07.魔力を伸ばす歴史的大発見して驚愕される【実家Side少し】
《使用人Side》
ヒラクを追放した、彼の実家、マトー家はというと……。
「ああ! こんなまずい飯食わせるんじゃあねえ! おいコック! てめえはクビだ!」
「そ、そんな……! ジメル様! ひどいです!」
「ひどいもくそもあるもんか! ボクがクビと言ったらクビなのだ! この屋敷でボクの言葉が絶対なんだよぉ!」
ヒラクの弟ジメルは、屋敷でやりたい放題、ワガママ放題していた。
そのせいで、使用人たちはとばっちりを受けていた。
少しジメルの不興を買えば、よくて減俸、悪いとクビにされる。
ジメルは次期当主という座を使ってワガママの限りを尽くしていた。
使用人たちのなかには、ジメルをなんとかしてもらおうと、ヒラクの父トザースにつげ口をしたものもいる。
だがトザースは、ジメルの横暴に目をつむる方針のようだ。
それがよりいっそうジメルを増長させることになる。
使用人たちはジメルの日に日にひどくなる態度に困らされる羽目となるのだった……。
ああ、ヒラクが当主だったら、どんなに楽だったろうか……。
ヒラクが屋敷を去る前に、使用人たちでたとえば、当主に訴えれば良かった。
職業なんて関係ない、大事なのは名門の当主にふさわしい立ち居振る舞いができる、真の当主なのだと……。
使用人たちは全員がとばっちりを受けることになって、ようやく、自分たちの馬鹿さ加減を嘆いたのだった。
そしてまもなく、父もヒラクを追い出したことを後悔するのは、自明の理といえた……。
☆
《ヒラクSide》
商人を翼竜から守ったあと、俺たちはウォズの街へと到着した。
漁港の街ということで、ちょっと歩けばすぐに海が見えた。潮風が心地よい。
街には人が多く行き交っていた。
そのひとらが泊るようの宿もいくつもあった。
その中で、なかなか上等なホテルを、あの商人は無料で貸してくれた。
どうやら商人の弟が、このホテルの支配人だそうだ。
宿泊費、食費はただだし、さらにいつまでもここにいて良いとさえ言ってもらえた。
さすがにもらいすぎる気がした。
だが、どうやらあの商人の娘はかなり危篤状態だったらしい。
そこから俺の渡した素材のおかげで、症状が一気に快復。
俺は命の恩人であり、この好待遇はそのせめてものお礼らしい。
「ヒラク様! 換金に行ってまいりましたー!」
「ご苦労、ミュゼ」
ハーフエルフの少女、ミュゼがホテルの俺の部屋へと帰ってきた。
彼女は奴隷のボロい服から、高そうな洋服へと衣装チェンジしていた。
この服も、商人がただで支給してくれたものだ。
本当に感謝してもしきれないな。
さて、ミュゼには冒険者ギルドの場所を確認してもらいにいくついでに、俺が道中獲得したドロップアイテム、灰狼の肝を売ってきてもらった。
「どうですか、ヒラク様! この……お洋服!」
「ああ、似合ってるな」
「やぁったー! ヒラク様にほめられました! とてもうれしいです!」
はしゃぐものだから、胸が何度もバウンドしてしまってる。
エルフとはもっと慎ましい胸だったような気がしたが、ハーフエルフとなると事情が異なるのだろうか。
「ところで、ミュゼ。君に聞きたいことがあったのだ」
「好きな人ですか? ヒラク様です! 好きなタイプは? ヒラク様です!」
「ありがとう。聞きたいのは魔力量についてだ」
「あう……ソウデスカ……」
ふむ、なぜ残念そうにしてるのだろうか……。
まあ今はあまり関係ない。
「ミュゼ。君は魔力量を伸ばす方法を知ってるか?」
「いいえ、存じません。そもそも、魔力量は一生変わらないと、何世紀も前に、エルフの魔法研究者たちはそう結論づけました」
「ふむ……その根拠は?」
「それは……知りませんけど……」
やはり、魔力量が変わらないというのは、根拠が薄弱のようだ。
そして……俺はその理論を否定できる材料があった。
「ミュゼ、これを見てくれ」
俺は自分のステータスを、ミュゼに見せる。(街について、色々いじった結果、自分のステータスは任意で、他者に見せることができると判明した)
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ヒラク・マトー(15)
体力 100/100
魔力 100/110
SP 300
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「ま、魔力が数値化されてる!?」
やはり、そこは驚くとこだったか。
「す、すごいですよ! ステータスって、魔力を数値にできるんですね! すごい……」
「たしか魔力量は、水に魔力を流すことで、ざっくりとその総量を計るのが一般的だったな」
「そうです! 水見式、それがエルフ魔法学会が発表した、魔力量を調べる唯一の手段……すごい、数値でわかるなんて……歴史が動きますよ!」
「ふむ……とはいえステータスのことは口外できんからな。数値については、内密にな」
ミュゼがしょんぼりしていた。「言えば歴史的大発見ってことで、みんなヒラク様を尊敬するのに……」
「ミュゼ。本当に聞きたいのは、ここだ。魔力の総量についてだ」
魔力 100/110
「これがどうしたのですか?」
「俺の魔力総量は、もともと100だった」
「!? し、しかし総量110って……まさか! 増えたのですか!?」
「ああ」
「し、信じられません……! 魔力量は、生まれたときに決まって一生変わらない! それが、この世界の常識なのに!」
俺も本を読んで多少なりとも、この世界の常識については知ってる。
だがあくまで本の知識しかしらない。
ハーフエルフにして、勇者の仲間を祖母に持つミュゼは、俺なんかよりずっと魔法に詳しい。
その彼女が、言うのだ。やはりこの世界で、魔力量を増やす方法は、ないとされていた。
「ど、どうやったのですか……!?」
「思い当たるのは、魔力を全部使ったこと、だろうな。筋肉の繊維が、痛めつければそれだけ太くなるように、魔法も使えば使うほど総量が増えるのだろう」
俺の意見を聞いて……。
ミュゼが涙を流して、拍手する。
「すごいです、ヒラク様! 世紀の大発見ですよ!」
「ふむ……やはりそうか」
「はい! すごい……魔法学の歴史が変わる瞬間に、私は今立ち会えました! ヒラク様さすがです!」
しかし増やす方法について……一つ問題があるな。
「浮かない顔をしてどうしたのですか?」
「いや、魔力量を伸ばすのに、毎回全部魔力を使い尽くし、寝て魔力量を回復させる必要があると思うと、かなり手間がかかると思ってな」
「手間がかかったとしても、すごいことですよ。やればやるほど魔力量が伸びるのですから」
まだやればやるほど伸びるとは決まってないが……。
上限が……上限? ふむ……。
俺は開放を使って、自分の魔力量をタップ。すると……。
『選択してください』
『SP100 総魔力量10%増』
『SP200 総魔力量20%増』
・
・
・
ふむ。
「ミュゼ。もう一つ魔力量を増やす方法があった」
「ええええええ!? ど、どうやるのですか!?」
俺はSPを200消費する。
魔力量 100/132
ステータスを見せて、ミュゼに説明する。
「どうやら開放を使って、SPを消費すれば、魔力を使いつくさずとも増やすことが可能のようだ」
するとミュゼがどさ、と尻餅をつく。
「どうした?」
「ヒラク様……もう、それ、すごいってレベル超えてますよ! ただでさえ、魔力は使えば伸びるの法則を思いついたのに! 一個思いついただけでもすごいのに! 世紀の大発見を二回も続けて行うなんて! もうヒラク様は学問の神様ですか!?」
「ふむ……違うが」
しかしSPを使った魔力伸ばしは、ステータス操作および開放が使えないといけない。
つまり……俺にしかできないってことだ。
「ヒラク様はやはり、特別なのです! 素晴らしい!」
ちなみにSPは、
300→100→150、となった。
どうやらミュゼを、俺は無自覚に喜ばしていたらしい。
SPが増えたのはいいのだが、どこにミュゼを喜ばせる要素があったのだろうか……?




