77.体の自由を奪われても超余裕で突破
ほどなくして、サザンの街へ到着した。
この中にいる魔人を倒し、人々を解放するのが目的だ。
「街を外敵から守護する最強結界が一秒で解かれた……」
またも、アーネットがorzといったポーズで膝をつく。
ふむ、この仕掛けを作ったサザンの人たちには大変申し訳ないと思ってる。
「この中には魔人がいると思われる。みな、気をつけるんだぞ」
「「はい!」」
「……どんな魔人が出てきても、ヒラクくんがいれば超余裕でしょ……」
なぜかやけっぱちになってるアーネット。
君は俺の仲間ではなかったのだろうか……?
まあ魔人を作ったのも、そして街の防衛術の構築にも、アーネットが関わってる。
敵ではないとしても、誰かにあっさり突破されたのだ、キモチイイ物ではないかもしれない。
「まあ、それについてはあとでいいだろう」
「まあね……」
「いくぞ」
俺たちがサザンの街に、踏み入れたその瞬間だ。
バサァアアアアアアアアア……!
「これは……津波!?」
「違う、糸だ。大量の糸が頭上から降り注いでる。フレイ!」
フレイがフェンリル姿になる。
空中から、滝のように降り注ぐ糸めがけて、炎を放つ。
『ふぁいあー! って、だめです父上さま! 火が効きません!』
炎神フェンリルの炎が効かないだと……?
俺はスキル明鏡止水で状況を把握。
瞬時に、転移門を開き、アーネットほか、俺の仲間たちを逃がした。
「ヒラク様……!」
糸の波が俺に押し寄せ、俺の体にからみつく。
……気づけば、俺は操り人形のように、体の自由を奪われていた。
「ふぉーふぉふぉふぉ! おばーーかさん! 仲間をかばって最大戦力が窮地に陥るなんてねえ!」
頭上に、なんだか妙な男がいた。
ピエロのような化粧をしている。
そしてそいつは、空中に立っていた。
だがよく見ると、やつのあしもとには、細長い糸が無数に張られてるのがわかる。
「なるほど……ここの魔人か?」
「そのっとおり! 吾輩は強化魔人98号! うちに刻まれた固有魔法は、糸! 糸といっても侮るなかれ! こうして敵にからみついて、相手の自由を奪い、操り人形にすることができるのだぁ!」
糸の魔法か。
ふむ、珍しい魔法だ。
なるほど、俺はやつの魔法攻撃を受けたということだ。
しかし罠があればステータスが自動で開くはずだったが……。
なるほど、罠を張っていたのではなく、俺が入った瞬間、やつが直接魔法攻撃を食らわせてきてたのか。
「ふぉふぉふぉ! しってるぞ貴様! ステータスを開くことで、あらゆるトラップを解除できるんだってなぁ。でも今の貴様は身動き一つとれない! ステータスを操作することは、絶対不可能!」
確かに体に糸が巻かれて、自分の意思で手を動かせない。
……だが。
「おっと、口もふさがせてもらいますよぉ」
しゅるるるう、と糸が俺の口をふさぐ。
「これでステータスを開く呪文も言えないでしょう! 終わりです!」
「ふむ、勝手に終わらせるな」
「な、なんですとぉおおおおおおおおおおおおお!?」
俺の体の自由を奪っていた糸が、はらりと落ちる。
「ば、馬鹿な!? どうやって!?」
「ステータスを開き、操作した」
「ソンな馬鹿な!? 体も動けぬようにしたし、呪文を唱えられないよう口もふさいだのだぞ!?」
しかし念じることでスタータスを、開くことが出来るのだ。
「くそっ!? どうやって!?」
「貴様に答える義理はない」
念じることでステータスを開くことが出来れば、あとは拘束状態を、開錠で解除すればいいだけ。
「さすがですヒラク様ーーーーーーーーーーー!」
ミュゼのやつが、危ないというのに、俺の元へとやってきた。
「敵がいかに姑息な手段を使ってきたとしても、冷静に事態を対処するなんて! すごいです!」
……まあいい。今はミュゼは放置だ。
危険は去ったし、相手のタネも割れたからな。
「さぁ、戦いを始めようか」
「ぐ、ぬぅうう! くそぉお!」




