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遅すぎた帰還

シャドウフォークの集落に足を踏み入れたレインの目に飛び込んできたのは、無残に破壊された家々の姿だった。かつての平穏な雰囲気はどこにもなく、破壊された屋根、倒れた木々、そして地面に散らばる残骸の数々が、ここで何が起こったのかを雄弁に物語っていた。


「遅かったのか…」


レインは焦燥感に襲われ、思わず声を漏らした。自分たちが急いだにもかかわらず、間に合わなかったのだろうか。胸の中に広がる絶望感が押し寄せてくる。彼の心臓は高鳴り、呼吸は浅く、冷たい汗が額を伝った。


「まずは、リードのところに行こう」


エリスが冷静な声で促したが、彼女の表情には心配が浮かんでいる。カリンも無言で頷き、彼女の強い手がレインの肩に触れた。その温かさは、ほんの一瞬だけでも彼の動揺した心を支えてくれる。


レインたちは廃墟となった道を急ぎ、集落の中心部に向かって足を進めた。シャドウフォークの長であるリードが住む家は、集落の中でも一際大きく、彼らにとっての頼りであり象徴だった。今は、その場所こそが希望の残された唯一の場所だと思いたかった。


リードの家へ急ぐ

道すがら、何人かのシャドウフォークの民が避難所代わりにしている洞窟の入り口や、木の陰で震えている姿が目に入った。人々の顔はみな、疲れと恐怖に包まれており、誰もが自分たちの未来を不安に感じているようだった。


「どうしてこんなことに…」


レインの心はさらに重くなり、自分が守るべきだった仲間たちをこんな危険に晒してしまったことへの自責の念が押し寄せてくる。カリンとエリスが無言で歩く後ろ姿を見ながら、彼はそれでもリードが無事であることを願わずにはいられなかった。


しかし、彼らがリードの家にたどり着くと、そこで待っていたのは悲しい知らせだった。家の前にはシャドウフォークの戦士たちが立ち尽くし、その表情は暗い。彼らの一人が、レインにゆっくりと近づいてきた。


「レイン様…リード様は、人族の襲撃の際に…」


その言葉を聞いた瞬間、レインの心臓が止まるような感覚に襲われた。まさか…。


「リードは、どうなったんだ?」


震える声で問いかけるレインに、戦士は悔しそうな表情を浮かべながら続けた。


「人族がこの集落を襲った際、リード様は我々を守るため、自らがシャドウフォークの長であることを名乗り出ました。そして…人族に捕らえられてしまいました」


その言葉は、レインの頭の中で響き渡り、彼の全身を凍りつかせた。リードが捕まった?自らを犠牲にして、他のシャドウフォークを守るために…。その事実に直面したレインは、身体の力が抜け、膝から地面に崩れ落ちそうになった。


「なんてことだ…俺がいながら、リードは…」


レインは拳を強く握りしめ、震えながら地面を睨んだ。守るべきだったリードが、彼がいない間に捕らえられてしまった。自分の無力さが嫌というほど痛感され、胸の中に後悔と自責の念が次々と押し寄せてきた。


「俺がもっと早く戻っていれば…こんなことにはならなかったかもしれない…」


レインは完全に取り乱していた。自分を責める気持ちが抑えきれず、何度も同じ言葉を繰り返していた。その姿を見たエリスとカリンは、深刻な表情で彼を見つめていた。エリスはそっと彼の肩に手を置き、優しく語りかけた。


「レイン、そんなことを言っても何も変わらないわ。私たちはできる限りのことをしたし、これからもそうするべきよ。今は自分を責める時間じゃないわ。リードを助け出すために、もっと冷静になる必要があるのよ」


彼女の穏やかな声は、レインの耳に心地よく響いたが、彼の心に安らぎを与えるにはまだ時間がかかりそうだった。それでも、エリスの言葉は少しずつ彼を落ち着かせる効果があった。


「だけど、リードが捕まってしまったら…この集落の皆はどうなるんだ?俺がいなければ、もっと大変なことに…」


レインの声は依然として弱々しく、まるで自分を納得させようとするように呟かれていた。カリンが一歩前に出て、彼の前にしゃがみ込んでその顔を覗き込むように見つめた。


「レイン、君がいるからこそ、私たちはこれからも戦えるんだ。今は確かに辛い状況だけど、君はもう一人じゃない。私たちも一緒に戦うよ。だから、立ち上がろう?」


カリンの言葉はまっすぐで、力強かった。彼女の真剣な表情と、その瞳に宿る決意を見たレインは、ようやく少しだけ気持ちを立て直すことができた。彼女の言う通り、これからどうするかが重要なのだ。自分がここで立ち止まっていては、リードを助けることはできない。


「ありがとう、エリス、カリン…」


レインは深く息を吸い込み、拳を強く握りしめた。そして立ち上がると、もう一度前を向いた。リードが捕らえられてしまったことは事実だが、彼を助けるためには行動を起こさなければならない。今こそ、自分の力と仲間たちの助けを信じる時だった。


「リードを助け出そう。そして、この集落を守り抜こう」


レインの声には、再び強い意志が込められていた。彼の決意を聞いたエリスとカリンも、それぞれ力強く頷いた。


「もちろん。私たちは一緒に戦うわ」


エリスが微笑みながら言うと、カリンも少し照れたように頷いた。


「私だって負けないからね、レイン。力を合わせれば、必ず乗り越えられるさ」


レインは再び仲間たちと共に立ち上がり、リードを救うための第一歩を踏み出した。彼の心には新たな決意が芽生え、どんな困難にも立ち向かう覚悟ができていた。

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