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3話ー「戦争に正義は無い」

私とミーシャは戦場跡で遺体の回収をしていた。

すると、ヨハンが現れる。

ヨハンはミーシャには目もくれずに、私の元に来て「この歌、知ってる?」と言い歌う。

私はびっくりした。

自分が生まれた地方の民謡であったからだ。

よく死別した父が歌っていた。

私は思わず泣いていた。

ヨハンは「ごめん…。俺が泣かしたんだよな…」と言う。

私は「彼氏面やめて」と言う。

私は言う。

「もう一度、歌って」

ヨハンは言う。「今度は泣かないでくれよ…」

そして、私の生まれた地方の民謡を歌う。

歌詞もしっかり、覚えてきたようだった。

私は「ヨハンは歌の才能があるよ?だから、装束なんか剥がさないで吟遊詩人にでもなったら?」と言う。

ヨハンは「そうかな…。俺の生まれ故郷では俺は歌すら聴いて貰えない存在だったから、上手いも下手も分からない」と言う。

私は「生まれ故郷の民謡。難しすぎて自分でも歌えないから…、歌えるだけすごいと思うよ」とヨハンを励ました。

しばらくして、ミーシャが来た。

何故か、不服そうな顔をして。

ミーシャは言う。「ヨハン~。なんで私には目もくれずに、そっちに行くの?」

ヨハンは「げ、また今度」と言い、何処かへと消えた。

おそらく、また転移魔法だろう。


本部からはしばらく装束剥がしの被害が収まっているから、軍隊の後方支援任務に就くように言われた。


私はそこで衝撃的な出会いをすることになる。



後方支援任務のある戦闘地域へと来た。

今回はミーシャ先輩以外にもレイラさんもいた。

人数が多い方が良いという判断だろう。

私はそこで見覚えのある顔が居た。

最初は誰だか思い出せなかったが、特徴的な訛りがあり出身の地域はおおよそ、私の地域の隣辺りだろう。

そこでピンと来た。

学生時代に近隣外国語を教えてくれていた先生だ。と。

私は休憩時間になったら、交代の兵士に言う。

「ケインさんに私の元に来るように言ってください」

兵士はいぶかしみながらも「分かった」と言い私の前から立ち去った。

しばらくして、ケイン先生は私の前に現れた。

ケインは言う。

「なんのようだ。僕だって貴重な休憩時間を割いてここに来ている。用件はなんだ」

昔には無かったぶっきらぼうな感じでケイン先生は言う。

私は「昔、近隣外国語をあなたから教わっていたキーラです。覚えて居ませんか?」

すると、途端にケイン先生の目に涙が浮かぶ。

「覚えてくれていたんだな…」

私はハンカチを差し出して、「忘れはしませんよ。先生は教え子のことを忘れても、生徒は覚えているものですよ」と言う。

ケイン先生は私のハンカチーフを見て、「汚してしまってすまない…。洗濯をして返すがそれで良いか?」と言う。

私は「それはあなたに差し上げます。持っていてください。再会の記念として差し上げますので…」と言う。

ケイン先生は「ありがとう。じゃあ、そういうことで貰っていくね」と言い、奥の休憩室へと行った。

ミーシャ先輩は言う。「なんで、被占領地域の兵士と話していたの?」

私は「ケイン先生は昔の恩師でね?近隣外国語を教えてくれていたの。だから、懐かしくなっちゃって…」と答えた。


24時間体制なので、一日3回の交代があるが、被占領地域の兵士は一日二回、塹壕の中へと行く。

私は待遇の格差に憤ったが、そんなこと言える立場でも無く…。

塹壕へ行くケイン先生を見送った。


すると、後方支援任務してる場所からも聞こえるくらい大きな爆発音が轟いた。

私はケイン先生の事が心配になる。

しかし、退避命令が出てしまい。

現場へと行けない無かった。

私たちはあくまで後方支援任務なのだ…。

その後、両軍がこの塹壕を放棄することが決まった。

双方共に損傷がひどいからだ。

私達は遺体の回収へと向かった。

双方共に塹壕に大きな穴があいて、多くの兵士の亡骸があった。

すこし、離れたところにはケイン先生の亡骸もあった。

爆心地から離れたところにあったから、おそらくすぐに救助をすれば助かった命だろう。

そう思うと、私はこの戦争にやるせなさを感じた。

正義はどちらにも無い。

ただただ人が死んでいくだけの戦争を止めなくては…。

かつて親しかったケイン先生が死んでからは、よりそう思うようになった。

あの時、退避命令に逆らってケイン先生だけでも助けていれば。

そう思えば思うほど、私は悔しくて悔しくてたまらなかった。


そんな時にも、ヨハンは私の目の前に現れた。

ヨハンは言う。「また何かあったのか?」

私は「塹壕の中で恩師の先生が死んでいたのよ!!!!」とヨハンに絶叫する。

そして、私は「この誰も得をしない戦争は止めなくてはならないわ!!!!」と言う。

ヨハンは「そんな簡単に戦争が止まっていれば、こんな10年も戦争は続いていない。もう少し現実を見た方が良い」と言う。

私は「そんなの分かっているわ。でも恩師が死んで私は機嫌が悪いの。ヨハン。魔法のサンドバッグになってくれないかしら?」と言う。

ヨハンは「嫌だね?俺がサンドバッグになったところで戦争は終わらないからな」と言う。

私はヨハンにナイフを飛ばす。

ヨハンはナイフを華麗に避けて、「あぶないな嬢ちゃん」と言い、軽く私に魔法を放った。

私はそれを避けて、魔法でつくった氷柱をヨハンに飛ばす。

ヨハンはそれも華麗に避ける。

私とヨハンは魔力が切れるまで戦い、そして、お互いに息を切らしていた。


その後、私は仕事をそっちのけでヨハンと戦ったということで、レイラにこっぴどく叱られたのであった。


私はこの馬鹿げた戦争を止めるために、放棄地に残された遺体を回収しながら、ノートに戦争の悲惨さを纏め続けた。

出版が許されないとしても、私は戦争の悲惨さを纏め続ける。

私は遺体を回収する際に、こっそりと遺体の身分証を見る。

そこから、軍歴や生い立ちなどを探ったのであった。


私はその集大成を自費で出版することにした。

出版社の多くに断られて、見かねた印刷所が自費で費用を負担するなら出してやるとのことだった。

私は私財をなげ売って、それでも良いから。

この戦争に正義は無いと伝えたかった。




タイトルは「戦争に正義は無い」と決めた。


そして、「戦争に正義は無い」は出版直後から反響が大きく、国は発禁処分を下そうとするが、印刷所は反響の大きさから増刷を決める。

その事から、キーラは双方の国から指名手配をされてしまう。

これにミーシャは私の行動に呆れて連絡をしなくなり、レイラは「確かに、戦争に正義は無い」と理解を示しつつも「でも、ちょっとやり過ぎ」と私を諫めながらも、匿ってくれることになった。

増刷を決めた印刷所は契約通り、増刷が決まったのでお金をこっそりと持って来てくれた。


国はこの本を回収しようと、躍起になればなるほど。

多くの「戦争に正義は無い」が出回るようになった。

そして、二つの超大国ガリアとライアルは。

「戦争に正義は無い」の著作権を認めない。と言うようになった。

そして、私の収入を完全に絶とうとしてきた。

その上で、印刷所への干渉を強め国有化。

暴挙とも言える圧政を敷く決断をした。


私の主義主張は双方の国から異端と言われて、魔法で異端と言われるのでは無く主義主張で言われるなんて。

あの頃は予想すらしていなかった。





この頃、ヨハンがいた組織ではこのどさくさに紛れて国に取り入って、組織を合法にしようと動き出す。

国はやりたがらない汚れ仕事を積極的にやるとアピールして、地方政府は闇の会を治安維持部隊として重宝するようになった。

そうなると中央政府も闇の会を黙認するしか無くなった。

中央政府の中でも闇の会を積極利用しようとする派閥はキーラの暗殺計画を闇の会へとぶち上げる。

その結果、闇の会は初の中央政府からの依頼として、張り切って一番強い魔女を私の暗殺の為へと駆り出した。







ある日、私はレイラさんから頼まれたモノを買いに買い物に出掛けていた。

頼まれたモノを買い終えて、私は戻る途中だった。

後ろに気配を感じる。

振り向くと、後ろに見たことの無い魔女が立っていた。

私は杖を取りだして言う。

「ずっと付けているみたいですけど、何か用ですか?」

その魔女は一言「死ね」と言い魔法を放ってきた。

私はそれを避けて、上空へと飛び上がり相手の魔女にナイフをいくつも飛ばす。

私に攻撃を仕掛けてきた魔女はナイフが刺さって死んでいた。

私はそそくさと、レイラさんが匿ってくれているところへと戻った。


しかし、反戦を語ったところで軍事侵攻が止むわけではなく。

再び、再軍備に舵を切った両国は泥沼の戦闘を再開した。

その結果、闇の会は再び非合法化し、私は何故か再び装束管理局に呼ばれて、闇の会が再び手を染めた装束剥がしを取り締まることになった。

しかし、あの頃とは大きく状況が変わった。

ミーシャは室長にまで上り詰めて、私に露骨に冷たく当たるようになった。

レイラは上長のままだった。

ミーシャは私たちより更に上の人たちに上手く取り入っていたのだった。


ミーシャは冷たい声で「キーラは戦闘の激しいB地区の死体を回収してきて!速く!!」と言い。

レイラには前からの甘ったるい声で「レイラは戦闘が終わったA地区の死体を回収してきてね。戦闘があらかた終わったと言えども、最前線に近いからレイラ気をつけてね」と言う。

明らかに対応に差があった。

綺麗事だけで、戦争も戦闘も止まらないのは。

今回のことで、身をもって私は知った。

そんなことを考えながら、私は残された遺体を回収していた。

すると、近くに砲弾が着弾する気配を感じる。

私はとっさに防御魔法陣をはった。

私は無事だった。

聞き慣れた声が、それも歌声が聞こえてきた。

ヨハンの声だった。

ヨハンは再び出会うなんて思っていなかったのか、かなり驚いて歌うのをやめて「え!???」と言う。

そして、ヨハンは言う。

「逢いたかったのに、1年何してたんだ…」と言う。

私は「レイラさんに匿って貰っていたの。今はこうやって公務に復帰することになったけれども、変な本を書いた所為で、双方の国から追われて大変だったわ…」と素直に話した。

ヨハンは「あぁ、知ってるさ。俺が元いた組織なんだけど、国に取り入ろうとして、あんたの所に一番強い魔女を刺客に送ってるからな。ダッセーよな。返り討ちに遭ってんだから」と笑いながらヨハンは言った。

ヨハンは「強い魔女が、この辺で装束を剥がしている。今のうちに逃げるか増援を呼びなよ?」と言う。

私はムキになって「私だって、魔女よ?魔女登用試験は成績トップだったのよ?」と言う。

すると、ヨハンは「じゃあ、一人で良いか」と笑い、その強い魔女とやらが居る地点の座標を教えてくれた。


そして、私は座標へと飛ぶ。

その魔女へと無警告で杖から攻撃魔法を放つ。

その魔女は華麗に避けた上で「まずは自己紹介をしてから、攻撃魔法はぶっ放すもんだと、学校で習わなかった?」と言う。

私は「こんな無法者に名前を言いたくは、ないですわ」と言う。

その魔女は「私はメイリ。遺体を回収したいなら、この私を倒してからにしなさい!!!」と言い、強い魔法をぶっ放してきた。

私は強い魔法には強い魔法で応酬する。

メイリは強い魔法を何度もぶっ放すが、疲れる様子を見せない。

私はこれが若さか…。思いつつも応戦を続ける。


しかし、年齢差か私は徐々に守勢に回り出す。


あまりの攻勢に攻撃を防ぎきれず、死を覚悟したその時。

A地区にいたはずのレイラさんが、私とメイリの間に割って入り防御魔法陣を張った。

私は「レイラさん!!!何故ここに…」と驚いて言う。

レイラは「そんなことはいいから、一緒にこいつを叩きのめすぞ?」と言う。

メイリは舌打ちをするが、「いいわ、二人片付ける方が燃えますわ、全力を出すわ」と言い、さらに強い攻撃魔法をバンバンぶっ放しだした。

レイラはただただ防御魔法陣で防ぐだけだった。

私は言う。「攻撃しないの?」

レイラは「策はある」と答えるだけだった。


しばらくすると、攻撃が止んで。

バラバラになったメイリの亡骸があった。

レイラは言う。「B地区は最前線に近い、防御魔法がベターだ。あそこまで派手に攻撃魔法を使うと、砲兵にバレて砲撃の的にされる。それを待っただけだ。」

私は「助けてくれてありがとうございます…」と言う。

レイラは「同僚を守る。当然の責務を果たしただけだ」と言って、ふたり残った遺体を回収しつつ、撤退作業を進めていった。

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