14.ステータス・展開《オープン》で全員救う
『条件を達成しました』
『職業【開】がLvアップします』
『新たなステータス権限が付与されます』
俺は魔族が企んでいた、邪神ギンヌンガガプの復活を阻止した。
盗賊のアジトにて。
「ふ、ふふふ、ふひゃはははははあ! おしまいだぁ!」
魔族チータスが、壊れたように笑い出す。
水面下で進められていた計画をぶっこわされて、絶望してるのだろう。
気持ちはわかるが同情はせん。
「貴様は生かしておく。回答者を使って情報を引き出したいからな」
「情報? どういうことですか、ヒラク様? もう用済みでは?」
「ふむ。ミュゼよ。こいつは邪神ギンヌンガガプの【遺体】といっていた。そして、さっきのは右手だった。つまりは……」
そのときだ。
ずずずぅうううん…………!
「!? この音は……落石!? まさか……!」
「ひゃはっは! そのとおりだハーフエルフぅう! アジトの入口を、破壊してやったぜえ! これで脱出は不可能うぅ!」
フレイの口のなかで、チータスが狂ったように笑い出す。
……ふむ。追い詰められた獣の、最後のあがきというわけか。
「さらに……ダメ押しだぁ! 術式発動ぅう!」
祭壇に集められていた人たちの首に、半透明の首輪が巻き付かれる。
「な、なんだ!?」「首輪!?」「くそっ! はずれないぃい!」「どうなってるのぉお!?」
恐怖の表情を浮かべる、人々。
俺はチータスに近づいて、回答者を発動させる。
・SP10000→9000
「おしえてやるよぉお! これはなぁ、自爆の術式だ!」
「ふむ……自爆……?」
「ああ! この術式が付与されたやつはなぁ! 1分以内に全員が爆発して死ぬ! いわば、人間爆弾にする術式さぁ!」
なるほど……。
生かしておいても情報を漏らすリスクにしかならないからな。
口封じに殺すということか。
「ひゃはははぁ! 終わりだてめえらぁ! てめえがいかにステータスを書き換える力を持っていようがなぁ! 30人全員のステータスを一瞬で書き換えることが、果たしてできるのかなぁ!?」
確かに。
俺の力は、触れた対象のステータスを開く、というもの。
つまりいちいちそいつに触れる必要がある。
触れて、書き換えて、それを人数分となると……。
「なるほど、時間があるならいざしらず、1分以内に30人分を書き換えるのは不可能だな」
「だろぉお!?」
「……今までは、な」
「なぁ!?」
俺は、さっき【開】のレベルがあがった。
新しいステータス権限を手に入れていた。
「今まで? どういうことですか……?」
「ミュゼよ。レベルが上がって、俺は新しいステータスの使い方を身に付けたのだ」
「!? 新しい使い方!? どのような……」
俺は……。
右手を前に突き出す。
そして、言う。
「ステータス……展開」
そのときだ。
パパパパパパパパッ……!!!!!
「!? ヒラク様の目の前に、無数のステータスが開いている!?」
「ば、馬鹿な!? やつは触れなければステータスが開けないのではなかったのかぁ!?」
そう、今までの【開】ならば、ステータスを開くためには、触れる必要があった。
しかし。
「レベル3となった【開】は、呪文を唱えるだけで、その領域内にあるもののステータスを、展開にできる」
「それが……ステータス展開! す、すごいです!」
俺は30人分のステータスを閲覧。
【状態】
・自爆術式(残り20秒)
残り20秒。
20秒で人が爆弾となって吹っ飛ぶ。
だがそんな事態でも、俺は冷静だった。
ノブレス・オブリージュ。
力のある物の義務。
俺は天より、より多くの力を授かった。
それは天が、か弱きものたちを救うために授けた力。
そう、この力があれば全員を救うことが可能なのだ。
もしも失敗するとしたら、俺の焦り。人の感情。だから感情を消す。
俺がミスれば全員死ぬ。俺が最後の希望なのだ。
「俺は俺の、責務を全うする。スキル、開錠を発動」
・自爆術式、の解除(SP300消費)
30人×300で、9000SP
「SPを消費し、術式を解除する」
・SP9500→500
パキィイイイイイイイイイイイイイイン!
「く、首輪が壊れたぞ!」「た、たすかったのか?」
俺は、全員に向かって聞こえるように言う。
「問題ない。君たちに付与された、自爆の術式は解除された」
「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」」」
歓声が響き渡る。
全員が涙を流しながら、俺の前にひざまづいて頭を下げてきた。
「「「「「ありがとうございます!」」」」」
・SP500→15500
ふむ、またスキル報恩謝徳が発動したようだ。
500×30人分ということだろう。
別にSPが欲しくて助けたのではないのだが。
「ほんとうに……素晴らしいです。ヒラク様……」
ぐすぐす……とミュゼが涙を流す。
「あなた様は……やはり天より舞い降りた、救いの神なのですね……。私は、そんな救世の神にお仕えできること、心から嬉しく思います……!」
・SP15500→16000
ふむ……。
まあ神では無いのだが、神の意志で力を与えられたのは事実だろう。
「そうか。良かったな」
「はい!」
さて……。
残された魔族はというと……。
「あ……あば……あびゃば……あばば……」
『父上ひゃま、こいつ……完全に壊れてしまいまひは』
フレイの口のなかで、魔族チータスは白目剥いてあわ吹いていた。
計画が全ておじゃんになったからだろう。
「もう……おしまい……DEATH」
カチッ……!
「! しま……ヒラク様! 自爆の術式が」
「フレイ。食え」
「え!?」
ばくんっ!
…………しーん。
「ふ、フレイ……? 大丈夫なのですか?」
ぼふんっ……!
一瞬、フレイの体が膨れ上がったが……無事だった。
「フレイのステータスを見てみるか?」
~~~~~~
フレイ(0)
体力 998/999
魔力 5/5
SP -
【職業】
炎神フェンリル
【スキル】
・魔物喰い《モンスター・イーター》
・強化ボディ
・
・
・
~~~~~~
「体の中で爆発があったのに、体力が1しか削れてない!?」
「スキル強化ボディのおかげだろう。こうなることは予想できた。だから、フレイにくわえさせておいたのだ」
「いざとなったら喰わせるタメだった……ってことですね。す、すごい! もう……すごすぎです! 目先の危機だけにとらわれるのではなく、常に先の展開を考えて手を打っておくなんて! さすがです!!!!!」
かくして、これにて【今回の】魔族の陰謀は、完全に阻止できたのだった。