身柄引き渡しと平穏な時間?
レインは密輸組織のリーダーを無事に確保し、その後すぐにカリンに連絡を取った。カリンは初め、レインが密輸組織を壊滅させたと聞いて驚愕していた。レインが一人でこの困難な任務を成し遂げたという事実は、カリンにとって想像以上の成果だった。しかし、驚きながらもすぐにカリンは感謝の言葉を伝え、約束通り領主との面会を手配することを約束した。
「すごいわ、レイン…。あなたがここまでやってくれるとは思わなかった。領主との面会も、すぐに取り計らうわ」
レインは冷静に頷きつつ、任務が無事に終わったことに安堵していた。エリスにも気づかれず、密かに任務を達成できたことは彼にとって大きな意味を持っていた。シャドウフォークとしての特異な能力を駆使し、危険な場面を切り抜け、そして今、ついに領主との会見が約束された。
だが、ここまでの道のりは過酷で、レインは心身ともに疲労を感じていた。カリンもその疲れを察したのか、彼にしばらく休息を取るように勧めた。
「もうしばらくは目立つような行動は控えて、少し休んで。今は時間をかけることが大切だから」
カリンの言葉に従い、レインは数日間、調査や危険な任務から離れて、ゆっくりと過ごすことに決めた。任務が終わった安堵感が、心に静かな余裕をもたらした。そして、久しぶりにエリスと一緒に街を散策することにした。
エリスとの買い物の時間は、まさに穏やかな日常そのものだった。街には色とりどりの露店が並び、そこにはドワーフ職人たちの手で作られた趣向の凝らされた商品が所狭しと並べられていた。どの店も独自の個性を持っており、どのアイテムも見る者を惹きつける魅力があった。
「見て、レイン。これ、すごく綺麗じゃない?」
エリスは、露店の一つで見つけた細工の施された銀のブレスレットを手に取り、嬉しそうに見せてきた。彼女の顔には明るい笑顔が浮かび、ここ最近の緊張感が嘘のように柔らかい雰囲気が漂っていた。
「うん、確かに綺麗だ。ドワーフの職人技はやっぱり凄いな」
レインも、エリスの隣で軽く微笑みを返しながら、彼女が手に取ったブレスレットを眺めた。その繊細な彫刻と、銀の輝きが手首に優しく光を反射し、確かに美しい一品だった。彼は、しばらく穏やかな時間をエリスと過ごすことに心地よさを感じていた。
露店を見て回りながら、二人は街を散策し、様々な商品や食べ物を楽しんだ。特に、ドワーフの酒造技術によるフルーツ酒やスパイスを効かせた焼き菓子などが売られており、二人で分け合いながら味わった。エリスは、旅の疲れが少し和らいだのか、リラックスした様子で街の景色を楽しんでいた。
「レイン、こうやってのんびりするのもいいね。ずっと緊張していたから、こういう時間があるとホッとするわ」
エリスが微笑みながら言う。レインもその言葉に共感しつつ、彼女の隣を歩きながら静かに頷いた。確かに、ここ最近の彼らの旅は多くの困難に満ちていた。今、こうして何も追われることなく、ただ目の前にある小さな幸せを楽しむことができる時間は、何にも代えがたい価値がある。
「こういう時間を持つのも悪くないな、たまには」
レインはそう言って、エリスに微笑みかけた。エリスも嬉しそうに頷き、二人はまた歩みを進めた。通りの角を曲がると、遠くから子供たちが楽しそうに駆け回る姿が見え、ドワーフの街特有の活気が街全体に広がっていた。
やがて、夕方になり、レインとエリスは買い物を終えて宿へと戻った。宿に着くと、レインは部屋の窓を開けて外の涼しい風を感じながら、今日の一日を振り返っていた。
「今日は楽しかったな…」
心の中でそう呟いた時、ドアが軽くノックされた。レインがドアを開けると、そこに立っていたのはカリンだった。彼女は相変わらずの小柄で可愛らしい姿をしており、無邪気な笑顔を浮かべている。しかし、その笑顔の裏には何か重要な話があるのだろうと、レインは直感的に感じた。
「レイン、ちょっと話があるの」
カリンはおっとりとした口調でそう言い、部屋の中に招かれると、彼女はゆっくりと腰を下ろした。彼女の姿を見る限り、何か重大な話があるに違いない。
「今日は、少し時間ができたから、ゆっくり過ごせたけど…カリン、何かあったのか?」
レインが問いかけると、カリンは少しだけ真剣な表情に変わり、静かに頷いた。
「ええ、実は…」
その言葉に、レインの表情も引き締まる。カリンがここにやってきた理由とは何なのか。その答えが、今まさに明かされようとしていた。




