カリンからの情報
「レイン、報告があるの…」
カリンが少し重々しい口調で話を切り出す。レインはその様子から、ただならぬ事態が起きたことをすぐに察知した。彼女が来た理由が良い知らせでないことは明白だったが、それでもまずは冷静に彼女の話を聞こうと心を落ち着ける。
「どうした?何かあったのか?」
レインは問いかけると、カリンは深く息をつき、話し始めた。
「まず、領主に会う約束は取れたわ。近いうちに面会できるように手配している。これは、あなたが密輸組織を壊滅させた功績を認めてくれた結果よ」
カリンの言葉にレインは少し安堵した。領主との面会は、この旅の重要な目的の一つだった。しかし、カリンの表情は依然として暗く、何か他に深刻なことが起きたと感じさせる。
「でも…それだけじゃないの。問題は、あの密輸組織のリーダーよ」
カリンの声は少し震えていた。レインは彼女の言葉に緊張感を覚えた。
「リーダーがどうしたんだ?」
「リーダーは…尋問中に自害したの」
その言葉に、レインは一瞬息を飲んだ。密輸組織のリーダーは捕らえられていたものの、尋問によってさらなる情報を得ることができると期待していた。しかし、その希望はもろくも崩れ去った。
「自害だと…?」
レインは信じられないという表情でカリンを見つめた。密輸組織のリーダーが命を絶つとは想像していなかったが、それは彼の立場が相当に危険なものであったことを示していた。
「ええ、尋問が始まってすぐに、彼は何かを口にして…それで。すべてを話す前に、彼は死んでしまった」
カリンは重々しく頷いた。その出来事の衝撃が大きく、彼女もまだ整理しきれていない様子だった。
「彼はただの密輸人じゃなかったの。彼は人族の中でも相当高い地位にいる者だったらしいの。密輸を利用して、武器や資源を手に入れて、私腹を肥やしていたのよ」
レインは、その言葉に深く考え込んだ。リーダーは単なる犯罪者ではなく、社会的に強い影響力を持っている人物だったということが分かった。彼の密輸活動は、単なる金儲け以上の目的があったようだ。
「人族の中での地位を強固にしていたってことか…。密輸によって得た武器や物資で」
レインの言葉に、カリンは頷いた。リーダーの死によって、その背後にある複雑な権力構造が明らかになりつつあった。しかし、それがただの個人的な問題ではないことを、カリンはさらに説明し始めた。
「問題は、それだけじゃないの。今、リーダーの死と共に、人族の中でも武器が流れてこなくなったことで、大混乱が起きている。武器を手に入れられない状況は、彼らにとって致命的なの」
レインは険しい表情を浮かべた。武器の供給が途絶えたことで、彼らの軍事力や影響力が揺らいでいる。だが、それはただの混乱では終わらないことを、カリンは示唆していた。
「そして…この混乱の中で、種族的に弱いシャドウフォークが狙われるかもしれない。人族は、自分たちの地位や利益を守るために、シャドウフォークを排除しようとする可能性があるわ」
レインはその言葉に衝撃を受けた。彼の故郷であるシャドウフォークは、すでに追い詰められた立場にある。その弱い立場を利用し、人族が自分たちの利益を守るために攻撃してくるという可能性が現実味を帯びてきた。
「シャドウフォークが…狙われる?」
レインは困惑し、同時に怒りを感じた。シャドウフォークはただ生き延びるために戦っているだけであり、他種族に害を与えることなど望んでいない。それにもかかわらず、彼らが種族的な差別や偏見によって狙われるという事実は、レインの胸に重くのしかかった。
「ええ。人族は自分たちの優位性を守るために、手段を選ばないかもしれない。だからこそ、私たちはこの状況を一刻も早く収束させなければならないの」
カリンの言葉に、レインは静かに頷いた。リーダーの自害によって得られた情報は限られていたが、その背後にある陰謀と危機は明白だった。シャドウフォークを守るため、そして種族間の対立を防ぐために、彼らはさらに慎重な行動を取る必要があった。
「分かった。領主との面会で、何とか状況を打開する道を見つけるしかないな」
レインはカリンに決意を込めてそう答えた。彼には、シャドウフォークを守るための時間が限られていることを自覚していた。人族が行動を起こす前に、何とかして事態を収束させなければならない。
「領主との面会はもうすぐよ。それまでに、私たちもさらに状況を探っておくわ」
カリンはレインに向けてそう言い、彼女はその場を後にした。レインは彼女の背中を見送りながら、深く考え込んだ。事態は急速に進んでおり、今後の行動がすべてを左右することになるだろう。




