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クソギフトに続くは厄スキル

 怒れる店主ことアネッサにしこたま謝って、俺は肇とエリザが待つテーブルへと戻った。

 怒られていたのは10分くらいのものだが、何というか、とにかく気配が怖かった。体感時間は2時間ホラー映画に匹敵した。

 気の弱い人間だったらトラウマ待ったなしの光景を振り払うように、俺は大きくエールをあおった。

 そのまま、二人が注文してくれていたソーセージにかぶりつく。

 パリッとした歯ごたえと、弾ける肉汁。美味い。


「美味しいでしょ。この店の料理はなかなかのものだからね」


 俺の表情を見て察したのだろう、エリザがドヤ顔で言ってくる。

 なぜお前がドヤる。とは言わずに、俺は無料――正確にはエリザのおごりだが――のソーセージを飲み込むと、付け合わせのフライドポテトにも手を伸ばす。

 そして、その隣のさらには別のフライがあることにも気づいた。


「トンカツ?」

「そうだ」


 俺の願望にも等しい料理名を肇が肯定してきた。


「和洋折衷だろう? 地球の、それも日本の文化の影響を受けていることは明らかだ」

「諸先輩方が持ち込んだ、ってか。先達の偉業には感謝だな」

「そうだ」


 大仰な俺の言葉に返ってきたのは、生真面目な頷き。


「俺達が与える影響は、直接的にはそれほど大きくないかもしれない。だが、世代を超えて浸透するほど、文化的な影響は大きい。そのうえ、何が影響するかもわからん」

「まあな。だからって、王族付きになるとかは勘弁してほしいところだ」


 俺は肇が続けそうなことを遮って、先に俺の意向を口にする。

 肇が虚を突かれたように言葉を止め、それでも何かを言いたそうにして、結局口を閉じた。

 ざまあみろ。そうそうお前に誘導されてやるかよ。

 それはそれとして、奢りはありがたくいただくが。


「ねえ、さっきの動きは何? アレがギフト?」


 会話が途切れたことを気にしたのか、エリザが話題を変えた。

 俺も知りたいため、それに乗っかる。


「いや、ギフトじゃない。ただ、なんかどう動けばいいか、わかったんだよな」

「どういうこと?」

「ギフトは一人一つなんだろ? なんか神様っぽいショタにもらったのは、空間収納だからな。容量は大したことない」

「ああ、そうらしいな」


 当然のように漏れている俺のギフト。出所はレイラ姫で間違いないだろう。秘密保持どこいった。

 とはいえ、わかっていたことでもある。俺は気にせずに続ける。


「何というか、光みたいなのが動くべき場所? を誘導してくれるんだよ。『ラプラスの瞳発動』なんて声が聞こえたな」

「幻聴じゃないのか?」

「あんな修羅場に幻聴聞く余裕なんかないわ」


 幻聴っぽいものならこっち来てからさんざん聞いているが。


『幻聴扱いとは失敬な」


 うお、突然出てくんな。


『それは失礼しました。とはいえ、ラプラスの瞳、は迂闊に口にしない方がいいですよ』


 何だと? と思い、意識を眼前に戻す。幻聴扱いした徹はともかく、エリザは驚愕を露わにしていた。


「ラプラス。そんな馬鹿な」


 出てきた言葉は全否定であった。馬鹿扱いである。それも深刻な方の。


「どういうことだ?」

「ラプラス、っていうのはこの世界の伝説に出てくる名前なの。そして、人がその名前を口にすることはほとんどない」


 エリザが周囲をはばかるように、声のボリュームを下げる。

 思っていたよりも、重要な情報が聞けるかもしれない。


「それは、遥か昔にいた、人間だともエルフだとも言われている人物。神ならぬ身で、この世の理のすべてを解き明かし、未来すら見通して神に至ろうとしたとされている」


 なんかあれだな。地球の神話にも出てきそうだな。

 それで宗教戦争のごたごたとかで、悪魔認定されるやつだ。


「ラプラスは神の不興を買い、勇者によって討伐された」


 もっとダメだ。勇者にやられるとか魔王でしかない。


「今の光神教でも、神的認定されている、原初の魔王よ」


 最悪だ。クソギフトどころじゃない、厄モノじゃねーか。


「……とりあえず、幻聴だったということで」

「そうだな」

「そうね」


 俺達はそろって、隠蔽する方向で完全に同意した。はっきり言って、深堀してもロクなことにはならない。

 できれば王家への報告もやめていただきたいが、それは無理か?

 俺がそのまま伝えると、肇は苦笑しつつも頷いた。


「いや、俺も報告したくない。そもそも、お前の身体能力が高いことも事実だし、外から見たら与太話にしかならん」


 確かに、それはそうだ。与太話としか捉えられないし、ギフトでもない。

 ということは、この世界の範疇の何かでしかないわけだ。そこに現時点でリソースを割くことを嫌がっているのだろう。なんという合理的な男だ。ありがとう。


 とは言いつつも、俺は内心で確認する。

 それで、カスタマーサービスご担当のお名前は?


『聞きたいですか?』


 全然聞きたくない。でも聞くしかないだろう? 外からは与太話なら、俺の中では確定させておかないとな。


『いい度胸です。それでは、名乗りましょう』


 もったいつけるのやめてくんない?


『私はラプラス、かつて神の座に挑んだもの。その残滓であるスキル『ラプラスの瞳』です』 


 うわー。やっぱり。

 自我を持ったスキルとか、定番だよな。でもあからさまに厄スキルなの、何とかならんか。


『なりません。それに私は有能ですよ』


 知ってるよ。だから余計に問題なんだろうが。

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