33.地竜を進化させ、快適な移動手段を獲得する
邪神の遺体があるらしき場所、白根山へと向かう途中、バジリスクと出会った。
奴の腹の中にいた子供の竜を助け、治療を行ったのだった。
「きゅいきゅい! きゅい!」
「み、見てください父上さま! すごく……すごくかわいいですー!」
人間姿のフレイが、子供竜を抱きかかえながら、目を><して言う。
なるほど、ちょうどフレイの胸の中にすっぽりと納まるサイズで、かわいらしい。
フレイは子供竜に心奪われたようだ。
竜のほうもよくなついている。ふむ。
「だめですよ、フレイ。飼うのは」
ミュゼが厳しいことを言う。
「いくらかわいく見えても、相手は魔物なのです。成長すれば人を襲うようになります」
「! そう……ですよね」
「ええ。母親のもとへ返すべきです」
「で、でも! 母親……いないです」
確かにスキル天網恢々で調べたところ、周辺に地竜の姿は見られない。
「ふむ、おそらく母はバジリスクに食われた、あるいははぐれたかしたのだろう」
「で、したら……その……」
ふむ。フレイはおそらく、この子ども竜を飼いたいのだろう。
だが自分が俺に養ってもらってる立場だとわかってるから、わがままを言えないのだろう。頭のいい子だ。
さて。
この地竜どうするか? 母親の庇護もなく放り出せば、まず確実に死亡するだろう。ならば、俺のするべきことは一つ。
「案ずるな。この子は俺が飼う」
「! よろしいのですか、父上さま?」
「無論だ。母を亡くした子供を、このまま外に放り出すような真似はせん」
これもまた、ノブレス・オブリージュだ。
この子を助けた以上、力のある俺が、養うのは当然の義務である。
「わぁ! ありがとうございます! 父上さま!」
「そうですよ、フレイ。ヒラク様の広い心に深く深く感謝するのです」
「はい! 父上さまは本当におやさしく、じひぶかい、とても素晴らしいおかたです!」
ふむ。
となると、名前を付けておかねばな。
「何か名前の候補はあるか?」
「はい! ちーちゃん、はどうでしょー!」
「安直ですよ、フレイ」
ふむ。
娘の名前を採用して上げよう。たまにはフレイに、父親らしいところをしてやらんといけないしな。
「では、ちーちゃんにしよう」
「わー! やったー! 父上さまやさしいー! 大好きです!」
と、そのときだった。
『個体名ちーちゃんが、ステータスに登録されました』
『ヒラク・マトーの従魔に登録されました』
『条件を達成しました』
『地竜から、地岩竜へと、存在進化します』
『条件を達成しました』
『スキル金剛力を獲得しました』
ふむ。
どうやらフレイと同様の事象が起きてるようだ。
ステータスに名前を刻むことで、魔物は進化する。
「わ、わ、わーーーー! ちーちゃんすっごぉい! おっきー!」
「い、岩山のようですね、まるで……」
目の前には、四足歩行する、巨大な竜が出現した。
これがベヒーモスか。
■地岩竜
→地を這う巨大竜。古竜の一種。あらゆる地形も無視してスムーズな移動が可能。また、魔法を無効化する強力な外殻を持つ。
「古竜! すごいです、ヒラク様のお力で、ただの地竜が古竜に進化するなんて!」
「さすが父上さまです!」
~~~~~~
・ちーちゃん(0)
地岩竜
【スキル】
・土遁
・魔法無効鎧
・異空間構築
・螺旋弾
・
・
~~~~~~
ふむ。
どうやらちーちゃんには、スキルがいくつか備わってるようだな。
特に目を引いたのは、これだ。
■異空間構築(SS+)
→体内に異空間を構築する。
「ふむ、どうやらちーちゃんの体内には、異空間があるようだ」
「すごいねちーちゃん! 見せて見せて!」
んがぁ、とちーちゃんが口を大きく開く。
なるほど、この中に入れということか。
「ちょ、ちょっと嫌ですね……消化されないか、心配ですし……って、ヒラク様!?」
「どうしたミュゼ、中に入るぞ」
「なるほど……ヒラク様は信頼しておられるのですね、この子どもが我らを消化しないと」
「無論だろ」
「さすがヒラク様。竜の口にも臆せず入るその勇気、尊敬です!」
ちーちゃんの口の奥へ進んでいくと、何もない白い空間へとたどり着いた。
食道とは別空間となってるようだな。
「広くって快適ですねここ!」
「そうだな。外の暑さも気にならんしな」
この子は土遁という、地面を潜るスキルがある。
ちーちゃんがいれば、外でも安全に野営できるし、快適に旅ができそうだ。
「ここまで見越して、子供の竜を助けたのですか?」
「違う。が、別の意図はあった」
結果的にいいものとして帰ってきただけだ。
するとフレイが俺にキラキラした目を向けてくる。
「父上さま、ふれいは学びました。人にやさしくすれば、めぐりめぐって、必ずいいこととして帰ってくるのですね!」
「! そうか、ヒラク様は、フレイにこのことを学ばせたかったのですね!」
ふむ、どうやら遅まきながら気づいたようだ。
俺はフレイの頭をわしゃわしゃとなでる。
「よくわかったな。さすが俺の娘だ」
「はい! 父上さまのような、立派な人になれるよう、ふれいはしょーじんいたします!」
さて、俺たちはいったん外に出る。
見上げるほど大きなちーちゃんが、「きゅるぅうう……」と寂しそうに泣いた。
「父上さま、ちーちゃんがさみしそうです。抱っこしてほしいって」
「そ、それは無理でしょう……こんなにも大きな体をしてるのですから」
「あう……でも、ふれいは……だっこしてあげたいのです」
ふむ、そうだな。
ちーちゃんはまだ赤子だ。人のぬくもりを求めるのは当然のことだろう。
今の巨体では、人に抱いてもらうという、赤子なら至極当たり前のことを、してもらえない。
ウサギは寂しいと死ぬと聞く。それが地岩竜にも適用されるかは知らんが、不憫なことには変わりない。
「ならば、ステータス展開」
俺はちーちゃんのステータスを開く。
スキルスロットがあった。
・サイズ拡大縮小(A)(SP5000)
ふむ、5000か。
安い買い物だ。
俺はスキルを選択し、開錠で、ちーちゃんにスキルを付与する。
しゅるるううう……とどんどんと縮んでいき、最終的に、さっきの小さなかわいらしい竜になった。
「わぁ! これも父上さまが?」
「ああ。思う存分、抱っこしてやりなさい」
「はい! ありがとうございます! ちーちゃんも、ありがとうございますしましょうね!」
「きゅー!」
何はともあれ、移動手段を手に入れた。
白根山へと急ぐぞ。
・SP2,800,000




