エリスとの接近
レインがエルフの集落での活動を続ける中で、エリスとの交流が増えていった。彼女は戦士としての鋭さを保ちながらも、時折見せる穏やかな表情や、言葉の端々に込められた優しさが、レインの心に少しずつ影響を与えていった。
ある日の夜、エルフの集落は静まり返っていた。エルフたちは日々の仕事を終え、それぞれの家で休息を取っていた。レインもまた、その一部のように見えていたが、実際にはいつでも動けるよう影に潜んで周囲を警戒していた。
その時、エリスが静かに現れた。彼女の白い肌は月光に照らされ、まるで幻想の中から現れたように見えた。長い銀髪は風にそよぎ、彼女の美しさを一層際立たせていた。
「レイン…少し、話をしませんか?」
エリスはいつもの冷静な声で問いかけたが、その瞳にはどこか柔らかさが感じられた。レインは彼女の申し出に驚きつつも、ゆっくりと姿を現し、彼女の横に立った。
「もちろんです、エリスさん。何か、私に聞きたいことがあるんですか?」
レインが尋ねると、エリスは一瞬だけ視線を落とし、それからゆっくりと彼を見上げた。彼女の瞳には、これまでの鋭さとは違う、どこか思慮深い感情が宿っていた。
「レイン、あなたは何故ここまでして私たちを助けようとするのですか?シャドウフォークとしての過去が、私たちエルフにとって何を意味するのか、あなたも理解しているはずです。それでも、なぜ…」
エリスの声には、迷いと好奇心が入り混じっていた。彼女はレインが何を考えているのか、真剣に知りたがっているようだった。
「私は、過去の出来事を変えることはできません。でも、未来を変えることはできると信じています。エルフの皆さんと共に生き、戦い、そして新しい絆を築きたいんです。シャドウフォークとしてではなく、レインとして。」
レインの言葉は、彼自身の心からの真実だった。彼はエルフたちとの絆を築くことで、自分自身の過去を乗り越え、新たな未来を切り開こうとしていた。
エリスはその言葉を聞いてしばらく沈黙していたが、やがて小さく頷いた。
「あなたの気持ちは、確かに伝わりました。私たちエルフにとっても、過去の傷は深いですが…あなたが本当に未来を変えたいと願っているのなら、私もその思いに応えたいと思います。」
エリスの言葉は、これまでの彼女の態度とは違い、温かみを感じさせるものだった。彼女の目には、レインへの警戒心が薄れ、代わりに信頼の光が少しずつ宿り始めていた。
その晩、二人は月光の下で静かに語り合った。エリスの柔らかな声と、彼女が持つ自然への深い理解、そして過去の苦しみが、レインにとって新たな視点を与えた。
エリスもまた、レインの真摯な態度に少しずつ惹かれていった。彼女は、自分が抱えてきたシャドウフォークへの不信感が、レイン個人には当てはまらないと感じ始めていたのだ。そして、彼が持つ影の力がエルフたちを守るために使われていることを知り、彼に対する見方が変わりつつあった。
その後も、レインはエリスのそばでエルフたちのために尽力し続けた。エリスはレインを信頼し始め、彼との時間を共に過ごす機会が増えていった。彼女は、レインがただのシャドウフォークではないことを確信し、彼の行動や言葉に少しずつ心を開いていった。
ある日、エリスがレインに言った言葉が、彼の心に深く残った。
「レイン、あなたと共にいると、私は未来に希望を感じます。あなたがシャドウフォークであることを忘れさせるほど、あなた自身が特別だからです。」
その言葉には、エリスがレインに対して抱く特別な感情が込められていた。彼女はまだ完全には認めていなかったが、レインの存在が彼女にとって大きな意味を持ち始めていたのは明らかだった。
レインもまた、エリスとの関係が特別なものへと変わりつつあることを感じていた。しかし、彼はエルフたちの信頼を完全に得るまでは、彼女への想いを表に出すことはしなかった。彼の優先事項は、エルフたちとの信頼関係を築き上げることであり、個人的な感情はその後で考えるべきだと自分に言い聞かせていた。
エリスもまた、レインに対する感情を抑えつつも、彼と共に歩む未来を少しずつ夢見ていた。彼女の心は次第にレインに引かれ、その心の中で彼の存在が大きくなっていった。




