49.【開】の進化、敵の卑劣な嘘を完璧見抜く
『ネログーマの邪神の遺体をすべて討伐しました』
『条件を達成しました』
『【開】レベル7へと進化しました』
『新たなステータス操作権限が付与されました』
聖域にあった2つの、邪神の遺体を破壊した後……。
転移門を使って、俺は獣王都エヴァシマへと戻ってきた。
「おかえりなさい、ヒラク! スコティ!」
王の謁見の前へと行くと、獣人国の国王マンチカン様が、俺たちを出迎えてくれた。
「陛下、ネログーマの遺体は、すべて破壊しました。聖域も元通りです。まもなく、東部の村々の水も、元に戻るでしょう」
獣人国の東側は深刻な水不足問題を抱えていた。
聖域にあった水分を、邪神の遺体が奪っていたからだ。
だがさっき邪神を完全破壊し、聖域に水が戻った次第。
「ヒラク……本当の本当に、ありがとうございました。あなた様はこの国を救ってくださった英雄です。その英雄的行いをたたえ、叙勲の式典を開催いたしましょう」
ふむ、叙勲式か……。
「陛下、ありがたい申出ですが、しかし辞退させていただきます」
「そ、それはどうして……?」
「俺はただ、ノブレス・オブリージュを全うしただけですから」
力を与えられた人間としての、当然の義務を果たしただけにすぎないのだ。
「俺は天より授かった力を、天に代って使っただけです。問題を解決したのは天の力といえます。俺は何もしてないです」
「し、しかしヒラク様はすごいことをしました! 称えられるべきですわ!」
姫が俺にそう言う。
「ありがとうございます。本当にうれしいです。ただ、俺には時間がありません」
「時間がない……?」
「はい。邪神ギンヌンガガプは、復活の兆しを見せています。それに、良からぬものが動いてるそうです」
【閉】という、謎の存在が、魔族と共謀し、邪神復活を企んでいるようだ。
「今立ち止まるわけにはいかないのです。なので、今回の叙勲は、固辞させていただきます」
すると陛下は、深く感心したようにうなずく。
「さすがですね、ヒラク。国を救った英雄ともなれば、一生遊んで暮らせるほどの富と地位を手に入るというのに。それを辞退するなんて、普通はできません。その理由が、さらなる世界の平和のためにというのですから……本当にあなたの精神は、高潔で、とても素晴らしいです」
さて。
その後、俺たちはエヴァシマ城の地下へと向かっていた。
「アクダクはその後、どのような感じでしょうか?」
アクダク商会のトップで、この国に水を高値で売って、不正に儲けを得ていた、悪徳商人だ。
やつは俺が倒したあと、拘束し、この城の地下牢に閉じ込めてもらっている。
【閉】に関する情報を、奴から引き出すためだ。
「それが、ヒラク。アクダクはこの牢屋につかまってから、おかしな挙動を見せているのです」
「ふむ? おかしな、挙動ですか……?」
「はい。実際に見てもらえればわかるかと」
俺はマンチカン陛下ととともに、アクダクが閉じ込められてる地下牢の前へとやってきた。
すると……。
「たのむ! ここから出してくれ! ぼくは、騙されてたんだ!!!!」
アクダクは……鉄格子をつかんで、必死になって声を張り上げていた。
「頼む! これは罠だ! 邪悪なるものに、ぼくは利用されていただけなんだ!」
見張りの獣人兵士が俺に言う。
「この人間、ここへ来てからずっとこの調子でして……自分はだまされたと一点張りを貫いております」
ふむ……。
邪神から精神干渉を受けていた、ということか。
「お願いします国王陛下ぁ、姫ぇ……ここから出してください。ぼくは、悪魔に取り憑かれてただけなのですぅう……」
「嘘おっしゃいですわ!」
スコティッシュ姫がそう言うと、アクダクはさらに泣きながら言う。
「嘘じゃないんですよぉお……おおおい、おいおい……」
アクダクは涙ながらに、身の上話しをしてくる。
自分は貧乏人だったが、ゼロから必死になって商売を続け、ついに小さいながらもギルドを得た。
そしてギルドには自分を慕う部下、そして、妻と子がいる……。
「ここでぼくが捕まってしまったら! 妻も子も、そして大切な仲間たちも! 露頭に迷ってしまうのです……う、うう……」
「……なんだか、不憫に思えてきましたわ。もしかして、本当にだまされていたのでは……?」
スコティッシュ姫が動揺しながら、俺に尋ねてくる。
陛下も、こいつの主張を信じかけてるようだ。
ふむ……なるほど。
「おいアクダク」
俺は鉄格子ごしに、アクダクの頭をつかみ、スキル回答者を発動。
触れている間、対象は嘘がつけなくなる。
このスキルを発動してる状態で、どう答えるか、きている。
「今語ったのは、真実か? それとも、俺たちをだますための嘘か?」
すると……。
「もちろん、真実でございます! ぼくは、嘘偽りなく、答えました……!」
……ふむ。
嘘がつけなくなるスキルを、相手に勝てる状態で、この回答か……。
もしもこいつが嘘をついていて、さっき語ったのが真っ赤な嘘なら、スキルは正常に発動し、真実を語っていただろう。
だがスキルを使用前後で、こいつの主張は変わらない(だまされていた)。
となると……。
「やはり、精神を邪悪なる物に乗っ取られていた、ということでしょうか……」
「そのとおりなんですよぉお……陛下ぁ……」
だが、やはりまだ信じ切れてないのか、陛下が俺を見て言う。
「ヒラク、どうしたらよいでしょうか。どうか、知恵をお貸しください」
俺は……。
レベルがあがり、新たなる【開】の力を……使う。
ステータス……展開……。すると……。
俺の前に、小さな窓が開いた。
「ヒラク様ぁ! どうか信じてください!」
《アクダク:ひひひ、もう一押しだ。あとはこの勇者野郎をだませれば、外に出ることができる》
……ふむ?
俺の目の前に、何やら文字列が並んでいる。
鑑定スキルを使用してみた。
■アクダクのセリフのあとに出てきた、《 》
→【開】、レベル7の力。
《 》は心のなかで思ってることを、切り取って表示したもの。
……なるほど。
つまり、心の扉を、開いて、こうして相手の思考を読み取ることができるということか。
「俺には回答者という力がある。それを使ったところ、おまえは嘘を言ってないことになってる。どういうことだ?」
「どういうことかもなにも……ぼくが嘘を一切言っていないからです!」
《アクダク:ひひひ、ばーか! 幼い頃から特殊な訓練を受けてるんだよぉ間抜けが! 自白させるスキルを使われても、自白剤を打たれても、無駄無駄無駄ぁ……!》
そういうことか……。
全て理解した。
「わかった。見張りの君、鍵を貸してくれないか」
「ありがとうございますヒラクさまぁ! ぼくを信じてくれたのですねぇ」
《アクダク:ばーかばーか! こーんな単純な嘘にひっかかってよぉお。まあ、おれの嘘は天下一品だから仕方ねえけどな! ひひ! この世でこのアクダク様の嘘を、見破れるやつは誰もいないから、まあしょうがねえなぁ!》
バレていると知らず、間抜けな奴め。
俺は鍵を開ける……。
振りをして、鉄格子ごしに、氷の剣を、アクダクの肩に突き刺す。
パッキィイイイイイイイイイイイイイイイイン!
「うぎゃぁああああああああ! か、体が粉々にぃいいい!?」
「ふむ、さすが魔族。首だけになっても、生きてるとはな。たいした生命力だ」
やつの体が砕け散ったとたん……。
からんっ……! と地面に何かが落ちる。
俺は鍵を開けて中に入り、おちてるそれを手に取る。
「このナイフは、なんだ?」
「あ、いや……その……み、見張りさんがナイフを落としてて! え、えへへ……返そうと思って」
「嘘だな。ステータス展開」
~~~~~~
ナイフ
【状態】
猛毒
~~~~~~
俺はステータスを見えるように、表示する。
「毒のナイフ! じゃあ……」
「はい、こいつは最初から嘘を言っておりました。その証拠にこちらを」
俺は開きっぱなしだった、さっきの小さな《 》窓を見せる。
どうやらこの《 》は、遡って、発言を表示することも可能のようだ。
「俺の新しい能力は、相手の心の扉を開き、こうして相手の思考を、文字にして表示可能となるのです」
「す、すごすぎます! なんと高度な読心術ですの!」
「こんなこと、宮廷魔導師ですらできません……!」
姫と陛下が驚いてる。
ふむ……だろうな。これがあれば、どんな嘘をついても、一発で見抜ける。
こんな高度な読心術、ほかにない。
「き、きたねえぞお! 人に無断で心の中を覗くなんてぇ……!」
「汚いのは貴様だ。情に訴え、外に出してもらおうとするなど、薄汚いマネをしやがって」
「う、ぎ、ぐうぐぐぐう……くそぉおおお……」
きらきらした目を、姫が俺に向けてくる。
「あやうくこのものの嘘にだまされてしまうところでした。ヒラク様……ありがとうございます……!」
「いえ、俺は当然のことをしたまでです」
天より与えられた力を、正義のために使う。
これが、俺の進むべき道。
「はう……♡ かっこいいです……♡しゅきぃ……♡」
「ぎ、ぎぎぃ……ちくしょぉお……」
クビだけになった、アクダクを見下ろして、俺は言う。
「さて、知ってること、話してもらおうか。洗いざらい、全部」
アクダクは観念したように、「わかったよ……」とつぶやく。
「ちくしょお……強いだけでなく、こんなにも多才な能力を使うなんて……化け物だぞ……こいつ……」




