37.女王の病気を治し、魔族の陰謀を阻止する
獣人国ネログーマに来てる俺たち。
白根山で邪神の遺体を破壊したあと、俺はスコティッシュ姫とともに、地岩竜ちーちゃんに乗って移動。
目的地である、王都へは、あっという間に到着した。
「父上さま、ここはどこですか?」
ちーちゃんから降り、娘のフレイが目の前の街を見て尋ねてきた。
「ここは獣王都エヴァシマ。ここネログーマの中心都市であり、女王陛下がおわす場所だ」
「王都なのですかー……でも。中心都市というわりに……その……」
「ふむ……活気がないな」
エヴァシマの街は、水上都市として観光名所の一つとなっているはずだ。
しかし……街には人がほとんど見られない。
ここに住んでる獣人たちの姿も少ない。
「げほげほ!」「ごほっ! ごほっ!」「はあ……はあ……」
……ふむ。
皆辛そうにしてる。
「姫、病気でも流行ってるのですか?」
「……ヒラク様のおっしゃるとおりですわ。現在、謎の病気がエヴァシマに蔓延してるのですわ」
ふむ……なぞの病か。
詳しく調べておきたいところだが……。
「姫。確認しておきたいことがあります。女王陛下についてです」
ぴくっ、とスコティッシュ姫の獣耳が動く。
ふむ、やはりそうか。
「陛下も病床に伏しておられるのですね?」
「……すごいです。ヒラク様。どうしてわかったのですか?」
「簡単な推理です。その聖剣アクア・テールを、あなたが所有してるからです」
スコティッシュ姫は、その剣は代々受け継がれてきたといっていた。
つまり王家の宝と言うこと。
宝の所有者は現国王であるはず。
しかしそれを娘のスコティッシュ姫が持っているのは、おかしい。
ならば考えられる可能性は一つ。
陛下は生きておられるが、聖剣を使えない状況にある。
奴隷のミュゼが拍手しながら言う。
「さすがです、ヒラク様! いつもながらすごい洞察力! 本当に頭がよくて素晴らしいです!」
「このミュゼは治癒魔法が使えます。陛下の治療の役に立てるかと」
しかしスコティッシュ姫は、弱々しく首を横に振った。
「……お気持ちは嬉しいのですが。無理なのです」
「ふむ? 無理とは」
「国内最高峰の治癒魔法の使い手ですら、お母様の病は治せなかったのです」
……ふむ。
なるほど。そうなると、また別の可能性が浮かんできたな。
「俺に任せてください。必ず治して見せます」
「! ほ、本当ですの……?」
「はい。任せてください」
何も知らないガキの発言ならともかく、先ほど邪神を倒したことで、信頼を獲得できたのか……。
「お願いします、母を、助けてください!」
★
俺はスコティッシュ姫に連れられ、獣王都エヴァシマの中心地、ネログーマ城へとやってきた。
白亜の美しい城の中を進んでいく。
やがて、王の寝所へと通された。
「失礼します、お母様」
部屋の中には、大きなベッドがあった。
その上に、ひとりの女性が眠っている……。
だが……。
「ひ、ひどい……包帯で巻かれて、まるでミイラ男みたいです……父上さま……」
フレイが言うとおり、女王は包帯で全身を巻かれていた。
しかも、包帯には血と膿がにじんでいる。
陛下は俺たちが入ってきたのにも、目を覚ますことなく、浅い呼吸を繰り返していた。
「うききき! これは姫さまぁ~! 良いところに帰ってまいりましたなぁ!」
「……【ウラギリィ】」
ウラギリィと呼ばれた、猿の獣人が俺たちのもとへやってくる。
「姫、誰ですかこの猿は?」
「ウラギリィ、宮廷医長で、わが国最高峰の治癒術師です」
「ふむ……この猿が最高峰の治癒術師ですか」
ウラギリィは俺に気づくと、ぎろりとにらみつけてきた。
「うきぃ? なぁんだ貴様ぁ? ここは部外者は入って来れないんだぞぉお!」
「俺はヒラク。ヒラク・マトーという」
「マトー……? ああ! うっききき! 外れスキル持ちのせいで、家を追われた役立たずのクズがここになんのようだぁ!?」
ふむ。
どうやら俺の悪評は、この国にも広がっているようだ。
「ウラギリィ! 失礼ですわよ! このお方は勇者さま! わたくしを助けてくださったのです!」
「うきぃ~? こんなクズがですかぁ? あり得ないですよぅ。外れスキルのせいで、なんにもできないゴミカスなんですよぅ?」
ふむ、まあそういう認識なのは仕方ないな。
本当に【開】が、はずれならばな。
「ところで、ウラギリィ。良いところにってどういうことですの?」
「おお、そうでした! うきき! 残念なことに陛下は、今夜が峠です」
「! そ、そんな……今日死ぬ、ということですの……?」
「うきぃい! そうです。よかったですねぇ、姫。親の死に目に間に合うことができてぇ~」
……ふむ。
良かっただと?
ふざけた男だ。
病気を治せないのに、何が医者だ。腹立たしい。
「……ヒラク様。もう、母は助からないのですの?」
涙を流す姫に、俺はハンカチを渡す。
「大丈夫です、俺に任せてください」
「うっきぃ? なんだ貴様、はずれのクズが何かするのかぁ?」
「ああ、今から俺が陛下を治す」
「ぎゃははは! これは傑作ぅ! 治せるものなら、治してみるがイイぃ~?」
俺は陛下に近づいて呪文を唱える。
「ステータス展開」
~~~~~~
マンチカン=ド=ネログーマ
体力 2/100
魔力 150/150
【状態】
・邪神の呪毒
~~~~~~
「やはり……な。ということは……フレイ」
ちょいちょい、と俺はフレイを手招きする。
俺はフレイに指示を出しておく。
「……わかりました、父上さまっ」
「……頼んだぞ」
フレイは俺から離れる。
さて。
「うっきぃい~? どうした人間ぅ? 治せるのか? んんぅ? 宮廷医すら治せなかった病気ぉ? 貴様ごときが治せるのかぁ? んんぅ~?」
「問題ない。スキル開錠発動」
・邪神の呪毒、の解除(SP200000消費)
解除に必要なのは20万SPか。
なかなか強力な毒が仕込まれていたようだな。
「SPを消費。解除する」
・300万SP→280万SP
パキィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!
「う、うう……あれ……? ここは……?」
「お母様ぁああ……! 目を覚ましたのですね!」
「スコティ……?」
スコティッシュ姫が母親のもとへいき、わんわんと涙を流す。
問題なく呪毒は解除されたようだな。
「う、うきぃい!? そ、そんな馬鹿な!? 治るはずがないのに……!」
「そうだな。医者に治せるわけがないな。なにせ、病気ではなく、呪いだったのだから」
全員が目を剥く。
「ど、どういうことですの……ヒラク様?」
「陛下は、呪われていたのです、姫。そこの……サルに」
「ウラギリィ! あなたが、母を呪ったのですの!?」
全員が宮廷医ウラギリィに注目する。
やつは大汗をかきながら言う。
「な、な、何を証拠にそんなことをぉ!?」
「貴様、魔族だな」
「なっ!? い、言いがかりだぁ! うき! わ、わたくしは獣人で……」
「そうか。ならばこれはどういうことかな? ステータス展開」
~~~~~~
ウラギリィ(45)
【職業】
・暗殺者
・魔族
~~~~~~
「これはステータスといって、そいつの持つ職業やスキルなどを可視化したものだ。それで、魔族ウラギリィ、なにか反論があるか?」
「う、き……く、くそぉおお! こうなったらぁ……ぎゃん!」
ウラギリィが本性を現そうとしたタイミングで……。
上から、巨大なフェンリルがのしかかった。
「う、うぎぃい!? フェンリル!?」
『父上さまに指示されて、タイミングを見計らっていたのです! おまえの企みなど、まるっとお見通しだったのです!』
そう、最初のステータス展開のとき、俺は女王だけでなく、そこのサルのステータスを見ておいたのだ。
「ば、馬鹿な……いつ、気づいたのだ? わたくしが怪しいと!」
「最初からだ。国王が死ぬというのに、喜ぶ馬鹿がどこにいる?」
こいつの態度が怪しかったから、ステータスを確認しておいたのだ。
そのタイミングで魔族と確定したので、フレイをウラギリィの傍に置いておいた次第。
「ち、ちくしょぉおお……なんてすごいやつなんだ。邪神様の呪いを解くだけでなく、わたくしの企みすら見抜いてしまうなんて……!」
「ザルなんだよ貴様、色々とな」
「うぐうぅう……」
さて。
魔族の企みは阻止することができた。
女王陛下は立ち上がると、俺の元までやってきて、深々と頭を下げた。
「ありがとう、ヒラク・マトー。あなたのおかげで、助かりました」
「いえ、お気になさらず。俺は、当然のことをしたまでです」
姫は涙をうかべると、俺に抱きついてきた。
「ありがとうございます! ヒラク様! 大好き……ですわ!」
・280万SP→320万SP




