71.開拓の力で生徒たちを超進化
マギア・クィフ東部、イースタルの街に、【閃】から魔物が送り込まれてきた。
空中に飛んでいるのは、見たことない鳥の魔物だ。
「あれは、魔人を作る際、実験に使われた獣のなれの果てよ」
「ふむ……実験体ってことか」
「ええ。強さは魔人ほどではないにしろ、並の魔物のレベルを遥かに超えているわ」
実験体はグロテスクな見た目と引き替えに、強大な力を手に入れてるようだ。
俺の不可侵の結界に、何度もぶつかって、しかし体の原形を留めている。
ふむ、なかなかの強度のボディだな。
「ヒラク様、いかがなさります?」
『ふれいが出撃して、全部焼き払ってきますかー!』
それもありだが……ふむ。
「アーネット、第一高校に通ってる魔法使いたちを、集めてくれ」
「いいけど……何するの?」
「彼らに、力を授けようとおもってな」
アーネットは不思議がりながらも、俺の言われたとおり、生徒たちを食堂に集めた。
教員・用務員も会わせて、全員で1000人いくかいかないかくらいだ。
少数精鋭、というやつだろうか。
大人数でだらだらやってても効率が悪いし、良い判断だと思う。
「ヒラクくん。集めたけどうするの?」
「これより皆の潜在能力を、引き出す」
「潜在能力の引き出し……って、まさか! あたしにやったのと、同じことを!?」
「そのとおりだ」
ここへ来る前、アーネットのステータスを開き、【開拓者】の力で、アーネットの潜在能力を引き出し、転移魔法を使えるようにした。
進化した【開】は、このように、ステータスの中に眠る、新たなる可能性を引き出すことができるのだ。
「で、でも……1000人近くいるのよ? この子たち、全員の能力を引き出すなんてできるの?」
「無論だ」
「そ、そもそもそんなことしてなになるの?」
「俺が出て行ったあとの、自己防衛手段を強化しておきたい」
不可侵の結界が破られることはまずないだろう。
しかし【閃】……というより、【閉】が何を使ってくるかは予想が出来ん。
ひょっとしたら、邪神ギンヌンガガプの力を使って、不可侵を突破してくるやもしれない。
そのときに、自分の身を守れるように、街の人たちには自衛手段を授けておかねばならない。
「さすがヒラク様、残された人たちの真の安寧のため、力をさずけてあげるなんて。なんと慈悲深いことでしょう!」
当然だ。
ノブレス・オブリージュ。
力あるものは、ないものを助ける義務があるのだ。
俺がいなくなったことで、彼らが窮地に立たされるなんてことは、許せない。
「で、でも1000人近く能力解放なんてやってたら……日が暮れちゃうわよ」
「問題ない。ステータス、全開」
その瞬間、俺の目の前に、無数の窓が開く。
それはこの第一高校にいる人たち全員のステータスだ。
「【開拓者】の特殊効果発動……。能力解放!」
俺が呪文を唱えると、彼らのステータスに、秘められし能力が解放される。
潜在能力が解放されて……。
「な、なんだこれは!」「力が……力がわいてくる!」「神からの天啓よ! 新しい魔法を思いついたわ!」「おお、すごい……!」
俺は彼らのステータスを可視化させ、全員それぞれに、自分のステータスが見えるようにする。
「みな、その力を用いて、俺がいない間、この町を守ってくれ」
おれがそう言うと……。
「す、すげえ!」「おれ、こんな力があったのか!」
「ステータス……!? これっていにしえの勇者しか見えないんじゃ……?」
「まさか、あのお方はもしかして!」
するとミュゼが、得意げな顔で言う。
「何を隠そう、このお方こそ! 邪悪を払う正義の使者! 勇者ヒラク・マトー様であられます! 頭が高いですよみなさん!」
「おおお!」「すげえ!」「勇者だ! 勇者が来てくれたんだ!」「希望はあるぞぉ!」
ふむ、彼らの沈んでいた顔が一転して、明るくなっている。
これなら、敵が不可侵を突破してきても大丈夫だろう。
「ヒラクくん……ほんと、すごいね。ステータスを自在に開き、新しい能力を解放させるなんて。神さまみたい」
「おれは神さまではないさ。それに、力を授かったとはいうものの、あくまで潜在能力を引き出しただけ。土台がなければできないこと。彼らの頑張りが、結実しただけさ」
「だとしても、引き出せるのはあなただけなんだから、ほんと……すごいよ、ヒラクくんは」




