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シャドウウォークのコミュニティー

レインが目を覚ましてからどれほどの時間が経ったのか、彼には正確にはわからなかった。目に映る異様な風景、耳に届く聞き慣れない鳥や虫の声――すべてがこの世界での新たな現実を彼に突きつけていた。


しばらく歩き続けると、彼は森の奥に小さな光の集合体を見つけた。その光は、木々の隙間から漏れる月明かりのように淡く、ぼんやりとした光を放っている。興味を引かれるように、その光の方向へと歩みを進めると、そこに広がっていたのは、地下へと続く階段の入り口だった。


「ここは…?」


レインは慎重に階段を下りていく。地中深くまで続くその階段の先には、広々とした洞窟の空間が広がっていた。無数の小さな光が洞窟の天井や壁に取り付けられており、その光が洞窟内をぼんやりと照らしている。そして、その空間の中には、彼と同じ灰色の肌を持つ者たちが静かに動き回っていた。


「お前、見慣れない顔だな。新参か?」


突然声をかけられ、レインは驚いて振り返った。そこには、彼よりも少し年上に見えるシャドウフォークの男が立っていた。痩せた体躯に長い耳、そして深い黒の瞳が彼をじっと見つめている。


「俺は…レイン。気がついたら、ここにいたんだ…」


男はレインの言葉に耳を傾けると、少し考え込むようにしてから頷いた。


「そうか。どうやらお前は、我々の一員になったようだな。俺はリード。このコミュニティをまとめている者の一人だ。お前にこの場所を案内してやるよ」


リードはそう言ってレインを案内し始めた。洞窟の中は、まるで迷路のように複雑に入り組んでいた。小さな住居が点在し、それぞれがシャドウフォークの住まいになっているらしい。洞窟の壁は不思議な鉱石で覆われており、それが淡い光を放っているのだとリードは説明した。


「この鉱石は、我々シャドウフォークの生活を支えている。外の世界では目立たないが、ここでは必要なものはほとんど手に入る。我々はこの洞窟の中で、静かにひっそりと生きているんだ」


リードの言葉にはどこか誇りが感じられたが、同時に諦めのようなものも含まれているようだった。シャドウフォークはその特性から、他の強大な種族たちと比べて圧倒的に弱く、影に隠れて生きることを強いられていた。そのため、彼らはこの洞窟の中に小さなコミュニティを形成し、外の世界から身を守りながら生きているのだ。


「ここが我々の生活の中心だ」


リードが指差した先には、小さな市場のような場所が広がっていた。シャドウフォークたちは互いに食料や道具を交換し合い、静かに会話を交わしている。目立たないように振る舞い、常に周囲を警戒している彼らの姿は、まさに影そのものだった。


「お前も、すぐに慣れるさ。シャドウフォークとしての生き方を覚えるんだ」


リードはそう言い残し、レインを一人残して去っていった。


初めのうちは、レインもこの新しい環境に戸惑いを隠せなかった。シャドウフォークたちの静かな生活様式や、常に影の中に身を潜めるような習慣は、彼のこれまでの生き方とは全く異なるものだった。しかし、時間が経つにつれて、彼は次第にこの生活に順応していく。


レインは自分自身がシャドウフォークであることを受け入れると決め、彼らの暮らしに溶け込むための努力を始めた。まずはコミュニティの中で役立つ存在になるために、様々な仕事を手伝うようになった。洞窟内での物資の管理や、外の世界からの情報収集など、彼が得意とする隠密行動を活かせる場面は多かった。


「シャドウフォークは、影を操る者たちだ。我々は影に隠れることで、自分たちを守り、また相手を翻弄する」


リードが言ったその言葉が、レインの中で響いた。影――それはシャドウフォークの唯一の武器であり、同時に最大の防御でもあった。彼はその特性を学び、影を利用した隠密行動や、洞窟内での素早い移動方法を身につけていった。


ある日、レインはリードから「影を使ったスキル」について教えを受けることになった。シャドウフォークは影を操作する能力を持ち、それを使って姿を隠したり、敵の目を欺くことができるという。


「まずは自分の影を感じ取るんだ。そして、それを意のままに動かすことができるようにする」


リードの指導の下、レインは影との一体感を感じながら、徐々にそのスキルを習得していった。最初は難しかったが、次第に影が彼の意思に応じて動くようになり、彼はそれを使って見事に姿を消すことができるようになった。


「いいぞ、レイン。その調子だ」


リードは満足そうに微笑み、彼を褒めた。その言葉に、レインは少しだけ自信を持てるようになった。


こうして、レインはシャドウフォークとしての生活に慣れていった。最初は受け入れがたかった現実も、今では彼にとって新しい生き方の一部となっていた。シャドウフォークの仲間たちとも少しずつ打ち解け、彼らとの交流を通じて、孤独を感じることも少なくなっていった。


「ここでの生活も、悪くはないかもしれないな…」


レインは洞窟の外を見つめ、そう思った。まだ不安は残っているが、彼はこの世界で新しい生き方を見つけつつあった。そして、彼の中には一つの決意が芽生え始めていた。このシャドウフォークとしての力を最大限に活かし、この異世界で自分だけの道を切り開くのだと。


これから待ち受ける困難や試練を乗り越えるため、レインは静かに心を鍛えていった。そして、シャドウフォークとしての自分を少しずつ、しかし確実に受け入れていったのだ。

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