97.杞憂
《エイダSide》
エイダはヒラクたちと別れ、ダンジョン化した工場内を進んでいく。
「…………」
「どうしたんですかエイダさん?」
ヒラクの娘、フレイが隣にやってきて尋ねてくる。
ヒラクへの悪口を言うわけではないのだが、ちょっと言うのを躊躇ってしまう。だが……やはり気になっていたので、思ってることを口にした。
「フレイくん。ミュゼくんもだけど、こんな危ないことさせられて、なんとも思わないのかい?」
勇者の力を持つヒラク。
しかしミュゼたちはそういう特別な力を持っているわけではない、一般人だ。
そんな彼女らに、ダンジョン化をとくという任務を任すのは、少々、危ないだろうか。
負担が大きくないだろうか、と彼女は思ったのだ。
「ぼくひとりで……」
「お気遣いありがとうございます! でも、だいじょうぶ、です!」
ふすふす、とフレイが鼻息を荒くしながら言う。
「ふれいは、父上さまのお役に立つのが嬉しいです!」
「わたしも同感です。それに心配はご無用です。我らは特別ですから」
ミュゼが立ち止まると……。
フレイがフェンリルになる。
「ふぁいやー!」
ぼぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
通路が一瞬で火の海に沈む。
エイダが呆然としていたが、我に返る。消し炭になってる魔物の死骸があったからだ。
「魔物の接近にミュゼくんがいち早く気づき、フレイくんが倒したと……しかもこの魔力の痕跡、相当な高ランクの魔物……それを一撃で……」
エイダは、思い違いをしていた。
フレイたちも十二分にチートであったのだ。
ヒラクは彼女らに力があって、彼女たちならできると信じ、今回の仕事を依頼したのだ。
「そっか……ごめんね。杞憂だったね」




