想外は起きるもので突然、砲撃音が響く。

レイラは防御魔法陣を張る。

私も防御魔法陣を張って無事だった。

煙が引いた先にヨハンがいた。

ヨハンは言う。「遂に来てしまった…。この日が…」

私は「どういうこと?」とヨハンに尋ねる。

ヨハンは答えない。

そして、ヨハンは言う。「俺は未来が見えるが、キーラは今日、殉職する。俺も守ろうと努力はするが、守り切れなくて…。死ぬ…」

私は言う。「でも、未来でしょ?きっと変わるわ…」

ヨハンは何も言わない。

「未来は確かに変わった…、お互い憎悪のまま戦ってキーラを俺が殺す未来は無くなった…。でも、これだけは変えられなかった…」とヨハンは泣いていた。


私はそんなことを言われたものだから、遺体の回収作業はするが全く捗らない。

時折、遠くから砲撃の音が聞こえる。

レイラも手伝ってくれて、何とか勤務時間内に回収作業を終えた。

それで安心しきった時だった。

近くで爆発が起きた。

その所為でレイラと離ればなれになってしまう。

隣にはヨハンがいる。

ヨハンは防御魔法陣を張って私を守る。

しかし、それにも限界はある。

遂に割れて、ヨハンは致命傷を負う。

私はヨハンに「大丈夫!!!!」と言う。

それに気付いたレイラも駆けつけた。

ヨハンは「キーラ…。君だけは幸せになってくれ…」と言い息絶えてしまった。

私はヨハンの遺体の荼毘に付して、その上で墓碑を建てることにした。


私は後々、ヨハンは完全に足を洗って偉大な人になっていたことを知る事になる。


私はヨハンから託されたいくつかの手紙と詩を、ヨハンがよく行ってた孤児院にヨハンの遺言書通りに託した。

私はそこの施設長と面会することになった。

施設長は言う。「ヨハンさんはよく、「キーラさんと釣り合う、ふさわしい人間になるんだ」だから、詞や歌で稼いだお金は私腹を肥やすより、こういう孤児院に寄付してくださっていました…」

私はヨハンの知らなかった一面を知った。

私はヨハン自体が恵まれない幼少期を過ごした故に、そういう活動を思いついたのだろうとも思ったが、本人無き今、真相は分からないままだ。


私は前回の出版騒ぎの際に得たお金があり、それには手を付けていなかったので、私はそれを全額寄付することにした。


それから、ミーシャと私は自然と和解して、ミーシャが私に冷たくすることも無くなった。


私はヨハンのことを想って、パートナーを持つことは無かった。

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