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初日がやっと終わる

「説明してくれるわね?」

 

 美人が睨むと怖い。この言葉を俺は今理解した気がする。

 唐突に冒険者になる! と言い放った俺に対して、ファラ姫がキツイ視線で睨んできたのだ。

 麦わら帽子を託されてもいないのに、何言ってんだ、という具合である。

 とはいえ、説明が難しいな。


「かいつまんで言うと、この世界では好き勝手生きてやろうと思っていて、冒険者なら好き勝手できんじゃね? と思う次第です」


 俺のざっくりとした説明に、姫は鳩が豆鉄砲を喰らったような顔になった。ぽっぽー。

 そんな顔あるかい、と思っていたが、なるほど、言い得て妙だ。


「どこのアウトローよ。ハジメと似ているかと思ったけれど、あなた刹那主義者?」

「肇は理性派。俺は直感派。総じてそりも合わず、性格も似てない」


 肇と比べられてもな。確かにライバルと周囲に目されるくらいに、総合スペックは似たようなもんだったのだが。

 そのスペックの使い方に天と地ほどの差があるから、こうして格差が生まれているのである。

 そして困ったことに、俺はそれを問題だと思っていない。いや、ヤツの成功に妬みはするが。


「ファラ姫とレイラ姫だって違うだろう?」


 とはいえ、口にするのは無難な例えだ。別にこの姫様は友達ではない。思っていることを伝える必要はない。

 それでも、納得するだろう。ファラ姫は圧倒的に理性派だ。


「まあそうね。しかし、冒険者ねえ。今日この世界に来たあなたに、誰がそんな入れ知恵を……」

「そもそも、ファラ姫は俺を部下にして何がしたかったんだ?」


 放っておくと一瞬でエリザに行きつきそうだったので、俺は思っていた疑問をぶつけた。

 手遅れかもしれないが。


「それはもちろん、私の研究の協力ね」

「研究?」


 このお姫様マッドなアレじゃないだろうな。


「私は錬金術師なのよ。言ってなかったかしら?」

「聞いてないな」

 

 錬金術師とかマッドな香りしかしない。

 そんな俺の考えが伝わったのか、ファラ姫はジト目を向けてくる。

 段々お互い化けの皮が剝がれすぎている気がする。


「そんな怪しいことをしたいわけじゃないわよ。ただ、異世界の知識をもとに発明無双したいだけよ」

「その言葉だけで怪しさ大爆発だろうが」


 大体錬金術師って窯に物を入れてグルグルするだけで何か作れてしまうチート技術だろうに。

 というか、そもそも。


「でも俺、異世界の発明知識なんてないぞ?」


 俺の言葉に、ファラ姫が不思議そうな顔をする。


「え、でもハジメは色々発明してるわよ」

「アレは特別。そもそも物を開発する仕事をしていたし」


 俺の説明にファラ姫は、ああなるほど、と頷いたものの、まだ完全には納得していないらしく、質問を加えてくる。


「じゃあトオルは何の仕事をしていたの?」

「財務、ってわかるか? 金勘定とかチェックする仕事」

「…………」


 痛いくらいの沈黙が落ちた。財務はわかるらしい。さすが王族。


「つまり、文官?」


 まあ財務は文官だろうな。間違っても武官ではない。

 ん? だとすればハジメみたいな開発は何になるんだ?


「技官よ」


 そりゃそうだ。日本にもあるわ、技官。


「ともかく、文官なら無理な注文だったかもね」

「わかってもらえて光栄だ」


 ファラ姫は納得したらしい。ようやくかよ。


「とはいえ、アイデアだけでもいいわ。専属でなくてもいいから、たまには私の呼び出しに応じなさい」

「ああ、それくらいなら」


 お互いに頷きあう。これで合意だ。

 ようやく着地したなあ。




 話が終わったことを察知して、デザートと紅茶が置かれた。イチゴのタルトだ。

 それを味わいつつ、ファラ姫が俺に尋ねてくる。


「それで、冒険者はいいけれど、拠点はどうするつもり?」

「まだそこまで考えていないな。一人だし、どこかの宿屋に滞在、だろうな」


 賃貸よりもホテル住まいを選ぶ。海外駐在員にはそういう人もまれによくいる。

 金がかかるが、部屋の掃除をしてもらったり、色々と便利らしい。

 というか、この世界のことがもっとわからないと、賃貸のリスクもわからないからな。


「滞在場所が決まらないと連絡が取りにくいから、なるべく早く決めてよね」

「俺も宿なしになりたいわけじゃない。明日中には決める」


 というか、どこかおすすめはないのか?


「私のおすすめだと、高級宿になってしまうからね。これから冒険者になろうって人間が使うところじゃないわよ」


 それもそうか。王族御用達ってことになるもんな。

 この高級な飯も、ふかふかのベッドも、今日限りということでもある。

 

「冒険者ギルドは平民街にあるから、私が行くことはないわ」

「王族が気軽に冒険者ギルドに来たらびっくりするわ」

「まあそうね」


 できれば永遠に来ないでほしいと思っている冒険者が大多数だろう。


「平民街には他のギフテッド達も住んでいるわ。あなたの活躍を願っているわよ」


 ファラ姫が締めくくりの言葉を口にする。

 この食事会も終わりらしい。

 だから、俺もこう返す。


「ありがとう。また会える日を楽しみにしている」

「私もよ」


 俺が出した右手を、ファラ姫がしっかりと握り返す。




 こうして、俺の異世界生活一日目はようやく終わりを迎えた。

本作は着地点もないまま、気の向くままに書いています。

感想とかブックマークとか評価とかいただけると、やる気がアップします。


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