25.スキル付与、囚われてる人達を余裕で助け出す
俺はヴィルヘルミナの故郷、マデューカス帝国へ向かった。
そこで帝国は魔蟲というモンスターの被害を受けてることが判明した。
二日後。
俺は、帝国北部へとやってきていた。
「わぁ……でっかい樹、ですねえ父上さまぁ~!」
娘のフレイが、目の前の樹を見上げながら言う。
俺たちの身長を遥かに超える、巨大樹が生い茂る森。
そこに、俺、ミュゼ、フレイ、ヴィルヘルミナ、そして……天才魔道具師のマリクがやってきていた。
「父上さま、ここで何をするのですか?」
「魔蟲の巣を壊す……と、同時に邪神の遺体を破壊する」
「巣……? って、邪神の遺体もあるのですか!」
俺はここに至るまでの経緯を、フレイに説明する。
バンジョー皇帝から、帝国の危機を救ってくれと依頼された。
危機とはすなわち、魔蟲による被害をどうにかすることだ。
マリクが防衛手段と攻撃手段をそろえたものの、根本的な解決には至らない。
「そこで、ヒラクさんの力を使って、魔蟲の巣を探してもらったってぇわけよ」
マリクがサングラスをかけ直して言う。
なるほど、とフレイが納得したようにうなずいた。
「父上さまのスキル天網恢々を使えば、魔蟲がたまっている場所がわかる!」
「そうだ。そして、その過程で、ここに邪神の遺体があることも判明したのだ」
天網恢々は、周辺の詳細な地図と、そしてそこに【ある】ものを表示できる。
魔蟲がうごめく場所を拡大表示したところ、なんと偶然にも、邪神の遺体が発見されたのだ。
「恐らく魔蟲の大量発生もまた、魔族の仕業だろうな」
「さすがヒラク様! 今日も冴え渡る頭脳! すごいです!」
と言う経緯があり、この巨大樹の森へと、帝国人であるマリクに案内してもらった次第だ。
「ヴィルヘルミナ。おまえは帝都で待ってて良かったんだぞ?」
「でも! 帝国の危機に、何もしないなんてできない! あたしもヒラクを手伝うわ!」
皇族という地位のみに固執するのではなく、その地位にふさわしい振る舞いを自然としてる。
そんな姿勢に俺は共感を覚えた。
「ありがとう、では、これよりこの巨大樹の森に入る。目的は、魔蟲の殲滅、および邪神の遺体の破壊だ」
仲間たちがうなずく。
森に入る前に、俺は……。
「ステータス展開」
~~~~~~
妖精郷
【状態】
瘴気
【アイテム一覧】
・魔力結晶(超高純度)
・etc
【モンスター一覧】
・魔蟲
・魔族
・etc
【人物一覧】
・ヘイチョ(帝国兵士)
・etc
~~~~~~
「なにしてるんだ、ヒラクさん?」
「ああ。マリク、これを見てくれ」
俺はステータスを他人にも見えるように表示する。
ぎょっ、と彼が目をむく。
「んじゃあこりゃあ!」
この巨大樹の森は、妖精郷というらしい。
妖精郷には瘴気という謎の状態異常が起きてた。初めて聞いた単語だから、驚いたのだろう。
「す、す、すげええな! このステータスってやつは!」
「……ふむ?」
「え、これ、すごすぎんだろ! この妖精郷にあるアイテム、モンスター、人物まで全部網羅できるなんて! こりゃあとんでもねえもんだぞおい!」
……ふむ。どうやらマリクは、このステータスの有用性に驚いていたようだ。
まあ、事情を知らぬものからすれば、脅威の存在だとは思うが。
■瘴気
→人体に有害な毒ガス。魔物の死骸が腐ると発生する。
人体に有害な毒ガスが、森の中に蔓延してるとなると、森に入れないな。
「ヒラク様、いかがいたしましょう。私は治癒魔法は使えますが、浄化を行うことはできません」
「問題ない。レヴァ、いくぞ」
俺はさやに入ってる聖剣、レーヴァテインを引き抜く。
『わははは! 氷の聖剣レーヴァテインの使い手、ヒラクの力をとくと御覧じよー!』
俺は聖剣を構えて、そして、横に剣を一閃させる。
スパァアアアアアアアアアアアアアアアン!
青い斬撃が森の中を走る。
ずぁああ……と、森を覆っていた紫色のモヤが晴れていった。
ステータスを確認すると、瘴気が消えていた。
「ふむ。浄化完了だ」
「すごいです父上さま! 森から感じていた嫌な気配が一気に消えました!」
聖剣レーヴァテインを装備すると、俺には【浄化】のスキルが使えるようになる。
どうやらスキルとは、個人に元から備わってるものと、武器を装備することで使用可能となる(装備してる間だけ使える)ものと、いろいろ種類があるようだ。
「これで森のなかに入れるようになったわね。それで、次はどうするのヒラク?」
「ふむ。手分けをしたいところだ。どうやらこの森には、帝国の人間たちが囚われてるようだ」
「なんですって!? どういうことなの?」
ヴィルヘルミナは皇女であり、愛国心が強い。
愛すべき国民が連れ去らわれてるとしって、憤りを感じてるのだろう。
「マップ上には、森のあちこちに人間が集められてる。おそらく魔蟲は人を巣へ連れ去っているのだろう。食料にするのか、また別の使い道があるのか」
おそらく前者の可能性が高い。
あれだけの巨体だ、維持するのに相当エネルギーが必要となるだろうからな。
人間は栄養が豊富だろうし、なによりモンスターは人間を食べる習性がある。
「ひどい……なんてこと! ヒラク! お願い、その人たちを」
「言わずともわかってる。囚われの人たちを救う、邪神復活も当然阻止する」
「ヒラク……! 一つでも大変なことなのに、同時にやってのけるなんて、すごいわ! かっこいい! 素敵よ! 大好き!」
ふむ。好ましく思ってる女性に、好きと言われるのは心地のいいものだ。
彼女のため、そして囚われてるか弱きもののために、俺は力をふるおう。
俺はスキル天網恢々を使い、人間たちが集められてる一番近いポイントへと移動。
そこには……。
「ヒラク様。なんでしょう、あれ? 繭……ですかね?」
巨大樹の周りには、白く、そして巨大な繭がいくつもついていた。
サイズはちょうど人間大だろうか。
だが天網恢々のおかげですぐにわかった。
「いや、ただの繭ではない。あそこに、人が入ってる」
「!? 人が! 囚われて、あの中に入れられてるということですか。……すごい、ヒラク様じゃなかったら、見過ごしてますよ、あんなの」
……ふむ。どうやら魔蟲どもは、捕えた人間をすぐには捕食しないようだ。
保存、してる? 何のために? すぐ食べないで保存してるのが、何か気になるな。
やつらが虫であることを考えると……ふむ。まさかな。
「待っててみんな! あたしが助ける! ぜやぁあああ!」
ヴィルヘルミナが剣で繭に切りかかる。
中の人間を取り出そうとしたのだろう。だが……。
がきぃいん!
「きゃああ!」
彼女の剣が弾き飛ばされ、どこかへと飛んでいく。
彼女は思わずしりもちをつき、目の前の繭を見て驚いたように言う。
「なんて……硬さなの!? ドラゴンのうろことか、そんなレベルじゃあないの!」
~~~~~~
魔蟲の繭
【状態】
超硬化(神威鉄級)
~~~~~~
「どうやらこの繭も、神威鉄級に硬いようだ」
「まじか……そんじゃ、同質の武器じゃあねえと傷一つつけられねえぞ! どうするんだ、ヒラク!」
SPを消費して、開錠を使えば、繭はたやすく壊すことが可能。
だが天網恢々を使って調べると、どうやら相当数、帝国民は連れ去らわれてることがわかる。
手分けすることを考えると……ふむ。
「フレイ、こっちにきなさい。ステータスを見せてもらうぞ」
「どうぞ! よろこんで!」
~~~~~~
フレイ(0)
体力 999/999
魔力 5/5
SP -
【職業】
炎神フェンリル
【スキル】
・魔物喰い《モンスター・イーター》
・強化ボディ
・
・
・
~~~~~~
これがフレイのステータスだ。
注目してほしいのは、所有してるスキル欄。
・
・
・
↑となっている。これの意味を、最初俺は理解できなかった。
だが一つの可能性を思い付いたのだ。
「フレイ。今からお前に、スキルを与える」
「な、なんだって!? ヒラクおまえ、スキルを与えるっていったのか!?」
「ああ、そうだ」
「いやいや! 無理だろ! スキルは元々自分に備わってるものだろ!?」
マリクの言うとおりだ。
スキルとは基本は自分に元々備わってるもの。
最初から使えるか、熟練度を上げることで使えるようになるか。
その違いはあれど、基本は最初に与えられてるもので、増えることは決してない。
【開】を持つ俺だけが、特殊で、増やすことができると思ったんだが、違う。
「おそらくこの空欄は、スロットだ」
「スロット……?」
「ああ、スキルスロットでもいうのかな。ここに空きがあれば、新たなるスキルをつけることが可能なのだろう」
『条件を達成しました』
『【開】レベル4になりました』
『スキル付与権限が与えられます』
やはり、そうだったか。
「フレイのステータスを展開」
ずらり、と俺の前にスキル名の羅列が並ぶ。
その中に、文字が明るくなってるもの、暗くなってるものの二種類がある。
おそらくは、明るいもののスキルは獲ることができるのだろう。
■浄化の炎(UN)(取得SP100000)
→選ばれた特別なフェンリルが、長い年月をかけてようやく習得可能な、特殊な炎。
あらゆる状態異常をなおす。なお、この炎は決して人を傷つけない。
「どうやら、ユニーク・スキルすら獲得させられるようだな」
「す、す、すげえええええええええ!」
マリクが大声で叫ぶ。
「すげえよ! スキルを付与なんて、人間にはできねえ! 歴史を紐解いてもそんなやつがいたなんて記録がない!」
「素晴らしいですヒラク様! 天恵を授ける、まるで神様……いえ! もはやヒラク様が神様です!」
ふむ、俺は神ではない。
だがこれもまた、天の意思だろう。ユニークスキル取得に、10万ポイント必要。
そして今俺には、ちょうどそれがある。
俺はフレイに浄化の炎を授ける。
『ふれい、いっきーます! ふぁいあー!』
ゴォオオオオオオオオオオオオオオ!
破壊不可能なほど硬い繭はとけて、中からたくさんの人が出てくる。
誰一人として傷を負っていなかった。ふむ。
「ありがとう、ヒラク! あなたのおかげよ!」
「いや、フレイの炎のおかげだ」
「ありがとう、フレイ! でもそれを授けたのはヒラクなんだから、ありがとう!」
こうして、囚われの人たちを助けるめどはついた。
あとは邪神復活を阻止するだけだ。
SP100000→0→50000




