43.悪徳商業ギルドを余裕で制圧する
ネログーマで、あくどい商売をしてる商業ギルド、アクダク商会をぶっ潰す。
そのために、俺は行動を開始した。
スコティッシュ姫は危険なので、村に残ってもらうことにした。
ミュゼとちーちゃんを護衛として残したので、まあ安全だろう。
フェンリル状態になったフレイの背中に乗って、俺は移動する。
俺たちは、かつて森があっただろう、枯れ木の森へと到着した。
『父上さま、ここに、アクダク商会のアジトがあるのですか?』
「ああ、スキル回答者で居場所を引き出したから、間違いない」
このスキルを使うと嘘が一切付けなくなるのだ。
パシリッサから引き出した情報によると、この枯れ木の森にあるはずだが……ふむ。
『アジトってどこにあるんでしょう? ぱっと見、枯れ木が並んでるだけにみえますが……くんくん、においもしないし』
フレイはフェンリル、獣だ。
人間より鋭敏な五感を持つ。
彼女の鼻と耳で、人の気配を感じ取れないか……ふむ。
『ここにないのかもです?』
「いや、そうではないな。スキル、天網恢々を発動」
俺の目の前に、半透明の板が表示される。
周辺の詳細なマップがしるされていた。
それを見ると、森の中に人が複数人いる場所が表示されていた。
「やつらは姿をスキルか、魔法で隠してるのだろう」
『なるほど! いない、のではなく、隠れてるのですね! さすが父上さま! 頭いいですー!』
しかし、ふむ。
フェンリルの五感をごまかすほどの隠蔽となると、なかなか高度な隠す技術を使ってるような気がするな。
俺はフレイの背中にのって移動。
マップ上に表示されている、アジト(仮)の前までやってきた。
『あれあれ? 父上さまぁ、アジトがないです!』
「ふむ、落ち着くのだフレイ。ステータス、展開」
~~~~~~
アクダク商会敷地内
【状態】
・結界(隠蔽+不可侵)
~~~~~~
俺は周辺の空間のステータスを表示した。
すると、ビンゴだ。
『結界! なるほど、建物は結界で隠されてるのですね!』
■結界(隠蔽+不可侵)(S+)
→隠蔽スキルおよび、不可侵スキルが付与された結界。外部から結界を視認することも、中に入ることもできない。隠蔽看破スキルのみでは解除できない。
なるほど、見えなくなる+入れなくなる、二重の結界で、その存在を隠しているようだな。
「こざかしいやつらめ。スキル、開錠発動」
・結界の解除(10万SP消費)
空間の書き換えは、SP消費量が増えるのだが、ふむ。
どうやら結界がそこまで高度なものではないためか、消費SPが少ないようだな。
「SPを消費して結界を解除」
パキィイイイイイイイイイイイイイン!
結界が破壊されて、目の前にデカイ館が出現した。
『すごいです! 父上さまにかかればどんな結界も無意味ですね!』
「ふむ。フレイ。君はここで待機……」
『ついていきます!』
正直に言うと、子供を危ない建物のなかに入れるのは気が引ける。
だが彼女をここへ残しておいて、その間に他の奴らに、彼女が襲われるリスクも考えると……。
ふむ、一緒に行動しておいたほうがいいな。
「わかった。同行を許可しよう。ただし、フェンリルの姿は解かないように」
『はい! わーい、ありがとうございます! 父上さま優しいですー!』
まあフェンリルを連れておけば、雑魚がびびって戦意喪失するだろう(戦闘回数を減らせるだろう)という狙いも若干あるがな。
「いくぞ」
さて、結界を破壊した俺たちは、屋敷の中へと入る……その前に。
「ふむ、フレイ。スキルをおまえに授けていいか?」
『よろこんで! むしろ良いのですか!』
「ああ。身を守るためにも、必要なスキルだからな」
俺はフレイのステータスを開く。
【開】の効果のひとつに、相手に好きなスキルを付与することができる、というものがある(スロットが必要だが)。
フレイはまだスキルスロットが一つ残ってるからな。
・獣咆哮(S)
→爆音を発生させ、一定時間体の自由を奪う
・SP240万→230万
ようは、相手を一時的に行動不能にさせる、状態異常技だ。
「フレイ、獣咆哮を使い、目の前の扉を攻撃」
『え、でも……父上さまのお耳は?』
「かまうな。打て」
『はい! アオォオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!』
びりびり……! と大気を鳴動させるほどの大声が鳴り響く。
ドサリ……と扉の向こうから、倒れる音がした。
「ふむ、よくやったぞフレイ」
『え、えと……父上さまは大丈夫なのですか?』
「問題ない。耳を保護しておいた」
~~~~~~
ヒラクの両耳周囲(空間)
【状態】
・進入禁止(音波)
~~~~~~
「このように、局所空間のステータスをいじり、音だけ侵入を不可能にした」
『なるほど! ようは、遮音の結界を、耳の周りに張ったということですね!』
「そういうことだ。これでどんなデカい音を出されても大丈夫だったわけだ」
もうステータスは解いたので、会話ができる。
・SP230万→150万
ふむ、やはり空間操作は結構なSPが取られるな。
まさかフレイにスキルを付与するよりも、SPがかかるとは。
まあフレイにはスキルに対する適性があったから消費量が少なかったのだろう。
「行くぞ」
俺はフレイを連れてドアを開ける。
そこには……。
『わわわ! 人が倒れてます!』
「フレイの獣咆哮を受け、一時行動不能になってもらった。天網恢々で、敵が俺たちを待ち伏せしてるのはわかっていたからな」
向こうも馬鹿ではない。
結界を破ってきたことは、すでに察知されていたのだろう。
ゆえに待ち伏せという手段を執ってくるのは、容易に想像できた。
『すごいです! 父上さま、敵の策を見抜き、事前に策を打つなんて!』
「よし、これで雑魚はあらかた動けない。堂々と、敵の大将のいる部屋を目指せるな」
ということで、俺はフレイを連れて部屋の奥へ進んでいく。
スタン状態のやつらには、聖剣レーヴァテインで作った氷の手錠で、捕縛しておいた。
獣咆哮で動けない奴らは結構な数いた。
まあ雑魚戦闘が減っていいことだ。
『二階への階段です!』
「ここを登って、奥に、ボスが待ち構えてるようだぞ」
そのときだった。
「フレイ、下がれ」
俺の命令にすぐさま、フレイが反応して下がる。
俺もその場から飛び退いた。
ズガガガガガガガガガガガガガガッ……!
「ひゃっははあぁ! 帝国式の魔法機関銃だぁ……!」
銃弾の嵐が俺たちへと降り注いでくる。
二階の階段上には、ごついマシンガンを構えた、大男がいた。
獣咆哮でやられてないあたり、そこそこの強さを持つのだろう。
「死ね死ね死ねぇえええええええい!」
銃口から大量の弾が発射される。
俺はレヴァを地面に突き刺す。
目の前に氷の壁が出現。
ズガガガガガガガガガガガガガッ!
「氷の壁で塞いだかぁ! しっかーし! 防御するので手一杯だろう? こっちは魔力が尽きぬかぎり、銃弾の雨あられをお見舞いできるぜえ……!!!」
『父上さま、このままではじり貧です。どうしましょう?』
ふむ……。
「いや、防戦一方でも、じり貧でもない。もう片はついた」
「なにを言って……」
がっきいぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん……!!!!
「あ……が……か、らだが……凍りついて……ばか……な……」
銃弾の雨が止む。
2階の大男と、そして魔法機関銃ごと、レヴァの力で凍らせたのだ。
『つまり、防御してると思わせておいて、冷気を地面に伝わせ、相手を凍らせた……ということですね!』
「そのとおりだ」
『やっぱり凄いです、父上さま! あざやかなお手並みです! かっこいい! 素敵です~!』
氷付けにしたことで、向こうは攻撃してこなくなった。
俺たちは階段を上って、奥の部屋へと到着。
どがんっ……! と俺がドアをぶち破ると……。
「ひいい! なんだ、なんなんだ貴様ぁ……!?」
奥に、いかにも小物っぽい人物が震えていた。
ふむ? 誰かだと?
「俺はヒラク・マトー。おまえらの陰謀は、ここでお仕舞いだ」
・SP150万→180万