73.防衛都市の結界を自動で開く
《ヒラクSide》
マギア・クィフ東部、イースタルでの騒動をおさめた。
俺たちは東を出て、南部へと向かっていた。
「父上さま」
「どうした、フレイ?」
竜車のなかにて、娘のフレイが尋ねてきた。
荷台には俺とフレイ、ミュゼ、そしてアーネットが乗っている。
「どこへ向かわれるのですか?」
「南部にあるサザンという街だ」
「南……敵の居る中央へは向かわないのですか?」
「ああ。東西南北にある都市を攻略してから、セントラルへと向かう」
俺は置かれてる状況を説明する。
「東西南北の都市は、強化魔人によって支配されているのだ。魔人どもはボスを倒したとて、動き続けるようプログラムされているらしい」
ようするに、セントラルへ真っ直ぐにいってイリーナを倒し(正気に戻し)ても、魔人の暴走は止まらないということだ。
「セントラルでの戦いの最中、他の都市で魔人が暴走し、被害が広がるのを防ぐため、まずは四方の都市を順に解放していく。【閃】はその場から動かんつもりらしいからな」
恐らくだが、【閃】は中央にいるのが一番力を発揮するのだろう。
だから、敵が侵入してきてるのだとしても、動こうとしない。
向こうが動かないのであれば、こっちから急いで攻める必要も無い。
四方を攻めてる俺たちに、しびれを切らして、セントラルから出てくるかもしれないしな。
「なるほど……! さすが父上さま! 敵の考えを見抜いた上で、的確な作戦を立案なさる! すごすぎです!」
というわけで、俺は南→西→北、と攻め入っていくことにした。
「アーネット。南の都市サザンはどのような都市なのだ?」
魔法国にすんで長いアーネットに、待ちのことを尋ねる。
「防衛都市とも言うわ。マギア・クィフ南側にはダンジョンが多くてね、それを守るために強固な結界が張られてるの」
「ふむ……結界」
「ええ。何重にも施された結界よ。だからサザンの人以外が街には絶対に立ち入れないようになってるんだけど……」
ふぅ、とアーネットが憑かれたように息をつく。
「どうした?」
「ううん……何でも無い……あなたなら、楽勝なんでしょうねって思ってね」
確かに俺には【開】がある。
ステータスを開いて、書き換えることで、どんな結界だろうと素通りできるのだ。
「ヒラク様、結界が見えて参りました」「最も外縁の結界ね」
窓からミュゼが顔を覗かせる。
俺も外を見ると、ふむ、確かに透明で巨大な結界が、道を塞いでいた。
「ぐわぐわ、がー!」
「あ! だめですよちーちゃん! 走っちゃ! 父上さまが結界を解くんだから!」
「がー!」
竜車をひっぱっている、地竜のちーちゃんが走り出す。
結界めがけて一直線に。
「あぶない!」
「構わん、すすめ」
すぅうう……。
「って、えええええええええ!? け、結界が自動的に開いたぁ……!?」
アーネットが驚愕している。
「ふむ、やはりか」
「どういうことなのヒラクくん!?」
「【開】が進化した影響だろうな。弱い結界なら、ステータスを上書きせずとも、開くことができるのだ」
「じ、自動で結界を開けるってこと……?」
「そうだな。弱い物に限るが……ふむ? どうした?」
アーネットが頭を抱えていた。
なんだ?
「攻略が早く進むことに、こしたことはないだろう?」
「いや、まあ、そう、なんだけどさ……でも、サザンの街には知り合いがいてね、彼女が苦労して防衛体制を築いたこと知ってるから……こんなあっさり突破されると……なんか……うん……」
ふむ、へこむ必要性がどこにあるんだろうか……?




