78.蜘蛛の敵も余裕で倒す
糸魔法使う魔人、強化魔人98号と戦っている俺。
やつは糸で俺を身動きとれないようにし、さらに口をふさぐことで、ステータス展開できないようにしてきた。
だが、念じればステータスを開けるため俺には関係なかった。
「いくぞ」
「ぐ、く、くく! だが、まだだ! まだ我輩は負けてない! 形態変化!」
そう叫んだ瞬間、98号の姿が変化しだした。
体中からクモの糸が噴き出す。
俺はその場にいたミュゼをかかえて、背後に飛びずさる。
魔人から噴き出した大量の糸は、あっというまにサザンの街をクモの巣だらけにした。
そしてその巣の上に、2メートルほどの毒々しい見た目のクモが出現する。
「アーネット、聞こえるか?」
俺は転移門を起動させ、アーネットのもとに小さな窓を出現させる。
窓を通して、アーネットはこちらの映像が見える仕組みになっている。
「形態変化とはなんだ?」
「魔人に組み込まれた、魔物の細胞を活性化させ、自分自身も魔物へと姿を変えることね」
その説明を聞いても、ミュゼが首をかしげている。
だが俺にはピンときた。
「なるほど……魔人とは、人間に魔物の細胞を、後天的に組み込んで作り上げるものなのだな」
「! ヒラク様……わかるのですか!?」
「ああ」
そもそも魔人は、意図的に、人間に魔法を組み込んで作られた物だと聞いた。
だがステータス操作ができないのに、任意の魔法を付与することは、本来なら誰もできないはずだ。
だから、魔法の力を持ってる魔物の細胞を組み込む。
「そもそも実在していない力を、実在しているものに付与するなんてできない。そこで、実在してる魔物の細胞を、人間に組み込む。こうすれば、魔物の持つ力(魔法の力)を意図的に、人間に付与できるというわけだ」
「す、すごいわヒラクくん。まさか一発で魔人生成の仕組みをりかいするなんて……」
「さすがヒラク様です!!」
しかし魔物の細胞を植え付ける……か。
なかなかに非人道的な手段だった。
ただ、アーネットはそのような人の道に反するようなマネをする人間ではない。
おそらくは、【閃】の……というより、トザースに操られて【閃】が実行したといったところか。
「つくづく、度しがたいやつだな。トザースよ」
早めに灸を据えてやらねばならぬな。
「なにをごちゃごちゃと言ってやがる! 見るのである、吾輩の蜘蛛の巣を!」
街を覆う規模の蜘蛛の巣。
やつはその上に立ってニヤリと笑った。
「この蜘蛛の巣はただの蜘蛛の巣ではない!」
「ほう……その心は?」
「ぎゃははは! 敵にわざわざ教えるバカがどこにいる!?」
《98号:この蜘蛛の巣は、吾輩の領域。この糸は吾輩の神経と直接繋がっているのだ! 敵が触れた瞬間にオートで敵を捕縛するほか、糸を動かしからみついた得物をべきべきにへし折ることも可能!》
「なるほど、蜘蛛の巣の上ならば、思い描いた通りに糸を動かすことが可能なのか。反射で敵を捕らえることも可能と」
「なっ!? なぜそれを知ってるのだ!?」
俺は聖剣レーヴァテインを引き抜く。
「言葉を返そう」
キンッ……!
「ウギャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
「敵に教えてやる義理はない」
目の前に広がっていた巨大蜘蛛の巣が、一瞬にして凍りついていた。
この糸を切ろうとしたり、触れようとしたら、一瞬で捕縛されて圧死させられる。
またフレイの炎で燃えなかったことから、炎への耐性があることがうかがえた。
そこで、冷気。
この糸はやつの神経と直接繋がっている。
糸を冷気で凍らせることができれば、神経に……脳にダメージを与えられる。
「な、なぜ……て……のうち……しって……」
「ああ、俺は心のドアを開き、思考を読めるのだ。貴様の能力についても、ばっちり予習させてもらった」
「そ……ばか……な……なんて……やつ……化け物……め……」
魔人98号はあっけなく凍りついて、死亡する。
「さすがヒラク様! このような強敵も冷静に倒してみせるなんて! すごいです!」




