38.王都に仕掛けられた罠も余裕で看破する
俺は獣王都エヴァシマへとやってきている。
女王の寝所にて。
「ヒラク、このたびは病を治してくれたこと、感謝申し上げます」
女王マンチカン様は、俺に頭を下げてくる。
包帯を解いたその姿は、とても美しい。
スコティッシュ姫も麗しいが、マンチカン陛下はそこに、成熟した大人の色気がプラスされている。
「もったいなきお言葉。しかし陛下。まだ問題は完璧には解決しておりません」
「そうですね、ヒラク。まだこの獣王都には、まだ謎の疫病が蔓延しておりますからね」
女王だけでなく、王都にいる人たちもまた、病気を抱えてる様子だった。
だが、女王を直したことで、俺は街に蔓延する病の原因についても、なんとなく察しがついていた。
「ヒラク様、これからどうするのですか?」
「街に蔓延る謎の病を、終わらせる」
「ですが……治す当てはあるのですか?」
「ある。ヒントはそこ、サル野郎が持ってる」
フェンリル姿のフレイに、押しつぶされている、サルの獣人……。
いや、サルの魔族、ウラギリィ。
やつが何かを知ってるだろう。
俺はウラギリィに近づく。
「おいサル」
「うきぃい! 失礼だぞガキぃ! ふげええ!」
ぎゅうう、とフレイが魔族を、強く押しつぶす。
『父上さまに、ぶれーな口をきかないでください! ぷちってしちゃいますよ!』
「ということだ、死にたくなければ素直に、俺の質問に答えることだな」
俺はウラギリィの頭をつかんで、質問する。
「獣王都に蔓延してる病……これは、邪神の呪いだな?」
「うきき! 正っ解っ! ……って、えええ!?」
「ふむ、やはりか。呪いはどうやって王都全体にかけてる?」
「うきき! 呪物を獣王都に設置したのだ! えええええ!?」
これでわかったな。
呪いは、この獣王都のどこかに呪物を置くことで、発生させている。
「ど、どうなってるんだうきぃい!? なんで秘密を喋ってしまうのだぁ!?」
「敵に答える義理はないな」
俺には回答者というスキルがある。
触れている相手に、真実を語らせるスキルだ。
俺はウラギリィの頭をつかみながら尋ねる。
「呪物は王都のどこに隠した? 言え」
「うききぃい! しらねえよぉ!」
「……そうか」
回答者が発動している。
つまりこいつは、本当に呪物がどこにあるのか、知らないのだろう。
「ヒラク様、どういうことでしょう? 呪いを仕掛けたのはこいつなのに、それがどこにあるのか知らないなんて……」
ミュゼの疑問はもっともである。
本来なら設置者であるこのサルに聞けば、呪物の場所はわかって当然なのだ。
「うききぃ! さぁどうする人間ぅ? 呪物を壊さぬ限り、呪いはいつまでもこの土地を呪い続けるぞぉお! うきき、うきぃいい!」
勝ち誇ったような、ウラギリィ。
一方で、獣人親子は不安げな表情で俺を見てくる。
そんな顔を、これ以上させてたまるか。
呪物……設置者がわからない……。
そうか。
「ステータス展開」
~~~~~~
獣王都エヴァシマ
【モンスター・一覧】
・
・
・
~~~~~~
『父上さま、なんのステータスを開いてるのですか?』
「このエヴァシマ、土地のステータスだ」
俺は土地のステータスを見ることができる。
そして、ステータスのなかには、空間にあるモンスターを見ることができる。
「見つけた」
【モンスター・一覧】
・巨大鼠(邪神体)
「見つけた。呪物は、邪神の遺体だ。それを取り込んだ鼠やろうが、この王都内にいる」
「んなっ!? ば、馬鹿なぁ……! なぜわかったぁ!?」
ビンゴのようだ。
回答者はすごいな。
「どういうことですの、ヒラク様?」
「姫。単純な話です。設置者が今どこに呪物があるのかわからないというのなら、おそらく呪物は生きてる、または、生きてるものに持たせてるのでしょう」
だから本人は、どこにあるかわからないといったのだ。
「女王陛下の呪いが邪神の呪毒でした。なら、邪神の遺体がかかわってるかとおもったのです」
炎のミノのときのように、遺体を取り込み、化け物になってる可能性を探ったのだ。
結果、遺体を取り込んで邪神化してるモンスターを発見した次第。
「ふ、ふん! だ、だがそれがどうした! うきぃい! モンスターが取り込んだのが判明しただけで、今やつがどこにいるのかわからないのだろう!?」
「簡単だ。スキル天網恢々、発動」
俺の目の前に、獣王都エヴァシマのマップが開かれる。
これには、マップ内に【ある】ものが表示される。
巨大鼠は……いた。
「下水道のなかにいるな」
「んなぁ! だ、だが……! やつは足が速いし、しかも下水道の中! どうやって捕まえるぅ!?」
ふむ、たしかにな。
向かってる途中に、鼠もうごくだろうし、足も速い。
「だが、問題ない。レヴァ、いくぞ」
『おう! って、何をするのじゃ?』
俺は氷の聖剣レーヴァテインを手に、城の床に、剣先を突き刺す。
びきっ! という音とともに突き刺した場所が凍りつく。
「血迷ったか勇者! 地面をさして何の意味があるというのだ!」
パキィイイイイイイイイイイン!
「よし、破壊完了」
「なにぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」
俺が窓を開く。
眼下には獣王都の町並みが広がっている。
全体的にどんよりとしていた空気が……。
一気に、払拭された。
「姫、陛下。原因を破壊しました。これで安心です」
「あ、ああああ、あり得ない! どうやって!? 地下にいる鼠を始末したというのだ!?」
敵に説明してやる義理はないのだが、姫と陛下も気になってるようだし、説明するか。
「簡単だ。下水を凍らせたのだ、ここから」
「下水を凍らせただとぉ!?」
「ああ。下水道はこの城にも通じている。ここから、レーヴァテインの冷気をおくりこみ、下水を凍らせた。下水道を走る鼠ごとな」
手順としては、まず開錠で、邪神の遺体の破壊不可能オブジェクトを解除。
続いて、氷の力で下水を凍らし、鼠まるごと粉々に砕いたのだ。
「す、すごいですわ……まさかこの場から1歩も動かず、原因を破壊してみせるなんて」
『なんという奇策! なんという機転じゃ! さすが勇者じゃ! 頭の出来が違うのじゃ!』
がくん……とサル野郎がうなだれる。
これでやつの企みを、完全に打ち砕いた。
「ヒラク……本当に、ありがとうございました。なんとお礼を申し上げてイイやら」
「いえ、気になさらないでください。俺は、当然のことをしたまでです」
ノブレス・オブリージュ。
力ある物として、俺は、力を行使しただけに過ぎない。
「ヒラク・マトー……なんてやつだ……うき……外れスキル持ちのゴミじゃあなかったのか……うきいぃ……」
「おまえの敗因は、俺を外れスキル持ちだと侮ったことだ」
「くそ……くそおぉお……化け物め……すみません、邪神様……」
それだけ言うと、泡となって、サル野郎は消えてしまった。
どうやら情報をもらさないよう自死したようである。
こうして、獣王都エヴァシマでの事件は、解決したのだった。
・SP300万→250万(※開錠分)→350万




