40.伝説のアイテムの封印も余裕で解く
獣王都エヴァシマで起きた事件を解決した。
数日後。
俺は次なる場所へと向かうことにしていた。
「あ、あのぉ~……ヒラク様」
「どうなさったのですか、姫?」
エヴァシマにある、ネログーマ城。
俺は女王陛下から空いてる部屋を寝泊まりに使わせてもらっていた。
「もう……行ってしまわれるのですの?」
「はい。次なる目的地、【聖域】へ」
するととなりで旅支度していたフレイが、はて? と首をかしげる。
「父上さま、聖域とはなんですか?」
「ネログーマの東の端に存在する、巨大な湖だ。そこに遺体がある、可能性があるらしい」
マンチカン女王陛下から聞いた話によると……。
どうやら、聖域には竜神様という守り神がいるらしい。
「りゅーじんさま……」
「ああ。ネログーマ危機の際には、竜神様が現れて、力を貸してもらえるといういにしえの約定があるそうだ。しかし……」
「国内の事件が起きてるのに、竜神様が現れない……つまり!」
「そう、何か問題を抱えてるということだろう」
必ずしも遺体があるとは限らない……が。
何か問題があるから、竜神様が来れなかったと考えることができる。
遺体の有無に限らず、竜神様に問題があるのなら、俺はノブレス・オブリージュを遂行するだけだ。
「あ、あの……ヒラク様……その……」
もじもじ、とスコティッシュ姫が身をよじってる。
ふむ、どうしたのだろうか。
そのときである。
コンコン……。
「ヒラク、失礼しますね」
「これは女王陛下」
俺は陛下に対してお辞儀をする。
女王はお供を連れて俺の元へやってきた。
「まあこの子ったら、まだ言い出せてないのですか?」
「うう……だって……お母様……はずかしいのです……」
親子にしか通じぬ会話をしている。
ふむ……。
『なんじゃ我が主よ、色恋は疎いのか?』
……色恋。
ああ、そういうことか。どうやら姫は俺に惚れてしまったようだ。
無理もない、俺は危機を救った英雄となった。
英雄に憧れ、惚れる気持ちも理解できる。
だがそれは一時の感情だし、それに……。
「姫。申し訳ない。俺には、やるべき使命がありますゆえ、気持ちに応えることはできませぬ」
「……っ! そ、そう……ですよね……」
「はい。それに俺には婚約者がおります。全てを終えて帰ったら結婚しようという約束を既にしてますので、申し訳ありません」
……じわりと姫は涙をためた。
だが、すぐに涙を拭いて微笑む。
「さすが、ヒラク様ですわ。本当に紳士的で、カッコいいお方。キープしておいて、恋心を利用し、王家の権力を使うこともできたでしょうに」
「そんな不義理はできません。あなたにも、そして俺の婚約者にも失礼にあたります」
「そうですか……ふふ、あーあ、ホントについてませんわ。こんな世界最高にカッコいい殿方と、もっと早くに出会っていれば……」
姫を傷つけてしまったことは申し訳ないが、恋心を利用することはできない。
「でも、きっぱり振ってくださってありがとうございました」
「ヒラク。国のあなたへの援助は、これからも続けさせていただきます」
俺は陛下の寛大な心遣いに、深く感謝する。
「ところで聖域なのですが、あそこは王家しか立ち入ることを許されておりません。そこで、ヒラク、娘を聖域まで同行させたいのですが」
「かまいません。助かります」
ふむ、聖域に入るためには王家の人間が必要。
一緒にスコティッシュ姫がついてきてくれるなら、助かる。
「……ヒラクに良いところを見せてくるのですよ、スコティ」
「……お母様!? でも今、ふられたばかりなのに……」
「……まだ婚姻を結んでいないのです。それまではチャンスがあります。ガンガンアピールするのです。それにいざとなれば第二夫人のルートもあります」
今度はボソボソと俺に聞こえないように、二人が会話していた。ふむ……。
「そして、ヒラク。これをあなたにお渡ししようと思っておりました」
「俺に渡す物?」
従者が近づいてきて、俺に箱を渡してきた。
箱を開けると……。
「これは……なんですか?」
「合成獣の翼というアイテムだそうです」
「合成獣の……翼?」
最初それは、ワッペンか何かかと思った。
翼が生えており、小さな宝石がついてる。
「聖槍アクア・テールとともに、王家に伝わっていた特別なアイテムです。【いにしえの勇者の神器】、の一つだとか」
「いにしえの勇者の……神器……?」
ふむ……きいたことない単語だ。
「鑑定」
■合成獣の翼
→神器の一つ。行ったことのある街へ転移可能となる。
※回数制限あり
■神器
→神のごとき力を発揮する、伝説のアイテム
「ただ……申し訳ないのですがそのアイテムは、現在使用できないのです。ですが、ヒラクならばと思いまして」
「なるほど。ステータス展開」
~~~~~~
合成獣の翼
【状態】
・【閉】の封印
~~~~~~
「……なんだ、これは。【閉】?」
■【閉】
→k4pyphg66w@h646「@ht
……ふむ。
スキルで鑑定できない単語なんて、存在するのか。
……これは、要注意だ。
しっかり調べねばならないな。
「陛下、【閉】という単語に聞き覚えはありますか?」
「【閉】? いいえ、ありません。それがどうかしましたか?」
……ふむ。
王家も知らないのか。
嫌な予感がする。
勇者の神器。【閉】。知らない単語が増えた。
俺の知らない知識が存在する。
そしてそれは、直感でしかないが、遺体に深く関わってきてる気がしてならない。
調べる手段が、必要だな。
まあ、それはともかく(優先度の高い)、今は目先の問題に集中しよう。
「開錠、発動」
『【閉】の封印の解除』
→『100万SP消費』
……ふむ。
解除に、空間書き換えと同じレベルのSPを必要とするのか。
それだけ強力な封印なのだろう。
そして、そんな強力な封印を施すということは、この神器とやらは、かなり重要なアイテムに違いない。
「SPを消費し、合成獣の翼にかかってる封印を解除」
パキィイイイイイイイイイイン!
『勇者の神器を解放しました』
『条件を達成しました』
『【開】、レベル5へと進化します』
『条件を達成しました』
『スキル【転移門】を獲得しました』
……ふむ。
「合成獣の翼が消えてしまいましたわ!」
「姫、どうやらあのアイテムは、勇者である俺を進化させるアイテムだったようです。そして、新たなスキルを獲得しました」
「まあ! 新しいスキルですの……?」
「はい。転移門、展開」
俺の目の前に、大きな黒い扉が開く。
ばがっ、と開けると、そこはエヴァシマの入口に繋がっていた。
「ふむ。合成獣の翼と同等の効果を持つ、転移のスキルのようです。しかも回数制限はなくなっております」
「す、すごいです! 制限無しに転移できるなんて! すごすぎますわ!」
……しかし便利なスキルを手に入れたかわりに、疑問が増えたな。
いにしえの勇者の神器。
そして……【閉】。
どちらも、聞いたことないもの。
だが、ほっとくわけにはいかないな。
ふむ……どうするかな。




