19.皇女の婚約者に再びなり、女達からモテまくる
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ヒラク・マトー(15)
体力 5000/5000
魔力 1000/1000
SP 16000
【職業】
開ヒラクモノ Lv3
神狼騎士
氷の剣聖
【スキル】
・魔力共有(A)
・隠蔽(A)
・従魔召喚(S)
・隠蔽看破(S)
・高速(S)
・鷹の目(S)
・攻撃反射(S+)
・不動要塞(S+)
・背面攻撃バック・アタック(S+)
・リジェネ(S+)
・最上級・氷属性魔法(SS)
・最上級・剣術(SS)
・ステータス操作(SSS)
・アイテムボックス(SSS)
・最上級・鑑定(SSS)
・開錠(SSS)
・回答者(SSS)
・聖剣召喚(SSS)
【ユニーク・スキル】
・報恩謝徳(UN)
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実家での出来事を終えた俺は、その日のうちに馬車を飛ばし、王都へとやってきた。
【彼女】も同行してきた。
「父上さまっ、ここがゲータ・ニィガ王国の、王都なのですね! ひとがたぁっくさんです!」
「ああ。王国で最も栄えている都市だから」
窓から、子フェンリルのフレイが外の様子を見て、目を輝かせていた。
王都は、白亜の外壁にかこまれている。
町並みは歴史を感じさせるもの。
道路は人間たちがたくさん、行き交っている。
「父上さま、どうして王都へ来たのですか? これから、何をするのですか?」
「マトー家のやらかし、そして邪神復活の件を、国王に報告するためだ」
盗賊のアジトでは、魔族が邪神ギンヌンガガプの右手を使って、儀式を行っていた。
そして、実家では邪神の心臓があり、そっちは聖剣で封印していたものの、封印は壊された。
「今回の件が偶然重なったとは考えられない。おそらくは、邪神を復活させようという動きが、水面下で動いてるのだろう」
「なるほど……! さすが父上さまですっ! いつもながら冴え渡る頭脳! かっこいーです!」
俺たちと【彼女】を載せた馬車は、王都中央にある、城の前までやってきた。
「そこの怪しい馬車! 止まれ! 止まれぇ!」
「騎士さんでしょーか?」
馬車を停止させる。
門の前に立っていた騎士が、険しい表情をしながらこちらへとやってきた。
アポもなく来たのだから、こうなるのは当然だし、予測済みだ。
「すまない、緊急事態なのだ。国王に取り次いでもらえないか?」
「なんだ貴様偉そうに! 所属を言え!」
所属……か。
ふむ……。恐らく言ったところで、通してはくれないだろうが。
「マトー家の長男、ヒラク・マトーだ」
「ヒラク……ああ、あの家を追われたはずれスキル持ちのクズか」
……ふむ。
どうやらすでに、悪評は広まってしまっているようだ。
仕方ない。
悪い噂や、人の失敗談というのは、人の大好物だからな。
「無礼千万なのは承知の上で、お願いしたい。国王陛下に急ぎ、ご報告いたしたいことがあると」
「はん! 家も追われた無能の話なんて、聞く価値もない! 立ち去るがいいゴミが!」
ミュゼとフレイが「なんて無礼な!」といきり立つが、俺は手で制する。
ふむ、仕方ない。あまり行儀のいいやり方ではないが。
「おまえの力貸してもらってもいいか?」
「もっちろんよ!」
一緒に座っていた彼女が、立ち上がると、ドアをバン! と開けて外に出る。
「ちょっとあんた! このアタシの顔を知らないとは言わせないわよ?」
「あ、あなた様は! 閃光姫! ヴィルヘルミナ様!」
そう、なぜかマトー家に、元婚約者のヴィルヘルミナ=ディ=マデューカス第三皇女がいたのだ。
俺が家を出る際に、彼女に同行をお願いしたところ、快諾してくれたのだ。
「マデューカス帝国第三皇女が国王に会いに来たって、上の連中に報告してきなさい。今すぐ! 即刻!」
「は、はぃいい! ただいまぁあ!」
門番は頭をへこへこさげながら、城のなかへと引っ込んでいった。
「ふむ。悪いな。ヴィルヘルミナ」
こうなると想定できていたから、彼女に来てもらったが、こんなやり方は、彼女の立場に悪影響を与えかねない。
権力を振りかざし、わがままを通したとなってしまうからな。
「いいのよっ。ほかの凡夫どもの頼みならともかく、ヒラクの頼みなら喜んで聞いてあげるわ! だって……その、あ、アタシたちその、ふ、夫婦になるんだし……えへへ♡」
ふむ、そこは申し訳ない。
「すまない。俺はもうマトー家を出た身だ。おまえの婚約者にはなれん」
「大丈夫! マトー家とか関係なく、アタシはヒラク個人のことが好きだから!」
……ふむ。微妙に話がかみ合ってないぞ。
「聞いて無かったのか? 俺ははずれスキル持ちで、なおかつもう貴族ではない」
「だから? ヒラクの実力は、アタシも、そして皇帝陛下も知ってるわ。英雄にふさわしい力が備わってるってね」
ヴィルヘルミナの父であり、現皇帝とは既知の間柄だ。
彼も娘同様に、実力を重んじる傾向にある。
「だ、だからその……ひ、ヒラクさえよければ! その……また、婚約者になってほしいなって……だめ、かなぁ?」
ふむ。
彼女が望んでいるなら、拒む理由はない。が。
「ヴィルヘルミナ。俺は今、大きな【使命】に取り組もうとしている」
「わかってる。邪神とかいうやつのことね」
マトー家での騒動は、ヴィルヘルミナも知ってる。
彼女は余計なことをべらべらしゃべるタイプではないので、俺は事情を説明しておいたのだ。
無論、国家機密に該当する事項であることは承知してる。
だがこれは黙っておくより、帝国の助力も借りるべき案件だと思ったので、先んじて話しておいたのだ。皇帝陛下にはまだ言っていない。国王の許可が取れ次第、打診をかけるつもりだ。
「俺は、ノブレス・オブリージュ。力を持ったものの責務を果たす。それを最優先させる。悪いが、結婚の話はずいぶんと後回しにせざるを得なくなる」
「うん! 構わないわ! あたしはヒラク、あんたのその姿勢も、大好き! だから、アタシは待つ、ずっとずっと待つ! あなたが任務を終えたそのとき、アタシを迎えてくれるなら!」
もとより俺はヴィルヘルミナのことは嫌いではない。それに、……打算的な話になってもうしわけないが、皇帝の後ろ盾が今後も必要になるケースが出てくるだろう。
そうなったとき、ヴィルヘルミナと婚約しておいたほうが都合がいい。
だがそれは、あくまで俺の都合でしかなかった。
「本当にいいのか? 俺は、俺のためにおまえと婚約するが」
「かまわないってば。アタシの力を存分に使って。打算込みで全然いい。アタシは、大好きなあなたのものになれれば、それで……それだけで、十分よ」
そこまで言われたら、断る理由もなかった。
俺は頭を下げる。
「ありがとう、ヴィルヘルミナ」
前の俺ならいざしらず、今の俺は単なる平民だ。
そんな俺を婚約者として迎えることは、たとえ実力を重んじる皇帝が治める国であろうと、周りからひどく言われるに決まってる。
彼女の立場を脅かす存在となりえる俺を、それでも迎えてくれた彼女に、俺は最大限の敬意を示すべく、頭を下げた。
「い、いいっていいって! 頭なんて下げないでよ」
「そうもいかん。俺は君に迷惑をかけることになる」
「周りがどー思おうが、どーでもいい! アタシは、大好きなヒラクと一緒にいられれば、それでいいんだからっ♡」
ヴィルヘルミナが笑顔になると、俺の腕にぎゅっと抱き着いてくる。
強い人だ。
俺を受け入れて、自分の立場が危うくなっても、俺のそばにいる選択をしてくれたのだから。
そして多分だが、皇女の婚約者となることで、俺の行動の助けになれればいいと、思ってくれている。
俺のために、婚約者になってくれたのだ。不義理は、絶対にしたくない。
「ところで、ヴィルヘルミナ。俺には奴隷が一人と、娘がいるのだが」
「……ふむ」
馬車の中にいる二人、がるるるる、とうなるミュゼと、そわそわするフレイを指さす。
俺としては二人も大事な仲間だから、受け入れてほしい。
だが奴隷はともかく、子連れ(フレイ)を受け入れるとなると、さらに悪いうわさが立つのではないかと思って、ヴィルヘルミナに先に確認を取っておくことにしたのだ。
「全然OKよ!」
にぱっ、と笑って、ヴィルヘルミナが胸をたたく。
「このヴィルヘルミナ=ディ=マデューカス! 愛する男に娘がいようが、奴隷がいようが、関係ないわ!」
「ありがとう、ヴィルヘルミナ。恩に着る」
「だ、だから~♡ 恩とかいらないって~♡ 大好きなヒラクの頼みなら、なーんでも聞いてあげるし♡」
あまり女心を利用したくないので、お願いは最小限にしておこう。
ほどなくして、城の騎士が何人も人を連れて、俺たちの前にやってきた。
「ももも、申し訳ありませんでした! 皇女殿下様! ヒラク様!」
さっき俺を馬鹿にした騎士の、上司らしき男が、何度も頭を下げる。
「部下がたいっへん! 失礼な発言を!」
「気にするな。俺がはずれ持ちなのは事実だし、急にアポもなくきた男を怪しまないほうがどうかしてる。こちらこそ悪かった」
「で、では……お許しいただけると?」
「当たり前だ」
「寛大なお心づかいに、感謝いたします! ヒラク様!」
・SP 15000→16000
ふむ?
またスキル、報恩謝得が発動したな。
しかしSPが前より増えてる気がする。
「やはりヒラク様は、すごいです。自分が馬鹿にされたのに、許してあげるだなんて!」
「父上さまかっこいーです!」
「ヒラク……素敵だわ♡ さすがあたしのヒラク……♡」