衝撃的な情報
カリンからの報告は、まさに衝撃的だった。
「人族がシャドウフォークへの侵攻を開始するという情報が入りました…」
カリンの声は震えていたが、その内容は一瞬で部屋の空気を凍りつかせた。レインはその一言に息を詰まらせ、心臓が大きく跳ね上がった。
「なんだと…?」
レインは呆然としながらも、すぐに行動を起こそうと頭を働かせた。人族の侵攻。シャドウフォークの集落は今にも攻撃を受けるかもしれない。時間がない。レインはその場に立ち上がると、カリンにさらに問い詰めた。
「その情報はどこから得たんだ?本当なのか?」
カリンは頷きながら、すぐに答えた。
「密輸組織の残党数名を尋問した結果です。情報の信頼性は高い。彼らは組織の中でも比較的高位にいた者たちで、人族内部の動向に詳しかった。侵攻は数日以内に始まるだろうとのことでした…」
レインの心は焦りに満ちていた。シャドウフォークの集落には彼の仲間たち、家族がいる。これまで平穏を保っていた集落が、一瞬で焼き尽くされるかもしれない。彼はすぐに集落へ戻るべく、カリンの報告を聞くなり、部屋を飛び出そうとした。
だが、その瞬間、鋭い声がレインを呼び止めた。
「待て、レイン!」
その声は、まるで雷のように響き渡り、レインの足が止まった。対談の間中、穏やかな声を保っていた領主が、今はその大きな威圧感をもってレインを制止していた。レインは振り返り、領主の険しい表情に目を向けた。
「焦るな、レイン。我々ドワーフ族は、シャドウフォーク族との協力を約束した。救援の準備を整え次第、援軍を送るつもりだ。それまでの間、冷静に行動しろ」
領主の言葉は、レインの心に少しばかりの安堵を与えた。だが、同時に急がなければならないという焦りも消えなかった。シャドウフォークは決して戦闘に特化した種族ではない。人族に対して防衛力を持っているとはいえないのだ。
「援軍の準備にはどのくらいの時間がかかる?」
レインは喉の奥が詰まるような感覚を覚えながら、領主に問いかけた。できるだけ早く救援が来てほしい。そうでなければ、集落が全滅する危険すらある。
「数日は必要だ。しかしその間、我々の斥候が先行して偵察に向かう。すぐに情報を得られるだろう」
領主は冷静に言い放った。ドワーフ族の援軍は、シャドウフォークにとって強力な味方となるだろう。その一方で、エルフ族との協力も必要不可欠だ。領主はエルフ族との連絡を取ることも約束してくれた。
「エルフ族にはすぐに使者を送り、支援を要請する。エルフもまた人族に対抗する必要がある。我々とエルフが手を組めば、人族の進攻を阻止するだけでなく、彼らを押し返すことも可能だろう」
レインはその言葉に頷いた。領主の判断は的確だ。人族の進攻を食い止めるためには、ただ戦うだけでなく、連携を強化することが重要だ。シャドウフォークとエルフ、そしてドワーフが手を組めば、対抗勢力として強固な基盤を築けるはずだ。
「カリン、お前にはレインに同行し、全力で力になることを命じる」
領主はその言葉を放ち、カリンに目を向けた。カリンは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐにその命令を受け入れ、静かに頷いた。
「分かりました、領主様」
カリンは敬礼し、レインに向かって微笑んだ。
「心配しないで、レイン。私も同行するから。私の戦闘技術も鍛冶の腕も、ドワーフ族の中では一流だから、きっと役に立てると思う」
彼女の優しい声に、レインは少しだけ気持ちが落ち着いた。カリンは確かに頼りになる存在だ。彼女が同行してくれるなら、集落への帰還も心強いだろう。
「ありがとう、カリン。でも、本当に大丈夫なのか?これからは危険な道のりになるかもしれない」
レインは念のため確認した。カリンを巻き込むことに少しばかりの不安を抱えていたが、彼女はそれを軽く振り払うように微笑み返した。
「私はドワーフ族だよ。危険な道のりなんて慣れているさ。それに、領主様から直接の命令があったんだから、全力であなたをサポートするよ」
カリンは少し照れた様子で、上目遣いにレインを見上げた。
「よろしくね、レイン。力になるから」
その言葉とともに、彼女は恥ずかしそうに視線を外した。その仕草に、レインは少しだけ微笑み、彼女の気持ちを受け取った。
「ありがとう、カリン。君がいてくれるなら、きっと大丈夫だ」
レインは感謝の意を込めて、そう答えた。
領主に一礼し、レインとカリンはすぐにシャドウフォークの集落に向けて準備を始めた。集落への道は長く、険しいものになるだろう。しかし、ドワーフの援軍が間もなく到着するという希望があった。そしてカリンが同行してくれることが、レインにとって大きな励みとなった。
シャドウフォークの未来がかかっている戦いが、今まさに始まろうとしていた。レインは決意を新たにし、仲間たちの元へと向かう準備を整えた。




