44.魔族の卑劣な罠も余裕で解除する
不正な水を売りさばくアクダク商会を、ぶっ潰すために、俺は森の中にある、ギルド会館へとやってきた。
雑魚どもを制圧し、残るはアクダク商会のボスを倒すだけだ。
ボス部屋には、太った小男が待ち構えていた。
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アクダク
【職業】
・魔族
・錬金術師
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「だ、誰だ貴様ぁ!」
「ヒラク・マトー。勇者だ」
「! そうか……貴様がうわさの、魔族の邪魔をする愚か者だなぁ!」
ふむ、愚か者は、人類の未来を理不尽に脅かそうとする、魔族側であると思うのだが。
まあ議論は無意味だろう。
「我らの邪魔をするものは、誰であろうと殺す!」
バッ、とアクダクのやつが懐に手をやる。
「死ねえ……!」
ばきゅんっ……!
『きゃああ! 父上さまぁが撃たれたぁ!』
「ぎゃはっはあ! どうだぁ、帝国式最新の魔法銃の威力はぁ! 脳をぶちまけろぉお!」
しゅうう……。
「ふむ、なかなかの威力だな」
「なにぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!? 馬鹿な! なぜ生きてる!?」
やつは驚きながら尋ねてくる。
俺は、言ってやった。
「どうした? 攻撃してこい」
「く、くそぉ!」
ばきゅんっ! ばきゅんっ! ばきゅんっ!
「こ、攻撃が……防がれた!? 氷の鎧か!?」
「正解だ」
まあ正確に言うなら……。
聖剣レーヴァテインから、冷気を出し、俺の体に纏わせておく。
銃弾が俺の体に当たろうとする寸前、冷気が着弾箇所を凍らせる。
そして銃弾が氷の鎧に弾かれる、という仕組みだ。
『すごい! まさに神業の防御! さすが父上さま!』
「ぎ、ぎ、ぎ……この……人間風情が調子にのりよってぇ!」
歯ぎしりするアクダク。
だが俺は一瞬の隙を突いて接近。
「ふんっ!」
ばきっ!
「ふげぇえええええええええええええええええええ!」
俺の膝蹴りを顔面に受けたアクダクは、その場に倒れ込む。
手から魔法銃が離れ、レヴァを使ってそれを砕く。
「今ので確信した。きさま……弱いな」
自分の力ではなく、銃に頼ってる点。
そして術を使い、建物を隠蔽してる点。
それらから導き出されるのは、こいつが弱いという事実。
「ち、ちくしょぉおお……だ、だがなぁ! まだこちらには、策があるのだ!」
どごぉおん! という音がどこからか聞こえ、建物全体が揺れる。
ふむ……。
『ば、爆弾ですか!?』
「ああそのとおりだぁ! だが、人間でできているけどなぁ!」
『人間の爆弾!? どういうことですか!?』
邪悪に笑うアクダク。
「今この屋敷にいる全員の体には、爆弾が仕掛けられてる! 吾輩が合図するだけで、全て、一斉に爆発するのだ!」
『そ、そんな……! でも、爆発させたところで父上さまには結界があるから防げる……。はっ! ま、まさか!』
聡いフレイは気づいたようだな。
この、卑劣な男の罠について。
「ふひひひぃ! おまえらは無事だろうがなぁ、爆弾にされたやつはどうなるぅう? んんぅう? さっき爆発したのは、吾輩と一緒に悪事を行っていた魔族だがなぁ。金で雇った人間もここにはたくさんいるんだぞぉお?」
……ふむ。
その人間たちにも爆弾が仕掛けられている。
やつの気分次第では、そいつらが全員爆死する……ということか。
『ひどい! 最低です! ひとでなし!』
「ぎゃははあ! ざぁんねぇん、吾輩は人間じゃありませぇん!」
『くう……父上さま、どうしましょう……』
ふん、馬鹿なやつだ。
ペラペラと、種を明かしよって。
まあ、こいつのやりたいのは、脅しだからな。
爆弾の仕掛けを口にしないと効果が無い。
「なるほど……つまり、この屋敷にいる魔族・人間の体を爆弾に変えた。おまえの言うことを聞かないと、いっせいに爆破させ、彼らを殺すぞと」
『ぎゃははは! 話が早くていいなぁ? んんぅ? さぁどうするヒラクぅ?』
ふむ……。
「どうもせん」
「な、なんだとぉ!? きさま人の命が惜しくないのか!?」
人の命が惜しくないか、だと?
そんなの、惜しいに決まってる。
だが……。
「どうした? 早く爆発させて見ろ。無意味だがな」
「ぐぬ……くそ! 本当だぞ!? 本気で全員爆破させるぞ!」
「やってみろ、間抜け」
自分で種を明かしてる時点で、こいつは詰んでいるのだ。
「く! くらぇえええええ! 人間爆弾、起動ぅ!」
しーん……。
「なにいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」
ふん、馬鹿なやつだ。
『父上さま、どうなってるのですか?』
「こいつが得意げにベラベラ喋ってる間、この屋敷にいるやつら全員のステータスを展開し、爆弾を解除しておいたのだ」
建物内にいた人間、そして魔族は全部で50人。
そいつらの体内にしかけられた爆弾を、スキル開錠を使い、取り除いておいたのだ。
『で、でもステータス展開の呪文を唱えてませんでしたが?』
「こういう場合を想定し、念じるだけでステータスを展開できるよう、訓練済みなのだ」
声を発せない状況がくることくらい、容易に想像できるからな。
『すごいです! 父上さま、いかなる事態でも、人を助けられるよう、たゆまぬ努力をするなんて! 立派な心がけでございます! ふれいは、父上さまのすごさに感動で震えております!』
さて……。
「手札は完全に失ったな、アクダク」
「ち、ちくしょぉおお……! こうなったら……最後の手段!」
「自爆は無意味だぞ」
「じば……え?」
しーん……。
「ど、どうして……?」
「貴様のステータスを確認してないとでもおもったのか? 貴様は貴重な情報源だ。自爆されては困ると、さきほど取り除いておいたのだ」
こうなる展開も容易に予想できたからな。
『父上さまの頭のキレっぷりが、やばいです! やばすぎます! すごいすごーい!』
「ぐぐうぅう……くそぉおお……」
がくん、とうなだれるアクダク。
頭を抑えたのだ、これで、あくどい商売がこの国に蔓延ることはないだろう。
「一件落着だな」
・SP180万→27万(爆弾解除1人あたり3万×51人)→127万(報恩謝徳)。




