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不満と新たな力の獲得

シャドウフォークとしての生活に慣れてきたレインだったが、次第にその生活に対する不満が胸の内に積もり始めていた。シャドウフォークは影に隠れて生きることを常としているが、その理由は単に彼らの性質にあるだけではなかった。それは、彼らがこの世界で最も弱い種族の一つであることに起因していた。


ある日、レインは外の世界へ情報を集めるために派遣されていた。リードから与えられた任務は、近隣の人族の村の動向を探ることだった。シャドウフォークはその身を隠す術に長けているため、このような隠密活動は彼らの得意とするところであり、またそれが彼らの生存戦略でもあった。


レインは影の中に身を潜めながら、人族の村を見下ろす丘の上に立っていた。村の中心には広場があり、そこでは人族たちが賑やかに市場を開いていた。笑い声や活気に溢れたその光景は、シャドウフォークの洞窟内の静寂とは対照的だった。


「俺たちは、ただ影に隠れているだけか…」


そう思うと、胸の内に一抹の苛立ちが生じた。人族はこの世界で最も力強い存在であり、他の種族を圧倒する力を持っている。それに比べてシャドウフォークは、隠れていることしかできない。力の差は歴然としていた。


その日の夜、レインは洞窟に戻ったが、心の中にくすぶる不満を拭い去ることはできなかった。彼はリードに報告を終えた後、無言のまま自分の住居に戻った。影に生きることの意味を再び考え始めた。


「なぜ、俺たちはこんなにも弱いんだ?」


そう呟いた瞬間、自分でも驚くほど強い怒りが込み上げてきた。自分たちは隠れることしかできず、他の種族に怯えて生きなければならない。そんな生活が、次第に耐え難いものに感じられるようになってきたのだ。


「俺は、このままでいいのか?」


レインは苛立ちを抱えたまま、洞窟内を彷徨い歩いていた。静まり返った洞窟の中を歩き続けると、いつの間にか洞窟の奥深くへと進んでいた。普段は入ることのない場所――洞窟の最も古い部分に足を踏み入れてしまったのだ。


そこはまるで、時間が止まったかのような場所だった。天井には巨大な鍾乳石が垂れ下がり、地面には苔が生い茂っている。薄暗い光の中、何かが彼を引き寄せるように感じられた。


「ここには、何かがある…」


直感的にそう思ったレインは、さらに奥へと進んでいった。そして、突如として目の前に広がったのは、古代の遺跡のような場所だった。大きな石の柱が立ち並び、その中央には巨大な祭壇が鎮座していた。祭壇には古代文字が刻まれており、その意味を解読することはできなかったが、何か強い力を感じさせるものがあった。


「これは一体…?」


レインが祭壇に近づいた瞬間、突然、周囲の空気が重くなった。足元から冷たい風が吹き上がり、影が生き物のように彼の周りを包み込む。何かが彼に語りかけているような気がした。


「影…影を操る力…」


頭の中に、不意に言葉が響いた。彼は無意識のうちに、手を祭壇に伸ばした。指が石に触れると同時に、彼の体に強烈な衝撃が走った。眩しい光が視界を覆い、その光の中で影が蠢く。


「これは…力…」


その瞬間、レインは自分が何か特別なものを手に入れたことを理解した。影を感じ取る力――そして、その影を自在に操る能力。それは、シャドウフォークの中でも極めて稀な力だった。


光が収まると、レインの体に異変が起きていた。彼の手から黒い霧のようなものが立ち上り、その霧は彼の意思に従って動き始めた。影が自分の意志で動いていることを確認すると、レインは驚きとともに歓喜を感じた。


「これが…影のスキル…」


影を操るスキルを得たことで、レインの中に新たな自信が芽生えた。この力を使えば、シャドウフォークとしての限界を超え、他の種族に対抗することができるかもしれない。そう考えると、彼の胸に新たな希望が灯った。


「俺は、ただ隠れているだけの存在じゃない…」


レインはそのまま洞窟を後にし、再びシャドウフォークのコミュニティに戻った。リードや他の仲間たちには、まだこの新たな力について話すつもりはなかったが、彼の心には確信があった。この力を使えば、自分たちシャドウフォークにも新たな未来が待っているはずだと。


それからの日々、レインは影のスキルを使いこなすための訓練を重ねた。彼は自分の限界を試し、影を利用した戦術を磨き続けた。洞窟内での生活は相変わらず静かで、他のシャドウフォークたちもそれぞれの日常を送っていたが、レインだけはその中で違う道を歩み始めていた。


「いつか、この力を使って…」


彼の中で、何かが変わり始めていた。シャドウフォークの弱さに対する不満が、この力を得たことで少しずつ薄れ始めたのだ。彼はこの世界で何かを成し遂げたいと願うようになり、そのための第一歩を踏み出したのだ。

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